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変装探偵 柳沢凛   作者: 神楽屋
崩されたシンメトリー
7/16

「うん、とりあえず、捜査の目安は理解出来たわ。一番怪しい人物は特定出来たし。」

「アリバイのない森川一郎か?」

「バカは一生踊ってなさい。」

「何故に!?」


相変わらずの二人のコントだが、今はそうやって、のほほんとしている訳にもいかない。一番怪しい人物。森川一郎でもないのであれば、僕の頭には一人しかいない。


「宗良君。あなたは、誰が怪しいと思う?」

「……彼女の河本かんなですかね?」

「何でそう思うの?」

「凛さんのドメスティックバイオレンスもありますけど、やはり、あの涙が謎で……」


すると、海崎さんが非常にイライラした様子で、言葉を吐き出した。


「はっ、それなら、あの橋本雄大って奴も、信じられないくらい怪しいじゃねえか。自分の身近な奴が死んで、あんな態度をとる奴がいるか!?」


確かに、それもそうなのだ。彼も、明らかに怪しい。だが、彼の怪しいは、何かわざとらしい怪しいなのだ。僕はやはり、河本かんなが変だと思う。


「それに、この二人は確実なアリバイがあるって言ってんだから、二人が犯人はねえよ。」

「私は別に犯人なんて言ってないわ。怪しい人っていったのよ。」

「どう違うんだ?」

「……自分で考えなさい。ボンクラ。」

「うっ!?」


……犯人ではないことは間違いない。だが、何かを知っているような様子ぶりだった。そこが、鍵となるのではないか。


「ねぇ、明日は、私は単独行動でいきたいから、二人とも、各自で捜査しといて。」

「俺はいいけどは、こいつはどうするんだ?」


海崎さんはそう言って僕を指差した。確かに、何らかの理由で凛さんはOKらしいが、僕は何も出来ないのである。何せ、一般人で、ただの助手なのだ。ワトソン君なのだから、ホームズ先生がいない限り、無力である。


「そうね、あなたがいればいいじゃないの。」

「嫌だね。凛なら万々歳だが、こんな野郎はゴメンだ。」

「あっそ、なら、優花ちゃんにでも頼むわよ。宗良君、誰のことか、分かるわよね?」

「あ、はい。海崎さんと話していた刑事さんですよね?」

「そう。明日、私の事務所に来させるから、そのまま着いていきなさい。」


ん? ちょっと待てよ。その言い様だと、まるで、僕が今日から凛さんのところへ泊まるような雰囲気なんだけど……。


「ちょっと待てよ!! 凛!! お前、本気で一緒に住む気なのか!?」

「えぇ、文句ある?」

「大有りだ!! 出会って一日の男と同居なんてあり得ないだろ!?」

「あなたには関係のないことだけど。それに、そういう契約だし。」

「そんなのは関係ねえよ!! それなら、世話なら俺がやってやるから、俺と住め!!」

「何それ、きも」

「き、きもって何だよ!!」

「そのままの意味よ。」


にべもない……。海崎さんは全力の告白をしていたような気がするが、凛さんは全く動じていなかった。それどころか、今までのスタンスを崩さずに毒舌とは……。


というか、凛さんのは照れ隠しなのかなって思ってたけど、これガチだわ、本当に。本気で海崎さんのことを嫌っている。まぁ、確かに、事件を持ってくる人を好意的に見るなんてことはないと思うけど。


「いや、あの、凛さん。今日から住むというのは、ちょっと無理がありますよ。」

「え、何で!?」

「何でそんなにリアクション大きいんですか……。まぁ、今日は捜査で時間潰してしまいましたからね。僕の日用品がもっぱら向こうにあるのですけど。」

「そんなにものあるの? 貧乏なんじゃなかった?」

「……。」


一発で論破された。てか、どうして、それを知っている? 僕はそんなことを言った記憶はないのだけれど……。


「就職決定であんなに喜んで、家賃ゼロに食いついたら、それしかないでしょ。」

「あ、あはは、そうでしたね……。」


そういえば、そんな反応してたね、僕。となると、僕はそうせざるをえない訳だ。そして、海崎さんの目が人を殺しそうな目に変わっている。まぁ、そうだよなぁ。


「でもまぁ、よくよく考えてみれば、今日はじっくり考えたいから、不都合ね。これが解決し終わったら、お願いするわ。」

「あ、分かりました。」


とりあえず、延期することは出来た。まぁ、この間に、じっくり覚悟なりなんなりを決め付けとけばいい。そして、事件を解決する前に、海崎さんに殺されないようにしないと。



―――――――――――――――――――――――――


翌日、指定通りに柳沢探偵事務所に向かうと、昨日の刑事さんが手を振っていた。


「あなたが助手さんの立花宗良さんですよね?」

「はい。えっと、あなたは……。」

「あぁ、私は、藤原優花です。まぁ、昨日いたから分かってるとは思いますけど、刑事です。」

「はい、それは十分承知しています。」


彼女は海崎さんとは違い、随分と丁寧だった。海崎さんは、昨日一日しか見てないけれど、どちらかといえば、破天荒だよな。仕事には真面目だけど、私生活は破天荒、みたいな。


「あ、そういえば、海崎さんは?」

「非常に申し訳ありませんが、何か非常事態があったらしくて。ただ、まちんだかキノコだか聞こえたんですけど……。」

「あ、ははっ、それは大変ですね……」


多分、それ、毒だな。マチンと毒キノコ。ストリキニーネとドクササコみたいな。どうやら、着実に僕を殺そうとしているらしい。何してんの、本当に。


「あの人、普段はそんなことをしないはずなんですけど……。」

「はい、事情はもう知ってますから。」

「?」


あの人達がいつ以来の仲なのかは知らないが、多分、ずっと思ってた、というか、言い続けてきたんだろうなぁ。事件も多分、会う口実みたい理由が少し入っていたのだろう。凛さんが海崎さんをボンクラって言う理由が本当に分かったわ。あの人、何で刑事出来ているのだろうか。


「で、今日、私はあなたに着いていく予定なんですけど……どこに行きます?」

「それだけ聞いてると、何かデートみたいですね。」

「そんなジョークはいいですから。」


少しジョークを言ってみたものの、あっさりと返されてしまった。ま、真面目に行かないとダメか。でも、とりあえず、行く場所は決まっている。


「もう一度、現場に行きましょう。確認したいことがあります。」

「……分かりました。」


僕らは、パトカーに乗ると、事件現場へと向かっていった。

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