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4. 東奔西走(約2キロ)

絶対!あとひとつ今日中に!!

「アイリ、おまえ今絶対勘違いしてる」


「え・・・?か、勘違い・・?・・・でもアルムには彼女さんがいるって・・・・・」


「とりあえず話をきいてくれ。な?」



商店街の軒先、そこで突然のことにアタフタして傍目には挙動不審な幼馴染み。

そして釈明を訴える俺。



事は昨日に遡る。





*****************





大通りを曲がってしまうともう街灯も疎らになり、女の子がひとり歩きするのには向かないだろう帰り道。

ただ、そこもいくつかの角を行けば賑やかな夜の街ってやつだ。

その類いの飲み屋街の一角にはステファンも働いている酒場があったりしてたまに行くけど今日は寄らずに逆方向の家路に着くことにする。


「はぁ、1人だと地味に長いよなぁ。誰か車発明してくれよ」


そんな独り言を言いながらでも距離は縮まっていき、目測で2キロちょっと、歩いて30分の道のりはう目的地周辺なのでルート案内を終了したのだった。


わかりやすく言うとお家につきました。


「ただいまーっと」


もう見慣れたこのイノシシっぽい生首を尻目にとりあえずリビングに向かう。

ちなみにこれはお袋の親父、つまり俺のじいちゃんが新築祝いの家具にとこの家が立った時に狩ってきて、

剥製にしたとのこと。ごめんじいちゃん正直悪趣味である。


「おう、おかえり」


「あれ?親父はどうした?」


「明日は方々周って打ち合わせがあるからなぁ、備えるって言ってアイリが帰ったあとすぐに寝たよ」


グラスにロック、そしてウィスキーのようなこの世界ではけっこうメジャーな、俺も飲んだことのある酒をちびちび煽りほんのり血色が良くなっているお袋。その快活なルックスと重ねて様になっている。うーん、マンダム。

バスルームから鼻歌が聞こえてくるのでライラはお風呂だろう。

俺もイスに座る。


「いやぁ、今日はびっくりしたぞアルム。お前いきなり連れてくるんだもんさ」


「ああ、アイリか。よかったろ?久しぶりで」


「そりゃな」


と、今度はグラスを一気に飲み干した。

俺もなんかのもうかな?見てたら喉乾いてきた。


「これ飲むか?けっこうキツいやつだけど」


「いやそれ苦手だってば。あー、まぁこれでいいか」


持ち出したのは塩と砂糖のみでできるスポーツドリンクである。

これの作り方覚えててよかったわー。


「またそれかよ、ジュースばっか飲んでないでたまにはこっちにも付き合えっての。それうまいの知ってるけど」


「はーいはいまた今度ね」


チェッと、軽く舌打ちをかえされてしまった。

うーむこれは少し酔い始めてきたか?お袋酒癖悪いんだよなぁ。

完全に酔いが回るとものすごい泣き上戸で飲んだ量と同じじゃね?くらいの涙が愚痴と共にこぼれ出してくるのはマジでご遠慮いただきたい。イメージ湧かないっしょ?

あ!?手酌再開しやがった!・・・・・・・・・はぁ。



「そういやアイリが帰る前になんか話してなかったか?」


「あーあれかぁ。んふふ~」


「なんだよ変な言い回しして」


「ききたい~?ききたぁい?」


いや別段気になることじゃないんだけどさ。

はぁ・・・・・、酔いグセもそろそろひどいな。


「・・・まぁ、きかせてよ」


ところが、

なけなしのやる気をかき集めてやっと形にした問の返しにお袋が用意していた内容に俺は目を見張った。



「アルムに彼女がいるって言っちゃったぁ~♪





「は?・・・・・・・・・・・・・・・・。あああぁっ!!?」


「ひぅっ!?そんなに大きな声ださないでよぅ・・・・・うぅ」


と、満足げにやってやったぜ!みたいな顔をするだいぶアルコールの魔法で幼児退行している母親へ俺は叫ばずにいられなかった。



翌朝、俺はこの誤解を解くべくいつもなら間違いなくノンレム睡眠真っ最中な時間に飛び起き、身支度もそこそこにアイリの八百屋へ向かった。

何がしたかったのかはまったくわからないがお袋は俺に彼女がいるとアイリに(のたま)った。

いやいねーし!いたことねーし!!



走って走って歩けば片道30分の道を俺は5分そこらで走り抜いた。

アイリと親父さんが出てくるより早く到着したかった、そしてそれはどうやらギリギリだったようでやっと視界の端に捉えた八百屋の中からウェイバー親子がちょうど出払ってきたところだった。


みると、ん?なんかあんまり眠れなかったようで朝から疲れたような顔。親父さんも気にかけているような風だし・・・・・。


「おいおい寝不足かぁ?もう朝日がのぼっちまうぞ?」


「・・・うん、ごめんだいじょぶだからお父さん。ほら、速く

いかないと朝市が終わっちゃう・・・・・」


いや明らかにやつれてるだろ。


「ちょまてよ」


「え?って、ぅわあっ!?」




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳






「じゃあシンシアさんが冗談を言ったってこと?」


「そゆこと、まったく人騒がせなことするよな。はぁ・・・」


時間に直せば1分くらいの説明だったけど一応納得してくれたようでよかった。

よーし、とりあえず言いたいことは言えたかな。


「んじゃ朝から悪かったな。親父さんもー!待たせてすみま

せーん!」


「ん?おお、気にすんなー!」


そろそろ空も白んできたしこれ以上は仕事にも差し支えそうなので少し遠いところに位置取ってもらっているハロルドさんにも一言入れて退散しようとしたときだった。


「あ・・・待って、もうひとつ聞かせて」


アイリから俺の帰宅に待ったがかかる。


「ん?どした?」



「あの、さ?なんでそれを話しに来てくれたの?」


「え?あ・・・・・なんで、か」



言われてみれば俺にも・・・・・・・・。

なんでだろ。



「なんでってそんなの俺もわかんないけどさ、でもそれはアイリに勘違いされているのはなんか嫌だなって思った。それが理由じゃだめか?」


あー。

なんだろうこれ、ダメだうまく言えない。

俺ってこんなにボキャブラリなかったのかなぁ。

と、出版社の息子にあるまじき語彙力の無さに一人悲観していると―――




「そ、そそそっか!うんわかったっ!!じゃあねっ!!」


「おいアイリっ!?俺は台車も運ばなきゃならないんだぞ!?

ちょっと待てぇっ!」



親父さんを置いて一人で広場まで走っていってしまった。

ハロルドさんも咄嗟のことで追いかけていく。




え?どうした?


解らないことだらけである




ありがとうございました!


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