映画『サンダーボルツ*(Thunderbolts*)』(2025)は面白かったのか?
皆さま、よき映画ライフをお過ごしでしょうか?
N市の野良猫、ペイザンヌです。
「“いま”解決してしまうのか? それとも一生引きずっていくのか?……」
この言葉は劇中からの台詞ですが、“心の闇”をテーマとした今作は常日頃から自分の頭の中にあるものとカチッとハマり、仮に単体の作品として観てもかなり面白かったですね!
なんなら個人的にはフェーズ4以降『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3(2023)』に次いで好きな作品かもしれません。
今回のヴィランは誰もが日常にフト襲われる「Void(虚無)」と言っていいほどで、その内側の空虚さをフローレンス・ピューがとてもよく出しておりました。
結局のところ誰もが皆、孤独で──けれど皆が孤独だからこそ“not Alone”なんだよという「ザ・禅問答ループ」の隙間に、少しだけ光が差すというのか……
実はボクが気に入ったのはそういった綺麗事だけでなく、フローレンス・ピュー演ずるエレーナが劇中で言った「とにかく(今だけは協力して)さっさと脱出しようぜ、その後はおまえが誰に殺されようと知ったこっちゃねぇ」──
そんなシニカルな部分もw
でも人間なんて現実でも人生の中において瞬間的な付き合い多いし、そんなもんなのかもな──なんて。
もちろん、これは決してネガティブな発言というわけでなくて、言い方を変えれば「いつ離れ離れになるかもわからないから、こうして一緒に何かやってるうちは(仕事でも、恋愛、友人関係でも)いがみ合ってないで協力し合おうぜ」──という意味も含めてです。
ボクは「情けは人の為ならず」という言葉が好きで(情けをかけることは人のためにならない! という意味ではないですよ。情けをかけることは人のためにするんじゃなく巡り巡って自分のためだよ──という意味です。結構間違って捉えてる人が多いということわざなので、念の為)、考えれば考えるほど深い言葉だなと思っております。
それに、その精神の方が人間として正直なんですよね。「おまえのためを思って言ってるんたからな」──そんな言葉ほど嘘くさいものはありませんからねw
自分のためでいいんすよ。自分のために人に優しくする。コレ正解。
おっと閑話休題。映画では、自分自身かな〜りダウンしてるのにボブ(セントリー)を励まそうとするエレーナ、あれもまた結局は“自分を励ますための言葉”でもあるわけで、また、だからこそ紛れもない本心であり、人の心も動かすのでしょう。
現実でも人と喋ったり、励ましたり、または愚痴をこぼしたりしてても「あ、ボクってこんなこと思ってたんだな……」なんて初めて気付くことがありますからね。
こういったことは案外バカにできず、ボクはけっこうこれで新しい「気づき」があったことが何度もあります。無意識からの助言というのか、以前「『雪子a.k.a』は面白かったのか?」の感想の時に書いた“現実での会話も結局ラップバトルみたいなもの”──というのにかなりリンクしております。
というより、それこそがコミュニケーションというものの意義だとボクは常々思っている方です。
人を助ける、励ますってことは結局自分自身のためでもある──そういった意味のWinWinってことです。
今回、『サンダーボルツ*』や前作の『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド(2024)』など、ここフェーズ5の終盤にきて主人公たちの悩みが、より身近なものになってきてる気がします。
大富豪でも、はたまた超天才でもスーパーヒーローでもない、身近な者の悩みに……
ちなみに、詳しい方には釈迦に説法てすが、今作がMCUにおけるフェーズ5の最後の作品となり、7月公開の『ファンタスティック4(2025)』からはいよいよフェーズ6に突入します。そのみ『アベンジャーズ/ドゥームズ・デイ(2026公開予定)』へと繋がり、いわゆる「マルチバース・サーガ」の最終章となりますね。
タイトルの『サンダーボルツ』に隠された、ミスした人を守ってやれるような人──
これこそが今回の“ヒーローの定義”だったかもしれませんね。
タイトルといえば……公式より「とある発表」もあり、“公式がネタバレ”論争が広がりましたが、ボクは「へぇ〜面白いな」と思いましたね。
