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映画『PERFECT DAYS』(2023)は面白かったのか?


「見ろアイツはオレだ……」映画を観てそう思えることは幸せである。おそらく本作はそう思った人がかなり多いんじゃなかろうか。 自分もその一人である。


 皆様よき映画ライフをお過ごしでしょうか

 N市の野良猫ペイザンヌでごさいます。


 さて、こちら『PERFECT DAYS』は昨年末、年の瀬ギリギリに観て、個人的2023年、年間ベスト第一位に選ばせて頂きました。


 実はそれまでずっと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.3』が第一位であり、これはもう、よほどのことでもない限り今年不動のものだと確信してたんですよね。そのよほどのことが、まさか年の瀬ギリギリに起ころうとは……


 


 前回『CLOSE(2022)』の感想時「自分に最も距離が近い映画だった」と書きましたが今回チョイスしたこちらの『PERFECT DAYS』──こちらは自分そのものだったといえました。 朝起きて仕事、帰りに銭湯、一杯引っかけ週末は少し高いBARへ。


 ランドリーに洗濯物を入れその間に所用を済まし夜は本を少し読む。


 古本屋など自分が通ってた店にそっくりなんすよねw


 カセット・テープに固執しサブスクなんて知りゃしない。


 主人公が映画内でやってることは全て自分もやってきたことなだからあたりまえである。 生活の中、次第に自分のルーティンというものは決まっていく、歯を磨き、観葉植物に水をやり、ドアを開け空を見上げ、同じ自販機で缶コーヒーを買って……


 時折挟まれる夢の中の「木漏れ日」には、その日に起こったこと──ほんの少しだけいつもとは違う変化のあったことが重なる。


 それは決して劇的ではない。


 劇中は、ほぼ何も起こらないため、少し変化があると観客はいつもより敏感に反応する。


 自分の日常の変化と同じくらいだ。 BARのママに惚れたり若い姪っ子が来たりすればそれはもう、この映画において大事件だ。


 役所広司さん演ずる主人公平山も無口でほぼ喋らないため──いや会話をする相手がいないと言った方が正しいのだが──劇中、久しぶりに言葉を発しただけで大袈裟でなくハッとしてしまうこともあった。


 新井一さん著の「シナリオの書き方」でまず出てくるのが「栗羊羹」の例え──だ。「切り口」などとよく使うが、脚本を書く上で「物語」は栗の当たるところに包丁を立てていくことがそもそもセオリーなのである。


 本作においては真逆の発想といっていいほど、あえて普通なら栗の当たらぬ部分に包丁を立て、淡々と見ていくことになるわけだが、これが本当に斬新で心地よいのね。「そんなの退屈じゃね?」──と思ってらっしゃる方がいたら騙されたと思って観てみてほしい。ホントにこれが全く退屈ではないのである。


 まあ最初の十分くらいは「え、まさかこれが二時間延々続くのか?」──と少し心配になったけどw


 いつもコンビを組んでいるいるトイレ清掃のバイトくんが突如バックレたり、先述したように姪っ子のニコが家出してきて一緒に住むことになったりと、いつもとほんの少し違う──だがこの映画においては劇的な──日常をカメラは追う。


 ニコは平山の仕事を見学したいとついてくるが、そこでも平山は少し「見られることの心地よさ」を思い出すような描写もある。普段トイレ清掃員になど誰も目を当てないからだ。


 銭湯に一緒に行く時も「若い女」を連れていることに少し得意げな様子すら見せる。


 

 そんな生活も束の間、すぐ終わりを告げる。


 ニコを連れ戻しにきた母親──平山の妹との久しぶりの再会。その別れの際、平山は初めて涙を見せるが、その気持ちもとてもわかる。


 これらは全て、なんら代わり映えのしない日常に送られた瞬間的なギフトだったと気付く。


 このような生活を持続したいと少しでも頭に浮かんだ自分がまた悲しくなったのではなかろうか。

 ボクにはそのように映りました。


 面白いのは監督ヴィム・ヴェンダースの目から見た「何でもない場所」がSFのように見えること。


 逆輸入、鏡に映る鏡のように。


 外側からは美しく見えるのに、おろそかにし過ぎてるものの多さ、改めて幽体離脱状態で自分を見る感覚やね……


 こんなにPERFECTな世界に住んでて、まんざらでもない自分に気付けない……そういったことなど……


 そんな年間ベスト1、ギリギリの大逆転をくらった本作。図らずも、その前年『トップガン/マーヴェリック(2022)』を1位にした時と同じ心情だったね


「そうせざるを得ない」というか、これが1位でないと自分の中の映画に対する信条も揺らぐのでは──と、そんな感覚だった。 


 さて、少し今回は真面目な文体になっちゃったけど皆様、2024年も「DAY」ではなく「DAYS」──毎日がPERFECTな365日を目指し、お過ごしくださいませ


 今年も良き1年、そしてよき映画ライフになりますよう。


 そういえば『PERFECT DAYS』で唯一肩を震わせて微笑ってしまった銭湯の場面。


 洗い場で立ち上がろうとしたおっちゃんの尻に椅子が張り付いたまま取れず、カポ〜ンと落ちるとこは妙にリアリティがあって好きだったな。


((っ´ʜ`с)):プ…


【追記】

 本日1/23『PERFECT DAYS』がアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたみたいですね。おめでとうございます!



      〈インフォメーション〉


こちらの映画感想記、

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