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津軽雪月花  作者: Y-F
8/8

雪奈と春香

――あたしは弘前駅を出発して、大鰐町へ向かった。


目指す先は、大鰐町にあるスキー場。大鰐町は弘前市の隣にあるんだ。


大鰐駅に着いて、そこで春香ちゃんと合流したの。そこからはタクシーで約5分。1時間もせずに、目的地に到着したよ。


あたしは自分のスキーとか持ってないから、レンタルしようと思ってるのだけど……。


[春香]

「お金、大丈夫? レンタルって結構高いよ?」


[雪奈]

「お年玉があるから、大丈夫だよ♪」


[春香]

「そっか」


[雪奈]

「それに今日は、あたしの誕生日なんだぁ! だから、誕生日プレゼントの代わりに、お小遣いもらっちゃったよ♪」


[春香]

「そうなんだ。おめでとう。雪奈ちゃん」


優しく微笑んで、祝福してくれた!


[雪奈]

「うん! ありがとう♪」


そう。あたしは1月生まれなのです。そして何と今日は誕生日! 今日から晴れて14歳なのだ♪


またひとつ、大人に一歩近づいたよ。早く大人になりたいんだぁ。


[春香]

「絆君も来れれば、良かったのにね。せっかく雪奈ちゃんの誕生日なのに」


[雪奈]

「ハン兄は家で受験勉強中だよ。頑張って誘ってみたんだけどね。お母さんに止められちゃったから……」


[春香]

「そっか。残念だなぁ~シクシク」


[雪奈]

「あはは……」


春香ちゃん……それって、残念だと思ってないよね……。



――レンタルと着替えを済ませ、リフト券を購入。


うっ、確かに料金、高いかも。中学生には辛いよ。


だけどリフト券は、春香ちゃんが、あたしの分まで払ってくれたんだ。誕生日のお祝いってことでね。


春香ちゃんって、ホントに優しいなぁ。ハン兄にはもったいない位だよ♪


一通りの準備を整えて、ゲレンデへレッツゴー!


……したのは良いのだけど、スキー板を履くなり、いきなり転倒しちゃって。


その後も教えてもらうんだけど、なかなか上手くできないし。ちょっと疲れてきちゃった。


だけど春香ちゃんは、そんなあたしにも、ずっと付き合ってくれてる。


だから弱音なんか、絶対に吐かない。頑張れ、あたし!


そんなこんなで、あたしはボーゲンの形で、なんとか滑れるように。


それであっという間に午前は終了。お昼を食堂で食べてから、いよいよリフトに乗ります。


[雪奈]

「お腹空いたよ~。ご飯ご飯♪」


[春香]

「ふふっ、何食べよっか?」


[雪奈]

「たこ焼き!……は、ないか~。さすがに」


[春香]

「雪奈ちゃんて、たこ焼きが好きなの?」


[雪奈]

「うん。好きだよ! お祭りの露店で買うなら、絶対に、たこ焼きだね!」


[春香]

「そっかぁ」


[雪奈]

「春香ちゃんの好きな食べ物って何?」


[春香]

「わたしはね」


春香ちゃんは、ちょっと考えて。


[春香]

「……ないよ。そんなの」


[雪奈]

「えっ?」


[春香]

「わたしは捨て子だったから。食べる物なんて何も無かったの……」


[雪奈]

「……」


[春香]

「何でも食べるしかなかったの。かわいそうな女の子なのぉ~シクシク」


[雪奈]

「さて、食券買わなくっちゃ♪」


[春香]

「……」


[雪奈]

「ラーメンでいいかな?」


[春香]

「雪奈ちゃん、ひどいよぉ~シクシク」


[雪奈]

「え、何か言った?」


[春香]

「……雪奈ちゃんって、ちょっと冷たい……」


いやぁ、スルーしてあげるのも、愛だと思うんだよね♪


そうして、あたしと春香ちゃんは、お昼を食べながら、色々な話をしたの。


[雪奈]

「そういえばさ、春香ちゃんの名前って、良いよね♪」


[春香]

「えっ?」


[雪奈]

「春の香りって、暖かいイメージでさ」


[春香]

「……」


[雪奈]

「それで名前負けしてないっていうか。そのままな感じだしっ!」


[春香]

「わたしは、雪奈ちゃんの名前も良いと思うよ」


[雪奈]

「え~、そうかな~? "雪"って冷たいイメージだから、あたしに合わない気がするんだけどなっ!」


[春香]

「……ピッタリじゃない」


[雪奈]

「えっ?」


[春香]

「ううん、なんでもないの! あはは……!」


[雪奈]

「……?」


[春香]

「わたしは、雪って、暖かいものだと思うよ」


[雪奈]

「ほえ?」


[春香]

「ほら、ひらひら舞う雪なんかは、人を暖かい気持ちに、してくれるじゃない」


[雪奈]

「うーん。なるほどぉ?」


[春香]

「それにね、雪が降らないと、春はやって来ないから……」


その瞬間、春香ちゃんは、悲しそうな表情を浮かべたような。


[雪奈]

「……?」


[春香]

「だからね、わたしは雪が好きだよ」


[雪奈]

「あ、うん。そっかぁ♪」


あたしの名前が褒められたようで、嬉しかったよ。


……それからも色々な話をして、お昼の時間は終わりました。


午後はリフトに乗って、上から少しずつ滑り降りたんだけど。


何度も転びそうになってね~。もう大変でした!


春香ちゃんは、鮮やかな滑りで、颯爽と降りちゃうし。


あたし、気付いたんだけどね。春香ちゃんって、物腰は柔らかくて、おしとやか。それなのに運動も得意みたい。スタイルは均整がとれてるし。将来は美人確定でしょ!