まあ、今現在はもう公になってますし、隠すことでもなくなったと思うので書きますが、タイトルが上映中に『サンダーボルツ*』から『ニュー・アベンジャーズ』に変わったということです。『サンダーボルツ』の最後に「*(アスタリスク)」がついてたのは“仮のタイトルだった”ということですね。
時が経ってタイトルが変更されるということはままあることですが、この「上映中にタイトルが変わる」ということら映画史上でも初めての出来事じゃないですかね。
さて、他の方々の感想などもXでかなり目を通しましたが、なかなかの好発進、満足度高めなのが伝わってきました。当然「否」の意見もあるわけですが、そちらは「とある登場人物をないがしろにしている」といったものや、バトルシーン、VFXの技術的なこと──これがかなり占めていたように思えます。
もちろんその辺りの満足度も映画には大切だと思いますが、個人的に、ボクはそこまで重視していない方なんですよね。
このエッセイでは何度も言ってますが、ボクはストーリー重視で、他はまあ付加価値くらいに思っているくらいです。その辺りの価値観の違いかと思われます。
一部のファンの中では「とあるキャラをないがしろにしてる」ことで炎上したりもしてましたが、これもシリーズ全体を「通して」考えるならそうかもですが、この作品「単体」においてはとことんフローレンス・ピューを中心に寄せたストーリーとして輪郭がくっきりした気すらしました。(もちろん、その「とあるキャラ」をわざわざ出す必要性があったのかは疑問なんですが)
そんなことを書くとコアなMCUファンから怒られちゃいそうですが、まあアメリカのドラマシリーズなんてシーズンが変わると前回主役級の人が突然いなくなったり主役交代することなんて、日常茶飯事でしたからね。もう慣れた……という方が近いかもしれません。
そう、そう意味においては「単体でも楽しめる」作品ではなかったか……とボクは思ってます。
いやいやキャラがわからないとやっぱ「コイツ誰?」みたいになるよ!──と言われるかもですが、アベンジャーズとは全く関係ない映画だとイメージしながら観てもですよ、「あ〜この人は幼い頃特殊訓練を受けた殺し屋みたいなことしてんだな…」とか「この人はその頃一緒にいた旧友なのかもな」とか「この人は彼女を養子として育ててたんだな」、はたまた「この人はヒーローになり損ねた人なのかな」などなどが台詞の節々で感じ取れれば、全く単体としても楽しめるわけで。
たとえばシリーズ作品ではない『アーガイル(2024)』や『ブレット・トレイン(2022)』などを観てたとしても、登場人物の過去や、突然出てきた人と主人公の関係性とか──それくらいは頭の中で常に予想しながら、推測しながら観てるわけですからね。
それ以上に深く楽しみたい方はシリーズを全制覇すればいいだけの話。『マーベルズ(2023)』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)』などを観た時の方が、より「えらい不親切だな」と思いましたので。
ぽっと知らずに入ってしまったお婆ちゃんでもそれなりに楽しめる──それくらいの作りにはしてやってくれよと前々から思ってましたので、今回はその辺もぜんぜん、及第点だった気がします。
逆に言えばホントになんっにも知らない人が観たとしてですよ? 一番「この人ダレ?」なのはバッキーかもしれんな……と少し思ってるくらいですw
今回初登場で『アベンジャーズ/ドゥームズ・デイ(2026予定)』でもキーマンとなりそうなボブ(セントリー)。こちらを演じていたのは『トップガン/マーヴェリック(2022)』でロバート・“ボブ”・フロイド海軍大尉を演じていた(こちらもボブですね)ルイス・ブルマン。
どうやら『トップガン3(公開日未定)』には出演の可能性は薄いとのことですが、こちらで忙しくなりそうですね。
最後に、予告でも使われてたイメージソング、スターシップの「愛は止まらない(Nothing's Gonna Stop Us Now)」──この曲をきちんと本編クレジットでも使ってくれてたことも好感度二割増しであります。
この曲は映画『マネキン(1987)』の主題歌にもなっており、80年代を代表する名曲でもありますね。一度はどこかで耳にしたことのある人も多いでしょう。ぜひ、映画を思い出しながらフルで視聴してみてはいかがでしょう。
では、また次回に!