映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere all at once)』(2022)は面白かったのか?
ども、皆様、良き映画ライフをお過ごしでしょうか?
N市の野良猫、ペイザンヌでございます。
ボクの住む「N市」はシネコンといえどまだまだ「口頭で観たい映画のタイトルを伝えねばならない」──そんな劇場もあります。この場合タイトルのどこをどう切り取って伝えればいいのか、頭を悩ます時もあったりと。
先日などマーベルの「『クアントマニア』1枚〜」と言ったら「は?」と返されたので「……『アントマン』一枚」と言い直して妙な敗北感を覚えました
今回などご丁寧に「『エブリシングエブリウェアオールアットワンス』一枚」とカッコよく、さらっと流暢に、頭の中で練習してた通りに、言おうとしたら……噛んじまったしw
しかも「はい、エブエブ一枚ですね~」とごっつ簡略して返されるし。「そっちでよかったんか〜い!(# ゜Д゜)」──と。
さて感想というか個猫的見解はといいますと、漫画の『バクマン。』的に言えば『RRR(2022)』が万人受け「王道」とするなら、こちら『エブエブ』はそれこそ観る人を選ぶ「邪道」ともとれるのではないか、などと。
ただどちらの作品も同じような凄さを感じているというか感服しましたね。いや~マジでよくぞやってくれたなというか。個猫的にはなかなか「どストライク」な作品でした。
「観る人を選ぶかも」というのは悪い意味でなく実際体感したというか……
というのも今回ボクの右隣に少しお歳を召されたマダムとその娘っぽい方が座られましてですね、ひょっとしたら娘の方がアカデミーの言葉に反応し「観に行ってみよっか?」と連れてきたのかも。
ただマダムがね、なんというのか、映画の中盤あたりからですかね?
どこか「離脱した」ようなオーラを少し感じたんですよ。そもそもマルチバースなどといった小難しい概念がよくわかってないのでは……とも心配したり。
一方、逆にボクの左隣に座ったおっちゃんなど離脱どころか完全離脱、いやもはや放棄。ガ―ガーいびきかいてましたからねw
とはいえボクもわりかし全集中して観てはいたのですが、確かにね、「遅れをとる」というか、すっげ~脳でいろんなこと考えてるうちどんどん、容赦なくストーリーが進行していくじゃないすか?
とにかく「速い」!
なので隣でガーガーやられても「あ~なんとなく気持ちはわからんでもないよ……」と腹も立ちませんでしたな、安心しろ、おっちゃんw
まあ2023年のアカデミー11部門ノミネート、そして7部門受賞と快挙でしたが、もうね、ぶっちゃけ獲っても獲らなくてもいいす──なんて思ってたのも確か。
いずれにせよ「こりゃちょっと革命的な映画かもな」ってのは十分体感させてもらいましたので。カンフー、SF、家族愛、ブラックコメディ、シュール、とにかく「混ぜこぜ感」が凄ぇ。
ボク的に「どストライク」だったのは「モンティ・パイソン」並みの「マジくっだらね~(ごめんなさい。これペイザンヌ的には最高の誉め言葉なのです)」や『マトリックス(1999)』並みの哲学感が融合してたのが大きい。
あの「岩」のシーンなんて、フト我に返って冷静に考えると「どうしてわしゃこんなピクリとも動かない映像を真剣にじっと見つめているのだらう……」と自分に可笑しくなってしまったほどで。そういう種類の笑い方は映画館では珍しいというか、初めてかもしれんw
莫大な数のマルチバースの壮大なストーリーなのに主要人物が五人だけというのもいいね。そう、基本この作品は「家族ドラマ」。
「もし、あの人についていかず結婚しなかった場合どうなっていたか?」
はたまた「もし『指がソーセージの人類』へ進化の道を辿っていた場合どうなっていたか?(自分で書いててしょーもな……w)」
まあ「因果」と言ってしまえばそれまでなんだけど、例えどんな道を歩もうとやっぱりこの五人は集結してしまうという設定は冷静に考えてみて「いや、そんなわけねんじゃね?」と思ってしまうわけで。
そんなこと考える余裕も時間も与えないのもまたお見事。異様にテンポが「速い」のは観客に考える隙を与えないためという理由もあるのかもしれませんな。
テーマというか思想もまたいいやね。「さまざまな可能性があった自分」の中で最もダメなのが「この世界の自分」という。にも関わらず「他の世界の自分たち」が「今の自分」を一番羨んでるようなニュアンスすら匂わせる。
「あの時ああしていれば」「こうしていれば」そんな「if」という妄想ではなく「今ここにいる自分が一番ベスト」なのであり、願うなら君はこれからだってどんな自分にもなれるんだよという「最悪が最高に転換する肯定感」はとてもいいなと。
人生の選択……「選択」?