……ま、あたしには敵わないだろうけどねっ♪


って、気が付いたらもう、春香ちゃんの姿が全く見えない!? あたしを置いて、先に降りないでよ~!


―――

――

-


あっという間に時間は過ぎて、帰る時間に。


ここから先は、大鰐駅から弘前駅まで、電車の中で交わした会話です。


[雪奈]

「そういえば、春香ちゃんも3年だよね。受験勉強は大丈夫なの? 今更だけど」


[春香]

「う~ん。1日だけなら大丈夫だよぉ」


[雪奈]

「そっか。そうだよね。今の時期に必死に勉強するハン兄が、だらしないだけだよねぇ~」


[春香]

「雪奈ちゃん、やっぱり絆君にも来てほしかったんだね」


[雪奈]

「え、う~ん。どうかな~?……エヘヘ」


その問いの答えは、ちょっと複雑なの。だって、どうしても2人で話したいことがあるから。


[春香]

「わたしも、絆君に来てほしかったのにぃ~シクシク」


[雪奈]

「……」


[春香]

「……雪奈ちゃん、何か言ってよぉ~」


春香ちゃんの演技っぽいウソ泣きは、ともかく。あたしは春香ちゃんに、聞いておきたいことが、あるんだ。


[雪奈]

「ねぇ、春香ちゃん」


[春香]

「はい?」


[雪奈]

「春香ちゃんは、ハン兄のこと、どう想っているの?」


[春香]

「えっ!? えっとぉ~」


[雪奈]

「……」


[春香]

「あ、えっと。もちろん、良い友達だと思ってるよ。でも時々、泣かされちゃうんだぁ~シクシク」


[雪奈]

「お願い。真面目に答えて」


[春香]

「! 雪奈ちゃん……」


あたしは、じっと春香ちゃんの目を見つめている。春香ちゃんは困った顔をしてるけど、しばらく迷うように目を泳がせて……。


[春香]

「好きだよ」


[雪奈]

「あ……」


少し恥ずかしそうに、頬を綺麗な桜色に染めて、微笑みながら、そう答えてくれたんだ。


きっと本音であろう、その答えは、あたしの望んでいたものでした。あたしは思わず、春香ちゃんの手を握り締めちゃって。


[雪奈]

「良かった! ハン兄も、春香ちゃんの事が大好きなんだ! あたし、全力で応援するよ!……ね♪」


[春香]

「う、うん」


春香ちゃんは、キョトンとした表情をしているけれど。あたしはお構いなし。


だって、あたしはハン兄も春香ちゃんも、大好きなんだから。これはもう、ふたりを応援するしかないっしょ!


[雪奈]

「あ、もう弘前に着いちゃった。それじゃあ、今日は楽しかったよ! またね、春香ちゃん♪」


[春香]

「うん。またね。雪奈ちゃん」


春香ちゃんと別れて、駅から帰りの道へ。その道中、あたしはルンルン気分で、スキップをしながら帰りました。


空を見上げると、夕焼け空に、雪が浮かび、ひらひらと舞い降りて。あたしの頬に当たる。


頬は冷たかったのだれど、気持ちは暖かくなったんだ。その時に、春香ちゃんの気持ちが、分かった気がしたよ。


そして家へと到着。


母に帰宅を告げて、手荷物を、自分の部屋に置くため2階へ。


すると、そこに居たのは、机に座って勉強中のハン兄。


[雪奈]

「ハン兄、ただいま♪」


[絆]

「あぁ、おかえり」


[雪奈]

「ずっと、勉強してたの~?」


[絆]

「そんなわけねーだろ? 休憩しながらだよ」


[雪奈]

「ふ~ん。春香ちゃん、可愛くて、カッコ良かったよぉ♪」


[絆]

「あっそ」


ハン兄のそっけない態度に、ちょっとカチンときた。


[雪奈]

「春香ちゃんも、ハン兄に会いたがってたよ!? すごく残念がってたし!」


[絆]

「うるさいっ」


[雪奈]

「……っ!」


うるさいって、何よぉ! 他に何か言うことないの!?……って言いかけて。よく見ると、ハン兄は、ぶすーっとした表情。


あ、これって、もしかして。


[雪奈]

「もしかして、ハン兄、拗ねてる?」


[絆]

「! 拗ねてねーよ!」


あ、間違いない♪


[雪奈]

「拗ねるな、拗ねるな。受験が終わったら、春香ちゃんには、また会えるよ!……ニシシ♪」


あたしは、ハン兄の頭を、ナデナデしてあげた!


[絆]

「う、うるせぇよ。ほっとけ」


すると、ハン兄は少し涙ぐんでるような……? ホント分かりやすくて、面白いよね♪


[雪奈]

「それじゃあ、勉強、頑張ってね~」


そう言って、あたしは自分の部屋に入ろうとした。


その時。


[雪奈]

「……っ!?」


急に目の前が暗くなって……それは一瞬だったけれど。さっきまでと比べて、体調も優れないような。


[絆]

「雪奈?」


そんなあたしの様子を見て、ハン兄が声を掛けてくる。ううん、別に何でもないし。心配させちゃいけないよ。


[雪奈]

「うん。ちょっと、スキーで疲れちゃったみたい」


すぐに体調も戻ったし、ただの疲れだろうと、この時は思ったんだ。


けれど、これから定期的に、この目眩は襲ってくるようになる。


[絆]

「そっか。そりゃそうだろ。早く寝るこったな」


[雪奈]

「そうだねぇ。そうしよっかな。お風呂入って、ご飯食べて、寝るぞ~♪」


その日、お父さんが誕生日プレゼントに、ケーキを買ってきてくれました!


今日は本当に、幸せな1日だったよ……。


――


冬の津軽。降り積もる雪。


それは時に厳しく、時に冷たく、時に優しく、時に暖かい――




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