映画『鑑定士と顔のない依頼人(La migliore offerta)』(2013)は面白かったのか?
ども、ペイザンヌです。
昔、ドラえもんのエイプリルフールネタでしずかちゃんがこんなことを言ってました。
「いい嘘というのは一度驚かせて、その後ホッとさせるものよ」
なるほどなるほど、さすがはしずかちゃん。いいことを言う。
まあ、結果から言ってしまうとこの『鑑定士と顔のない依頼人』はその真逆を行っている映画かもしれません。
ついでに言ってしまいます。
この映画は当たりです。個人的にはそうとう強い部類の当たりです。この数年では頭ひとつ群を抜いた心理サスペンスでした。満腹感ハンパないす。本当に御馳走様でした。
ガツンとネタバレする気はさらさらありませんが、ひょっとしたらこうやって誰かの感想を先に読んでしまうことさえもネタバレになってしまうんじゃないかと少しヒヤヒヤします。余計な前知識のないまま、ぶっちゃけ言えば、パッケージの裏のあらすじすら読まずに見た方がよりインパクトがあるんじゃないかと思いますので。
というわけで、さあ最寄りのTSUTAYA、もしくはGEOへGo!
行かない方だけ続きをどうぞ(笑)
まず、筋の割には主要登場人物が4人ないしは5人という小舞台のようなキャスト構成であり、見ているこちらの頭をごちゃごちゃさせないところがよしです。どっぷりと心理戦とミステリーに集中できます。
主人公はタイトルにあるように美術品の真贋見極める鑑定のプロ。(他の映画で英国王にスピーチを教えてやったあのおじいちゃんですね。ジェフリー・ラッシュ)
重要なキーワードは『偽物の中にも本物以上の輝きを放つものがある』というコトバ。
人間嫌い(ここ大事)である彼が今回対峙するのは美術品ではなく“愛”の真贋になっていくわけです。
正直、このモチーフだけでもひとつの面白い物語になっちゃうんですよね(笑)
しかし、それだけで終わらないのが職人技。そこをひとつのベースにして、さらに上から“謎”や“疑惑”や“魅惑的なアイテム”などのトッピングをワシワシと乗っけていくわけですから。これが美味くないわけがない。
さすが『ニュー・シネマパラダイス』で完璧な伏線と感涙のドンデン返しをぶちかましてくれたジュゼッペ・トルナトーレ監督やわ(この方は基本、監督兼脚本)と完全に脱帽した次第。
推理小説などで、
“who done it?(誰がやったか?)”
トカ、
“how done it? (どうやってやったか?)”
──ナドありますがそれらが全て詰め込まれているといっても過言ではないです。
おそらく10人中3人は終わったあとにもう一度巻き戻して……おっと“巻き戻し”は10代20代には通用しない“死語”でしたね、チャプターチェックをしてしまうのではないかと思います(私はやった方・笑)
ただ私がびっくりしたというか、一番のドンデン返しだと思ったのは最後の最後、“この映画のテーマが何であったのか? ”に気付いた時だったのではないかということ。
「あっ! そこにもってくんだ!」的な。
個人差はあると思いますが、そこに気付けるか気付けないかでこの映画に対する評価が二倍にも十倍にもはねあがる様な気がします。
言い変えれば、
“この映画は何を言いたかったのか?”
それを見終わった後、考える価値が十二分にある映画だと思うのです。
ただ、私の頭の中にあるそれが本当の答えであるのかはわかりません。
なぜかって?
私は鑑定士ではないから──(◎-◎;)
まあ、それがたとえ本当のことでないとしても私の中では充分に光を放ちました。良作です。
【本作から枝分かれ映画、勝手に三選】
★『遊星からの物体X』(1982年版)
……え、まったく関係ないだろって? いやほら、本物の人間かそれともエイリアンに乗っ取られた人間なのか真贋確かめようとするところが。熱した針金で血液を……ひぃぃぃぃっ!!!!
★『クィルズ』(2000)
……本作の主演、ジェフリー・ラッシュが“S”(サディスト)の語源でもあるマルキ・ド・サドを怪演。ちなみに“ドM”らのMの語源はザッヘル=マゾッホという人だそうですが… こっちはあんまり有名じゃないのね(笑)
★『ニュー・シネマパラダイス』(1988)
……やはり好き。どれくらい好きかというと拙作『イシャータの受難』の第二章でも引用してしまうくらい好き(番宣)。まだ見たことのない人はぜひお薦めしたいですが、もうあんまりいない……よね?