まあ、それはともかく
このシリーズもいやに久しぶりである。
というか、本当ならば2年前、つまり当時大学3年生の年末に参加した下北半島サル調査を最後に、エッセイシリーズとしては終了する心算であった。
と言うのも、流石に3年連続1週間フル参加し、すっかりと調査その物に慣れ親しんでしまい、1年目のような新鮮な目線で調査からネタを発掘することができなくなってしまったからだ。このままグダグダと続けても間延びした日記のような何かしか書けなくなることは目に見えていた。
加えて昨年度、つまり4年目は卒論との兼ね合いもあって、1週間の調査のうち最後の2泊3日分しか参加していなかった。
そして何よりも大きいのは、
「やまやま」
「どうしましたH浦さん」
「お前、ここの調査のこと小説にしてネットに上げてるだろ」
「……………………」
ど こ か ら バ レ た ! ?
一部の友人たちには小説を書いていることも公表しているし、内何人かからは好評を得て「続きはよ」と急かされると悪い気はしない。しかし不思議なもので、書いたエッセイに出てくる登場人物ご本人から「読んだよ」と言われると途端に気恥ずかしくなったのだ。
しかも、
「一調査員の視点からだと、この調査はこう見えているのかと思うと非常に面白い」
とやけに好評を頂いた。
こうなるともう背中が痒いどころの話ではない。
もうすっかり委縮し、卒論の忙しさをダシにし、エッセイ執筆はすっぱりとやめたのだ。
……やめた……のだが。
「やまやま」
「どうしましたH浦さん」
「帰ったら今回のことちゃんと小説に書けよ」
「………………………………………………………………うっす」
大学を卒業し、大学院に進学しても下北で飲む酒が忘れられず、フラフラと釣られて調査に参加していた私に、無慈悲にも我らがボス猿から執筆命令が下ったのだった。
何度か笑って誤魔化して逃げようとしたのだが、その後も何度か「書けよ? 書けよ? 集落のやつらも楽しみにしてるんだから書けよ?」と押しに押され、今に至る。
こうなっては仕方がない。
今年度も参加したのは調査ラスト2泊3日で書くことも少ないが、連載形式を変えれば話数だけは見栄えするだろう。
と言うわけで今回は1話あたり3000字以下(下手したら1000字以下)、時系列無視の思い出した順に調査期間中にあった出来事をテキトーに書き連ねていく形式にしようと思う。
思い出せたら順次書いて行って不定期に連載する予定なので、まあ、よろしくお願いしたい。
「それはそうと」
「? 何ですか?」
「このシリーズで俺の名前『H浦』ってなってるけどさ」
「あー、はい。本名で載せるのはアレかなーって思って、一部を除きイニシャルをローマ字にしてます」
「いやそれは分かるんだけど、それなら俺の名前『F浦』にしてくれね?」
「え、それだと最初の1文字が特定されちゃいません?」
「でも『H浦』だと、なんか助兵衛っぽくて嫌だ」
「……あ、はい」
以下、H浦さん改めF浦さんでいきます。