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映画『キングスマン(Kingsman:The Secret Service)』(2014)は面白かったのか?

 ♪ダメな~映画を盛り上~げるために~たくさんの命が捨てられていく~♪


  と、いう歌がありました。



 おかげで人がたくさん死んでしまう映画を観るたびにこのフレーズを思い出し、その都度「あ、これ、ダメな映画なんだな」などと頭を一瞬過よぎってしまうようになってしまったじゃないですか。どーしてくれるんです、桜〇さん……(ー_ー;)



 そんな感じで「いやー、ずいぶん死んだな今回はしかし 」というのが今回取りあげた『キングスマン』。対陰謀組織の特殊エージェントのストーリー。


 監督は『キック・アス』シリーズのマシュー・ヴォーンですやね。



 では、ミス〇ルが歌ったようにこの映画が果たしてダメな映画なのかというとまた違うような気もするし、イヤ、しかしいくらなんでもこりゃヤリ過ぎじゃねーか? トカ思っている自分もどこかにおられます。


 この映画、実はR15指定なのですが……それがナゼなのかがよくわかったというか。


 


 理由として『刺激の強い銃器、刀剣による殺傷、肉体損壊の描写がみられる』ということなのですが、いや~、まあ凄い。しかもその動きが派手であり、そしてカッコヨク、けれどとても残酷で、しかもラスト近くは人が死ぬことで思わず笑ってしまうような演出もあったりするから、こりゃ仕方もないわけで。



 ぶっちゃけ言うとこの映画には(ある理由により)人間同士が50人くらいで殺し合う映像が延々続く場面があるんですよ。しかもそれが銃撃戦などでパンパラバンパラってわけじゃなく…… ええ、そんなヤワな映像でなく………… 自粛……(´д`|||)


 


 なんでしょーかね、この気持ちは、しかし。怪物やエイリアンに人間が殺されたり食われたりするのを見せつけられるのであれば「まあ、しゃあないわな、だって相手モンスターやもんな…… 」みたいな諦めの境地にも至れるわけですが、人間同士でこうもズバズバガツガツやられると脳内モードに妙な危険信号が放たれるわけですよ。


 で、結局どうなん? おもろいんかい、おもろくないんかい? と、問われると、やはり……。




「めっさ、おもろかったですわ!(笑)」




 と答えるしかなく…… ( ̄▽ ̄;)




 “よほどでないとスパイ映画は深刻にシリアスに作ってはいけないんちゃうか?(なんかコケそう・なんか疲れる・なんか類似品か多すぎて記憶に残らない)”という私めの持論をオールクリアー。見事な匙加減でおました。



 

 まあ、まず骨組みがしっかりしてますからね。ひねた不良でしかなかった主人公タロン・エジャトンが“キングスマン”への試験を通し、成長していく過程。


 彼を導く師匠コリン・ファースの信念に基づいたカッコヨサ。


 そして悪役《サミュエル・L・ジャクソン》のキャラクター。さらには彼の手下である女殺し屋にも味がありました。左右の義足そのものが鋭い刃のついた武器となっており、まるで知る人ぞ知るカルト漫画『殺し屋1《イチ》』を彷彿させる蹴りのアクションを見せてくれます。(映画は2001年に制作されておりますが未見です。浅野忠信らが出てますね)



 そのバトルをビビりながら見ているルークスカイウォーカー……って。どわっ! !

 (゜ロ゜ノ)ノ

 ……マーク・ハミルさん。何してんのあーた、こんなとこで!(笑)

  そこにはジェダイ・マスターとしての貫禄はこれっぽっちもありませんでした。『スター・ウォーズ/エピソード7』であまりにも出番がなかったんで暇だったんすかね? まあ、こちらでも出番は友情出演くらいの扱いでしたが。


 そうなんです、こんな感じで悔しいことに王道の面白さ+奇抜なアイデアがこれでもかと詰め込まれてるんですよ、この映画。



 しかし、この闘っているシーンの演出あるじゃないですか。急にガッとスピーディーな動きになったかと思えばヒューンとスローになったり……って動き。最近いろんな映画でやたらと見かけるようになったなぁと。いや、カッコイイんだけどね。



 この動き、一見『マトリックス(1999)』辺りから始まったように見えるけど、それを完成させ、定着させたのはガイ・リッチー監督の『Snatch-スナッチ(2000)』辺りからだったんじゃないかなと信じている方であります。

 同監督の『シャーロック・ホームズ(2011)』でもホームズがボクシングをするシーンでカッコヨク使われてましたやね。



 まあ、私なんかはブルース・ウィリスがヨタヨタになりながら泥臭く闘ってるのを見てる方が性に合ってたりもするんですが(笑)



 で、問題の残酷シーンなんですが、見終わった後、妙に違和感が残るんですよ。これはナゼなんやろ? と少し考えてみたところこの『キングスマン』という映画がエンタメだからなんだろな、と。



 人が人を残酷に殺す場面を扱った映画はこれまでいくらでもありました。



 北野武監督が多大に影響を受けたであろあサム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ(1969)』や『わらの犬(1972)』、メキシコ映画の『エル=トポ(1970)』といった無駄に、というか、過剰に血がダバダバ流れる映画です。カルト寄りになるんですかね、ただ、それらはどれだけ血しぶきが飛ぼうと笑うことはなかったはずなんです。


 そういうのは大抵、暗くて、目をそむけたくなって、見終わった後どよ~ん(=_=;)となるような映画が大半でしたし。



『キングスマン』はエンタメであり毛色が違うはずなのにそれをやっちゃってる。妙な違和感の正体はそれかな、と。


 

