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7. 頼りの参謀、小さな願望

コメント&ご指摘おねがいしますっ!

 朝に一度訪れたばかりのいつも朝市が開かれているウェルミニス大広場は今は様相も変わって屋台が開かれていてそのなかには簡易なカフェも展開している。

 そして午後の鐘2つ分ある休憩時間を今日はここで学生時代からの友だちと過ごすことにしていた。

 まぁ成人して働いているわたしたちの都合はなかなか合わせるのが難しく、今日もなんとか30分ズレて会う約束で・・・・・あ、見つけた。いつも待たせてる側で申し訳ないなぁ。

 少し歩を速める。


「おーい、こっちに席とってるよー」


 向こうもこちらを見つけたようでかるく手を振ってきた。

 わたしも振り返して返事をし、あとほんの少しあったカフェ特設のテーブルまでの距離を詰め、2脚あるイスの片方に腰をおろした。


「あーさきに飲み物だけ注文してたけどアイスティーでよかった?」


「あ、うんありがと。じゃあわたしも食べ物頼むね」


 円形のテーブル上には2つのグラスが置かれている。元の4割くらいに減っている香茶と食べかけのサンドウィッチは彼女の手元にあり、すでにけっこうな時間待たせていたよう。

 わたしはなに食べようかな?


「ん、じゃあこれで。すみませーん」


 近くにいた女性の店員さんを呼ぶ。


「はい!ご注文お決まりですか?」


「ホットドックお願いします、マスタード抜きで」


「はーい!少々お待ちくださいっ」


 元気な店員さんだなぁ。小売業で店頭に立っている自分としては見習いたい限り。

 パタパタと動き回って忙しそうだ。

 と、そんな労働者を尻目に。


「んでいきなりどうしたー?今日はそんなに時間取れないんだろ?」


 いつも彼女、―――オリヴィアと会う日は午後から丸々休みの日を使っている。どうせなら大きく時間をとりたいもん。

 だから今日みたいに少しの時間で会う、なんてあんまりないこと。


「あのー、まぁ相談?みたいなものだよ」


「相談って・・なんかますます珍しいなぁ?」


 肩先まで伸ばしカールさせた金髪を揺らして首をかしげるオリヴィア。

 少しだけ釣り上がった目元と砕けた話し方はともかく、社会人になり街の銀行に務めるようなってからは王都まで向かうことも増えたようで染み付いているような女性らしい仕草から時間の流れなんかを感じてしまう。まぁ、昔から成績はよかったけどさ、なんか大人になった気がする。


「まーそうかもね、うん」


「じゃあとりあえず話してみ、相談なんだろ?」


 ああうんそうだった。そのために来てもらったんだし。

 ・・・はぁ。



「わたしって・・・・・・・どこまで安楽的なんだろう」


「ふぅん。それまたなんで?」


 また小首をかしげその心を訊ねるオリヴィア。

 昨日の朝を思い出す。


「わたしさ、いままでなんとなくアルムはいつまでも傍にいてくれたりするのかなぁ、なんて思ってたんだよ。」


「あ、そーゆー話ね。うん続けて?」


 学生時代からの友人のオリヴィアは当然わたしの気持ちを知ってくれている。


「でもこの間久しぶりに家までお邪魔する機会があってそこでシンシアさん、アルムのお母さんにもっと頑張りなさいって言われてね、それでわたしもこのままはよくないって思って努力しようと思ったの。何をしたらいいのかはわからないけど」


「ほぉ」


「で、一昨日ナイツの大会あって帰りはアルムに送ってもらったんだよ」


「うんうんよかったじゃん。で?」


「そうそれ!その反応!」


「ひぇっ!?」


 ダァンっとついテーブルを叩いて立ち上がってしまい、ちょうどホットドックを運んできてくれた店員さんを驚かせてしまった。


「あ、・・・スミマセン」


「い、いえ、ホットドックになります」


 無言で受け取り咳払い。ごほん。

 またオリヴィアに向かって話し始める。


「わたしも昨日の朝気づいたの。結局なにも変わってないじゃないかーって」


 一昨日の帰り道で何をしたらいいのかはわからなかったけどそれでも何かしなきゃいけなかったって気づいたのは昨日。その他愛のない会話をしていた時間、わたしからすれば幸せなんて言葉に起こしてもいいものだった。しかしその積み重ねわたしがここ数年で行ってきた間違い、いまできてしまっている微妙な距離感の原因そのものだ。


