表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/101

映画『トイ・ストーリー3(Toy story 3)』(2010)は面白かったのか?  

(´Д`)ネタバレだよ。

 昔、『トロン(1982)』という映画があった。


 ジェフ・ブリッジス主演のいわゆるCG映画の先駆けである。始まって30分ほどは物珍しさで釘付けとなったが31分後には飽きた。ストーリー性というものがほぼ皆無だったからである。


 映画というものはやはりまず脚本ありきだと子供ながらに唸る。


 ハリウッドはようやく手に入れた魔法のランプをなかなか上手く使いこなせない。そんな悪戦苦闘の日々がしばらく続くことになる。


 それでもなんとかして、そういった“おもちゃ”を使いこなそうとするB級映画もちらほら…


『スキャナーズ(1981)』や『狼男アメリカン(1981)』など、そんな痕跡が見受けられる。

『ターミネーター(1984)』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)』辺りで目が覚めかけて、『ジュラシック・パーク(1990)』では映像的に完全な進化を遂げた。

 

 かと思うと『ツイスター(1996)』やらトカゲの『ゴジラ(1998)』なんぞでまたコケる。その後といえばもう開き直り、話なんかどうでいいからもっとスゲぇもん見せろ! みたいにな風潮が強まる。


 時は流れる。もはや『ドラゴン・ボ―ル/EVOLUTION(2009)』のような作品がアカデミー賞を獲っても私は決して驚かないだろう……(笑)


 ピクサーの最初の劇場公開作品『トイ・ストーリー(1995)』が公開されたのはそんな狭間だった。


 私はう~んと首を傾げた。


 ついに“脚本”はおろか“役者”までもが不要になってしまう時代がやってくるのか──


 ガ、


 面白かった。

 

 ぶったまげた。


 嬉しかった。



〈新しいおもちゃ〉スペース・レンジャーのバズ、そして彼に取って変わられぬように悪戦苦闘する〈古くさい〉カウボーイ人形ウッディの姿、それははからずもその頃の“映画界”の縮図となってしまったように私には思えた。


 バズは自分が物凄い能力を持っていて何でもできることを信じてやまない。だが、物語の中盤で、バズもやがては気付いてしまうのだ。自分は結局“ただのおもちゃ”でしかなく、空を飛ぶこともレーザー・ビームを出すこともできないということを。


 今、考えるとそれは〈最新の技術〉と〈昔ながらの古き良き映画のスタンス〉を融合させていこうというピクサーの意思表明だったかのように思えて仕方がない。

 そこから最新作までピクサーの映画は一度たりとも私を裏切ってくれたことがない。

『思いだそうよ、思いだそうよ』と問いかけてくる。


 それは時に「本当の自分の姿」であったり「子供の時、押し入れにいたモンスター」であったり「中年太りを知らないヒーロー」であったりする。「うるさいくらいの親の愛情」であったり「レースに勝つことより大切なことがある」ことであったり、時には母が作ってくれた「ラタトゥイユ(手料理)」に姿を変えもした。


 ディズニーの勇者やお姫様や魔法使いが潜在的な“イド”であるとすれば、ピクサーの物語は誰もが体験したであろう(またはするであろう)“懐かしいような実体験”だ。


 

 んで、『トイ・ストーリー3』。2011年、第83回アカデミー賞長編アニメーション部門および主題歌賞を受賞。つい先日私もアメブロにて涙をどうしてもこらえきれなかった映画の一本に選びました。


 やはりアレですね。急にまとめて三本観るよりリアルタイムで観ていると思い入れが違いますやね。アンディ少年が大学生になってるってだけでもうウルウルきちゃいましたもん。


 オープニングの列車を使ったドタバタもそうだけど、いかにも人の良さそうなハグベアが実は親玉で夜になると地下組織みたいなところでポーカーしながら悪巧みしているシーンとか西部劇ぽくてああいうの好きだなぁ。実写ならジーン・ハックマンとかにやってほしいくらい(笑)


 猿のシンバル人形なんかも可笑しいが不気味だし、赤ちゃん人形(これも怖ぇよ!)がハグベアを持ち上げるところはダース・ベイダーが皇帝を突き落とす場面ぽくてなんか笑えるし。


