映画『北国の帝王(Emperor of the North pole)』(1973)は面白かったのか?
『みだりに……しないでください』とかいった言葉がありますよね。私、自分でそういった意味の言葉を日常で使う際、いつも『みだらに……』と言ってました、はい。
(ー_ー;)
そーかぁ、『みだりに』だったのかあ、そうだったのかぁ、道理で地下鉄で『みだりにボタンを押さないでください』とか見かける度になんとなく違和感があったんだよなぁ、と。
『みだらにボタンを押す』って行為を改めて想像してみるととんでもないシチュエーションですな。どんだけあられもない姿なんだよと。これまでの人生の中で絶対一度はどこかで使ってしまってる気がするなぁ……。ああ、日本語って難しい。
ども、まいどお馴染みペイザンヌであられる!
と、帝王っぽく(帝王っぽくて何だ?)スタートしてみましたが、別段この映画は歴史スペクタルにあらず。ましてや『北国の帝王』といっても千昌夫のことではありません。
なんでこんなマイナーな映画をチョイスしたのかと思われる方もおられましょうが「いや~、こんなぶっ飛んだ設定の映画があったとは……」というだけの理由です。タイトルすら知らなかったのは不覚でした。勉強不足でした。
この映画を一言でいうなら、
「なんて、大人げない映画なんだろう……」
(ー_ー;)
ですかね。
〈大恐慌で大勢の失業者たちが溢れた1933年のアメリカ、オレゴン州。彼らの一部は流浪の民となり列車にタダ乗りしてはあちらこちらをさ迷う“ホーボー”を生み出す〉
“ホーボー”ってボブ・ディランの初期頃の歌なんかでもよく出てたけど、なるほどこんな感じなんだなって肉眼て確認できましたね(肉眼じゃないけど)。ブルース・ハープだけを片手に列車に飛び乗って……なんてのが想像できます。
んで、そんな彼らに対し──
「俺の列車には絶対に誰もタダ乗りさせねぇ!」
(# ゜Д゜)
と、ハンマーをぶん投げ、チェーンを振り回すのは赤コーナー、アーネスト・ボーグナイン。JR東海の乗務員にも見習ってほしいくらいのこの商人魂。
ちなみにアーネスト・ボーグナインはTVドラマ『エアーウルフ』なんかを見てた方には懐かしい顔。アカデミー賞作品『マーティ(1955)』に出演、というか映画『ポセイドン・アドベンチャー(1972)』で最後まで生き残った人といった方がわかりやすいんですかね。老舗俳優ですね。
(*_*)「いや~、実に大人げないですね、古舘さん」
(-_-)「そうですね~、ここまでくるともはや少年のような大人げのなさですね」
に、しても凄い顔ですね。今回の彼の顔は……。
人間の顔って本当に鬼気迫ると目玉が鳥山明の漫画くらい飛び出すんだなと肉眼で確認(肉眼じゃないけど)。
対する青コーナー、そんな彼の列車に、
「こちとら意地でもタダ乗りしちゃるぞ、ゴラァ
っ!」
(#`皿´)
と、意気込むはホームレス軍団の帝王ことリー・マーヴィン。
こちらも若い! 私が最初にこの人を見たのは映画『デルタフォース(1986)』でしたが、その時はもう既にヨボヨボでしたからね。
(-_-)「いや~、こちらもまた大人げないですねぇ、小鉄さん」
(*_*)「いやいやこの闘い、わかりませんよ。今日の彼の大人げなさ、いつもと気迫が違います。タダ者ではないなと………」
(-_-)「よっぽどタダが好きなんですねぇ」
そんな、彼らが見せる闘志はまさに怪獣のごとき。その姿はまさにサンダ対ガイラ、いや、フランケンシュタインvs地底怪獣、
ああ、若いって素晴らしい──
そんなまさに命がけでのタダ乗りの攻防!
その結末や、いかに……?!
ヤボです──
『電車賃くらい……払えよ』
(-_-;)
トカ、
『乗せてやりゃいいじゃん……』
(-_-;)
トカ、
ここで彼らに対しそんなことを言うなんて、そいっぁヤボってもんです。そんな冷めたサラリーマンのような見方はこの老舗二大スターに対して失礼なのであります。
そこには決して触れてはならぬという暗黙の了解、その大前提あってこそ成り立つ映画なのであります(たぶん)。
いや、むしろ電車内での喧嘩を見て見ぬ振りをするくらいであるのなら、いっそのこと──
「いーぞ! やっちまえ!」
「どっちもぶっ殺せ!」
と、煽るくらいの活気がアメリカを、はたまたこの日本を、不死鳥のごとく生き返らせるのであります。きっと監督もそう言いたかったに違いない。
──か、どうかは知らんけど。
そこは踊る阿呆に見る阿呆。
同じ阿呆なら踊らにゃそんそん、ロビンソン。
『きっとい~つか、自由~にタダで乗れるはず~♪』
(ー_ー;)てか、それ“ロビンソン”じゃねーし。“空も飛べるはず”だし…… と、冷静かつ的確に突っ込まれる前に今回はこの辺で。
紳士淑女の皆様は、無賃乗車やキセルなどせず、車内では最低限お互いのマナーを守り、喧嘩や痴漢などの迷惑行為を《みだらに》行わぬようこころがけましょう。
(本エッセイは別サイトからの再上映となります。一度どこかでお読みになられた方には二度までもしょーもないモノを読ませて申し訳ありません。野良猫に噛まれた、もしくは鍵の閉まってないトイレのドアを開けてしまった、とでも思ってやってください──合掌………………)
【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】
★『ホーボー・ウィズ・ショットガン』(2011)
……本作に出てきたホーボー。タダ乗り……じゃなかった、“るろうに労働者”を演じるのは『ブレード・ランナー』の時にも御紹介したルトガー・ハウアー。とにかくショットガンを打ちまくるだけのB級アクション……なのかな? なんでも『フェイク予告映画祭(実際には存在しない映画の予告)』でグランプリを獲った作品を映画化したそうです。『マチェーテ(2010)』なんかもそれです。未見、かつ、なんとなく一生観ることはないんじゃないかな~という映画……だったら選ぶなよって感じですが(笑)
★『暴走機関車』(1985)
……機関車での対決というと何故かこの映画を思い出してしまう。黒澤明、他二名の脚本をもとにロシアのアンドレイ・コンチャロフスキーがハリウッドで映画化。黒澤版はもっとコミカルだったらしいが「突然」走り出した機関車というモチーフに黒澤明が何を託そうとしたのかいつか日か脚本だけでも読んでみたい……。
★『ヴェラクルス』(1954)
……本作のロバート・アルトリッチの初期作品である西部劇。300万ドルの護送のために雇われたガンマン二人の友情、確執、対決を描く。あまりにま有名過ぎるゲイリー・クーパーとバート・ランカスターのラストシーンでの対決は西部劇史上、いや映画史上に今でも残っているので、そこだけでも見ておくと話の種になるかも? 私は幼い頃、藤子不二雄先生の『漫画道』でこの映画を紹介しててるのを見ていつの日にか見たいと思ってました(笑)