「はぁ、なるほどね。それで自己嫌悪擬い?」


「そんなところ。ねぇ、どうしたらいいと思う?」


「いや、どうしたらって・・そんなこと聞かれてもな」


「あ、ごめん」


 つい言葉だけが先行してしまった。うん、これはいくらなんでも抽象的過ぎか。


「要はどうしたらもっと距離を縮められるのかなってことを言いたいんだけど」


「あー、その前に気になることがあるんだけど」


 え、なんだろ。事の経緯は伝わったと思うんだけど?悩みの。


「あのさ?」


「うん」



「そもそもおまえと同じ意味でバークリーのことが本気で好きなやつっているのか?」


「え」


 オリヴィアが口を開き呈した疑問。



「だってそうじゃん?なんか話聞いてると毎日働いて一日のうちの行動範囲なんて会社とアイリんちの八百屋くらいなんだろ?そりゃ飲みに行った先とか社内でそーゆー人はいるかもしれないけど本気で惚れるまで関わる機会はないんじゃない?」



「い、いやでも!」


 わたしからすれば相談の内容を頭から否定されたようなもので口を挟まずにはいられない。

 え?真っ向否定ですか?


「あんたたちの距離感なんてものは今に始まったものじゃないんでしょ?なら今更そんなに力いれなくてもいいんじゃないの?」


 確かにアルムと今現在も一番過ごせているのがわたしだという自信はある、多分。

 だからこんなかんじで長いことやってきたわたしたちならと、周りで見ている人たちが思うのも頷けるし、わたしもつい最近までは心配どころか考えもしなかった。ここまではオリヴィアの言いたいことと合っているはず。

 が、シンシアさんに言われて気づいた。


 ―――アルム絶対モテる。


 そこにいるのが当たり前すぎてアイツがいかにモテる要素を孕んでいるのか気付けなかった。

 いままではそんな話聞かなかったけれどこのまま現状維持ではそのうち近付いてくる人は必ずいるはずで、わたしの主観ではオリヴィアみたいに楽観視できるものじゃない。

 そう気がついたから相談してるって言うのにぃ~!


「そんな話をシンシアさんだっけ?から聞いてなにもしないのが不安ってのはわかるけどさ、でもそれこそ焦ったってしょうがないでしょ?実際にいるかどうかもわからないライバルの話したって」


 そ、それはそうかもだけど・・・・・・・。


「それにバークリーの家におじゃましたんでしょ?もう何年かいってなかったんでしょうしそれこそ進歩じゃん?」


 うむむむ、たしかにそれは・・・・・・。


「人と人の話なんだからそんな急には何ともならないもんだよ。今はそのお宅訪問のアドバンテージで頑張んなさい」


 ね?と、片目を閉じて軽く笑ってみせるオリヴィア。

 そして時計をみやると恋愛マイスターはそろそろ昼休みが終わりそうとのことで職場に戻っていった。


 想像のライバルかぁ、確かに創ってたな。

 気は抜けないけどなんだか力は抜けたようでわたしも店に戻ることにした。現状打開の具体策がないままに。


 ・・・・・あれ?



 ********************



 大人の女声と呼ぶにはまだニュアンスのしっくりこない少女2人組がそれぞれの職場へ()けていった時間より3つ後の鐘。

 時計で言えば短針がそろそろ真下に落ちてくる頃にウェルミニスの広場に隣接している公園、こちらもウェルミニスの名前の公園で別の少女が愛犬を連れて誰かを捜しているように辺りを見回している。

 見回しているといってもペットのセドリーは毛の長いかなりの大型犬であり、150cmを少し上回っている程度の彼女にはリードを無理矢理引っ張ることは難しい。あちこち見て回っているのではなく、通り道の人ごみを少し覗いているだけだ。


 まだ学生であり先月ようやく15歳の誕生日を迎えたばかりのマキナは終わりつつある義務教育のなかで学徒長、生徒会長にあたる仕事を受け持っていた。

 毎日その肩書きに恥じぬ量の雑務をこなしたあとに帰宅するわけで自宅につくのは一般生徒よりも遅い時間になる。そうなると欠かさない日課の愛犬の散歩もこんな時間までずれ込む。ここ1年は大体そんな感じになっていた。

 が、マキナはこの時間の散歩が(うと)ましいと思ったことはない。

 もちろん愛犬の為の散歩でもある、が、理由のもう半分は別のことだ。

 マキナはここに来るといつも『ある偶然』を捜している。


「セドリー見つかった?」


「わぅ?」


「んーん、なんでもないよ」


 アルムの帰路と触れる形の公園入口。

 そこで街路をみやりながらペットの散歩を続ける少女。

 人通りは圧倒的に街路が多く、公園側から人を探しだすのは難しい。

 少女の名前はマキナ―――



「今日は会えるかな、アルム先輩」



 アイリ言うところの妄想の恋敵だ。

更新遅れてすみません(。´Д⊂)

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