 と、前半のドタバタもさることながらナニゲにしれっとくらった最後のドンデン返し。


 正直予告を見た時は“ちゃんと感動できるのかね?”と、心配していたわけですが最後の最後に『やられた……』と、今回もいい意味で裏切ってくれましたわ、はい。


『あなたがこの家を出ていく日がくるなんて……』と母親がアンディを抱きしめる場面で「あっ!」って思いましたもん。


 ココですよ、奥さん。


 ココ。


 “子離れ”


 ただアンディとウッディの別れだけではなく、母親の新境をウッディにダブらせてくるとはまさか思ってませんでしたからね。もう、ここで一気に涙腺がゆるむ。そしてその母子の一部始終を見ていたウッディの行動こそがラストにつながるわけで。


 あんまり気にしてなかったんだけど『トイ・ストーリー』って三部作通して“究極の片想い”の映画なのね。(待てよ、あ……あまり考えたくはないが、ひょっとしてB.L.要素もあるのか?

( ; ゜Д゜)!


 そもそもウッディは自分がこんなにもアンディのことが好きなのだということを伝えられない(ルール的に伝えてはいけない、というか不可能)というのを前提に、彼はいつの日かアンディが自分を必要としなくなることすら心の何処かでわかっているわけさ(切ない……)。


 そのくせ他の皆がいくら“アンディに捨てられたんだ!”とわめいてもウッディだけはいつだって“アンディはそんなやつじゃない! ”とちゃんと信じている。(不安ながらも)これはもう愛というか親心にも似ている。


 もうひとつ面白いのがウッディの性格を“強くて優しくて友を決して裏切らない”と設定したのが(人形ですからね)他ならぬアンディだということ。幼い頃、そんな憧れのヒーロー像をウッディに転写して遊んだのは自分もいつかそうなりたいたいうアンディ自身の願望に他ならないわけで、だからこそウッディはそれを決して“裏切れない”のである。


逆にこの立ち位置から見てみると、あら不思議、ウッディからアンディへの気持ち、それが今度は“子が親に対する気持ち”へと変わる。こうしてそれぞれの役目や立場を入れかえながら互いの結束を強め合うこと。そういった過程の頂点こそがあの最後の離別へと繋がるのではないだろうか。


 最後の最後に少女にウッディのことをそう説明しながら手渡すアンディの胸のうちはいかなるものだったのか。


 もしもこの先ストーリーが続くとしても、アンディ自身が岐路に立った時にはきっとウッディのことを思い出すに違いないのでしょう。(彼らはある意味一心同体なのだから)


──ウッディならば諦めない。


──ウッディはそんなことをしない。


 そしてそんなヒーローを生み出したのは他ならぬ自分自身の胸中なのだということを彼はいつか発見することになるのでしょうね。



【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】


★『キャスパー』(1995)


 ……友達がほしいお化けのキャスパーと少女のハート・フルコメディであり、『おばけのキャスパー』の実写映画。『トイ・ストーリー』の1作目と同じ年に公開。当時としてはCG技術が絶賛された作品。この作品や『ロジャー・ラビット』のように実写とアニメの合成が増えていた時代だが『トイ・ストーリー』は世界初のオールCGアニメであり記念すべき映画なのである。ちなみにウッディの顔はキャスパーの顔がちょっとだけモデルにされているらしい。



★『バックトゥザフューチャー3』(1990)


 ……『トイ・ストーリー』を観ていると本格西部劇よりもこういったコメディ要素の強い西部劇が観たくなりますな。メル・ギブソン主演の『マーヴェリック』や、古典『腰抜け二丁拳銃』なんかもいいかも。

ちなみにウッディの名前の由来はジョン・フォードや、セルジオレオーネなどの西部劇に出演していた黒人俳優のウッディ・ストロードが由来らしい。下は映画『バファロー大隊』のウディ・ストロード。


★『ビッグ』(1988)


 ……言わずと知れたウッディの声優役トム・ハンクスの出世作。子供の心のまま体だけ大人になってしまった少年を描くコメディ。主人公が“おもちゃ屋”にスカウトされるというストーリーからも妙に本作との因果関係がありますな。トム・ハンクスは『トイ・ストーリー』以前から、幼い頃、人がいなくなると玩具が動き出すと本気で信じていたらしいですからね(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「note」の方でもこちらのエッセイを連載しております。画像付きでさらに読みやすく、こんなことからあんなことまでさらに詳しく、あなたの映画ライフをより豊かに♪note版『あの映画は本当に面白かったのか?【完全版】』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