(残酷に)人を殺すのを見てカッコイイと思う自分てどーなのよ? 人の頭が爆発するの見て笑う自分てありなの? と、こういう映画は少しでも観ている方が思わなければマズいんちゃうかな、と。


 そういった意味では新しい時代の映画、というより、深読みし過ぎだとは思うんですが『楽しけりゃいーじゃん』という風潮に対するアンチテーゼみたいにも考えられますやね。形は違えど、これは、以前このエッセイでも取りあげました『Mr.タスク(2014)』と類似品なのかもしれんぞ、と。



 めちゃめちゃ面白いです。ホント、お薦めです。それこそ割りきって、映画を観ている間はとにかく楽しんで笑ってもいいと思います。



 ただ、見終わった後に私も感じましたあの違和感を少しでも感じてほしいような気がしないでもないです。それさえ感じることができれば別にR15なんて看板は取っ払っちゃってもいいと思うくらいです。



 とはいえ、『キングスマン』ごっことかいって小学校の教室で彫刻刀なんかで遊ぶ姿を想像するとゾッとするのもわかりますがね。 

(-_-;)



 そう、この映画の本当に怖いところはノリでそんなことを誘発してしまいかねないってとこなんです。痛みを感じないんですよ。それどころか逆に「おお~、すげぇ…… 」とか見いっちゃう。


 私にとって映画ってのは“転ばぬ先の疑似体験”みたいなところもあるんで、なんていうのか「ダメ! ゼッタイ!」みたいなのがないと逆に不安になっちゃう(笑)


 なんだろうな……?


 例えるならば……


 免許の書き換えや、教習所に行って、ビデオで『ワイルド・スピード』なんかを見せられたあげく「え~、危険ですので絶対真似しないように」と言われたような感覚でしょーか?


「……いや、言ってることは間違ってないし、この教官おもろいやっちゃけど…… ちょっとアタマおかしいんちゃうか?

(゜_゜;)」と認識できるかどうかを試されているような……。


 考えてみると、私ら子供の時なんてなんも考えずに月曜ロードショーあたりで「こんなんやっていいの?」くらいの映画、民放でバンバンやってたわけですし。


 比べちゃいけないんでしょうけど、私、ちょうどこれと一緒に『ガンジー(1982)』を借りて(どんな、組み合わせだよ?(^_^;))見てたんですよ。


 非武装の群衆市民に対してインドの軍隊が無差別射撃する(アムリットサル事件)場面なんて『キングスマン』の問題のシーンよりゾッとしましたし、有名な“塩の行進”の場面でデモ市民が警官に肩や額を棒で打たれるのを見る方が数倍 ”痛く“ 感じるんですね。


 そう、ただ棒で殴るだけ。うっすらと流れる血。それがとても胸に刺さるんです。



 だったら『ガンジー』もR15にすべきじゃないかというとそうはならない。これは観ている側の良心が痛むからなんだろーなと。


 そこでガンジーが『これを我慢しろってのが非暴力ってんなら…………断食だんじきなんかやめたぁぁぁぁぁ!』と、サラリーマン金太郎のごとく群衆をバイクで先導してマッドマックス並みのアクションでインド軍隊を血祭りにあげいく……となるとまた話は違うのかもしれんけどね。



 現在、パート2も制作されておりますので楽しみですな。やっぱり前作を越える過激描写にまた走ってしまうのか……な……? 


 あ、『ガンジー2』じゃないですよ。そんなものは存在しません、念のため (笑)



【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】



★『レポゼッション・メン(2010)』


 ……ジュード・ロウ主演の近未来SF。高価な人工臓器のローン返済ができなくなった客から“臓器”を冷徹非情に無理矢理回収するレポ=マン。ひょんなことから今度は彼がもと同僚たちに“追われる身”となるのだが……。思っていた以上に面白く、この映画にもラスト近くでかなり残虐なシーンがあります。が、映像的に不思議なカルト感を感じ、個人的には評価の高めの一本です。『未来世紀ブラジル(1985)』に通ずるようなガクゼンのラスト。海辺でトロピカル・ドリンクを飲みながらガハッと笑う主人公の顔が今も忘れられません。

 これも公開された時は『レポ・マン』だったような気がしますが(定かではないです)レオス・カラックスの有名な奇作『レポ・マン』と同じタイトルになっちゃうし区別したかったのか……な……?




★『アベンジャーズ(1998)』


 ……アイアン・マンやらキャプテン・アメリカのアレではありません。別物です。1960年の英スパイドラマ「おしゃれ(秘)探偵」の映画リメイク。ビシッとスーツに決めた英国紳士が傘を使って闘うというとコレをナゼか思い出しまして。それこそラスボスで007のショーン・コネリー、ヒロインで『キル・ビル』のユマ・サーマンなんかが出演してるのですが、どうにも盛り上がりにかけず……。『キングスマン』も……うーん、英国紳士スパイものか~ ……と、なんとなく最初そのイメージがあって手が伸びませんでしたが、本作はあの時のフラストレーションを見事解消してくれましたね。うん。




★『007/私を愛したスパイ(1977)』


 ……1本くらいは007シリーズをと思ってあげてみましたが、私としてはここらへんのボンドが一番おもろかったんじゃないのかなと。もちろん個人差、年齢差ありますんで異論は100%認めます(笑)

『オースティンパワーズ(1997)』だとあまりに笑いを狙い過ぎてるため見ていて妙に冷めてしまうし、最近のシリアス過ぎる007もどこか時代にマッチしてない感が……。真剣に撮影したであろうにも関わらず今、観てみるとおバカな感じ満載のシリーズ第10作目。本作の義足ギロチン女の元祖ともいえる鋼鉄の歯で何でも噛み砕く伝説の悪役“ジョーズ”(リチャード・キール)初登場作品。


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