あれ……主人公が「コイン・ランドリー」を営んでるって……ひょっとして「選択」と「洗濯」をかけてんのか? そうか、そうだったのか! 大発見だこりゃ!
Σ(゜Д゜)
──いや「エブエブ」は邦画じゃねーし! 日本語のダジャレ関係ないし!w
……にしても、ただの偶然と言うにはできすぎてる気がしないでもないよね……
途中「別の世界にジャンプして自らのレベルを上げる──そのためには相手があっけにとられるほど「意味不明な行動」をしなければならない」なんて場面があったりしますよね。
中にはまあひどい下ネタもあったりして引く人はそこで引いちゃうんでしょうね。
とはいえ、ボクはそこでも少しゾクッとしたんですよね。
「今の自分から離脱・飛躍するためには、今まで自分自身ですら考えつかなかったとんでもないことをしなければならない」──そういうことを伝えるのに、こんな方法で表現するやり方もあったのか……と、ちょっと唸りました。
さて実はボクは昨年『ドクターストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)』を観た時、壮大な話なのにやけに「狭く」感じるなと少し思ってた派です(好きな方ごめんなさい……)。
それが今回『エブエブ』では真逆だったのにも驚きましたな。
主人公たちの「実際の行動範囲」が思ってたより狭い(それこそ宇宙とかまで広がっていくストーリーだと思ってたんで)。ただ、その割には物凄く「広さ」を感じたのね。
その辺りがこれまでよりもずっと「マルチバースの扱い方に成功した映画」と言われる所以なのではないかと。
監督はダニエル・クワンとダニエル・シャイナート。二人合わせて「ダニエルズ」で~す!──と、まるでお笑いコンビみたいだがこれは冗談でなく本当にそう総称されてるみたいであります。
てっきりウォシャウスキー兄弟(現在は姉妹ですが)やルッソ兄弟みたいに兄弟監督とばかり思ってたけどそうではなく、二人は大学時代に会った友人同士みたいですね。
彼らの長編デビュー作の『スイス・アーミーマン(2016)』もヘンというかぶっとんだ映画だったけど、あれに比べると今回も難解とはいえ「まだわかりやすい方」のヘンでよかった気もしますw
この『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。
「合う合わない」がかなりあり「途中退席する人も多い」らしいので日本ではやっぱこのまま賛否真っ二つに分かれていくのかなぁと。
まあアカデミー賞作品となってしまったのでそれだけ人の目に触れることも多い分、通常よりもその割合がくっきり見えることもあるんでしょうし。
『アナと雪の女王(2013)』が公開された時の現象にも似てる気がします。
「アナ雪離婚」なんてのもありましたやね。「この映画の良さがわからない人とは一緒にいたくない!」みたいな。
ただ、こんなことが起こった時ほど、自分とは反対意見の人が言ってることも「あ~まあ相手が言うこともわからんでもないよな」とか「他人は決して私ではない」といった事実を受け入れる寛容さが試される気もするわけで。
楽しむはずの映画で争いになることほど本末転倒というか、哀しいことはないですからね~
では、また次回に!
【この映画のキャッチコピー】
『ようこそ、最先端のカオスへ』
【この作品の舞台】
アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス郡サンフェルナンド・バレー地域。
主人公の経営するコインランドリー「San Fernando Majers Coin Laundry」は、カリフォルニア州のサンフェルナンドに実在し訪れることができる。写真を撮ることもできるし、もちろん洗濯物を持ち込んで普通に洗濯することもできる。
【原題】
『Everything Everywhere All at Once』
直訳で『すべてが、どこにでも、同時に存在する』
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