表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

全員共通 始まり

昨日、進んでいた婚約を破談にした。

特に説明できる理由はない容姿や話し方、雰囲気が嫌だったわけでもない。

しかしどうしても結婚したくなかったから。それが理由ではないだろうか。


「なんて馬鹿なの失望したわ」


それは事実、私はとてつもない馬鹿なのだから。

本音を言えば、大嫌いな身内に恥をかかせてやりたいだけだ。

なにも言わないでいるとまた叔母の小言が始まった。


叔母の話はながったらしくてとりとめがない。何度も同じような事を言われる

ならば聞く必要がないし無駄だ。

適当に流して、あいづちと返事をしてやり過ごすとようやく叔母は不機嫌そうに去っていく。


「また叔母さんを怒らせたんですって?」


従姉のシラディーナがあきれたように言った。

そういえば彼女は私の婚約相手が好きだったはず。

妙に機嫌がよさそうなのはこのせいか。


母親によく似て、怒りを露にしないようだ。


――――姉と妹の立場の違いか母方の伯母はあからさまに怒りを見せない。

しかし腹の中では何を考えているのやら。


「両親がいなくなった貴女をここまで大切に育ててくれたのだし、美味しい食事やドレスが着られるのも叔母様がお優しいからじゃない。感謝しなくちゃ」


―――大切に?


「でも私が偶然破談にしたことで喜ぶ人もいるんじゃないかしら?」


いいえ、シラディーナは私が知らない。私の衣服が良いのはきまって他所にいくときだ。


普段は部屋に軟禁され、食事は質素な、貴族が見下す庶民と同じ固いパンや豆のスープだ。


叔母いわく本当はなにも食べさせたくないそうだが、栄養失調が死因になると体裁が悪いからあたえているのだという。


「……そっそうね」


シラディーナは顔を真っ赤にしてそそくさと去っていく。

道中で壁にぶつかったりしていたが、恋をすると皆頭がまわらなくなるものなんだろうか?


―――深夜、私は叔母にボロの服ひとつで外へ出された。

まるでいじわるな継母にこきつかわれるシンデイレラか白雪姫のようだ。


「お前を引き取ったのは無駄だったわ。私を恨まないで、姉さんが異国の島の男なんかに出会わなければこんなことにはならなかったんだから」


私は身内から捨てられたことによる悲しみなどなく。

扉が閉まりようやく開放されたと思う。

ここにいても事故を装って殺されるだけ、移動しなくてはならない。


やはり夜の外はとても冷えて、あまりの肌寒さに身を振るわせた。


そんなとき、ヒタりとしたものが首に張り付いた。


「ひっ……」


気がつけば首にひんやりとしたものがおしあてられていた。


「くくく……」


月明かりに輝くナイフ、シルエットから髪の長い男だとわかる。

ようやく自由になれたのに、こんなところで死ぬのは嫌だ。


―――動いたら殺されてしまう。どうしよう。


〔誰か助けて……と呟く〕

〔とにかく大声を出す〕

〔抵抗しない〕

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