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云上泰のファンタジックホラーシリーズ

競作 SLENDER(体験版)

作者: 眞三

 夜中に盛り上がった勢いでの短編です。一応、ホラー……かな? 

 目を覚ますと、顔になにかジャリジャリとした感触を覚えた。不快になって起き上ると、そこが浜辺だったのだと気づき、違和感を覚える。服は海水でぐっしょりと濡れ、体中がべと付いている

「な、なぜ?」俺はなぜこんな場所に? 真夜中の砂浜でいったい何を? 酔ったか?

顔や体に付着した砂を払い落としながら、頭の中の記憶を探る。が……。

 何も覚えていない……それどころか、自分の名前、職業、昨日の夕飯、いや思いですら何も出てこないのだ。「う、うそだろ?」パソコンのデータどころではない。記憶が消えた……これが記憶喪失なのか? ショックで気が動転しそうになる。

 深呼吸をして落ち着こうと、鼻と口をいっぱいに広げる。が、鼻の奥で生ぬるいものが引っかかり、むせっ返ってしまう。しばらく咳き込み、砂浜にベッと吐き出す。

 黒い……黒い塊が鼻から出た……。

 鼻を擦り、手をよく見ると、それが血だったとわかり、更に仰天する。「いったい、なんなんだよ!!!」背後の海に向かって叫び、足元を蹴飛ばす。


 まず、ここがどこなのかを探る為、しばらく砂浜を歩いた。歩き続ければここがどこなのか手がかりが見つかるはずだった。腕時計は午前12時。砂浜の向こう側は森が生い茂っており、この暗闇では危なそうなので入るのはやめておく。

 自分が何者なのかを必死で悩みながら歩き続ける。手がかりを得る為にポケットの中身を探った、出てきたのは……。

「か、乾燥ワカメ? なんだよ、これは……」と、もうひとつ出てきたものを見る。

 それは写真だった。そこには男と女が仲良さそうに並んでいた。場所は、どこかのコテージの外の様だった。木々が立ち並び、中央に小さなコテージ、その前で微笑む女性、逞しそうな男性。2人には笑顔……きっと男性は俺だろうか? 鏡が欲しいところだ。

「ん?」ふと、コテージの脇の方を見る。そこには、異様な者、物? がヌゥっと立っていた。人? マネキン? そんな不気味な物体が立っていたのだ。背広の様に黒い服をまとい、大きさからいって、3メートルだろうか? コテージの2階まで届いている。

「だれかがふざけて置いたマネキンか? ぐぅ……!」

 いきなり頭痛に襲われ、鼻から血が出る。この痛みは酷かった。まるで頭の中にドリアンか毬栗でも入ってるかの様な出鱈目な痛みだった。


 しばらくその場で転がり、痛みを喚き散らした。目からも生ぬるいモノを覚える。きっと記憶喪失の原因はこれだろう……。

 痛みが治まり、落ち着きを取り戻して前を見ると、森の手前にワンピースを着た少女が立っていた。「お、おい……お嬢ちゃん、ここはどこだい?」ヨロヨロと立ち上がり、少女に近づく。

 相手はしばらく俺を不思議そうな目で見つめてきていた。好奇心の瞳だった。だが、あと少しのところで、少女は怯えた表情を作り、悲鳴を上げ森の中へ逃げてしまった。

「おい、待ってくれ!」鼻血を擦り、おぼつかない足取りで追いかける。だが、少女は素早く、木々の間を縫って消えていった。「くそ!」

 必死になった走ったおかげで前も後ろもわからぬ真っ暗な森に迷い込んでしまった。「しまった……記憶喪失な上に遭難か?」時計を見る。午前2時を指していた。

 

 しばらく森の中を気のみ気のまま歩いた。木には少女の目印なのか、紙が貼られていた。英語で「HELP」や「Live me alone」など、まるで木炭で書かれたように真っ黒な字で書かれていた。

 その書かれた絵を見るたびに、針で刺すような頭痛が響く。「くそ……」歩き続け、俺は少女、もしくはここがどこなのか知っている者を探し続けた。

 また紙が貼られていた。そこには、俺の持っていた写真に写っていたマネキンの絵が描かれていた。あの不気味な……絵も不気味だった。

「おぉい! これを、これを知ってるのか! 何もしないから出てきてくれぇ!!」俺は必死になって問いかけた。

 それを合図に、辺りの葉っぱがユラユラと揺れ始める。茂みを掻き分け、中から先ほどの少女が出てきた。

「あぁ……よかった……」

「……」少女は先ほどの怯えた目で私をギョロリと眺めていた。片手にはどこから拾ってきたか、金属バットの様なものが握られていた。それを両手で持ち、まるで威嚇するかの様に俺に向ける。

「はは、俺は君に危害は加えないよ……ここがどこだか教えてくれ」

「違う……」少女が口を開く。「怖いのはおじちゃんじゃない……後ろの人」

「後ろ?」俺は反射的に振り向いた……。

 そこには、写真に写っていたマネキンがヌゥっと立っていた。黒い背広をきた3メートルほどある細長い巨人……その顔は、真夜中でもわかるほど不気味に白く、目、鼻、口、髪の毛などが無かった。だが、わかる事がひとつ。そいつは明らかに俺を見ていた。

「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」俺は絶叫し、駆けた。ひたすら逃げた。相手が見えなくなるまで……だが、相手は俺の横、正面にいきなり現れては俺を見つめた。その度、頭痛が酷くなり、鼻や口から血がこぼれ出た。


 目の前が血で見えなくなり、逃げる体力、気力が尽き果てると、俺はその場で膝を付いた。相変わらずの森の中。目の前にはあの長身ののっぺらぼう。

「お、まえは……いったい……」すると、俺の正面に少女が現れた。

「おじちゃんが悪いんだよ? こいつを連れてきたの、おじちゃんなんだから」なにか、正論でも云うかのように偉そうだった。「私は大丈夫だって。写真を見た人しか連れて行かないんだって」

「な……なんなんだよ……」うつ伏せに倒れる俺……まるで目の前の巨人に体力を吸われたかのように、もう身じろぐ事すらできなかった。

「お姉さんが向こうで待ってるってよ。じゃあね……」

「こ、ここはどこなんだ……」

「ここ? ここは……」

 全てがここで途切れる。


                          終わり

 

 え~ぐだぐだでした……夜中にちょっと盛り上がったので、そのノリや勢いで書いたホラーです。

 因みに、こののっぺらぼうの巨人の正体は「スレンダーマン」です。アメリカの都市伝説で出てくる妖怪で、こいつを見ると鼻血が出たり、記憶喪失になるスレンダー病が発症します。写真で見てもこの症状になるとかならないとか……これに私なりの味付けをしました。写真でこいつをみると、おいかけてくるっていう……。

 少女を出したのは、ほら……大抵のホラーって妖怪よりこういう子供の方が怖いじゃん? ってノリ。プラス、ルール。

 ってなわけで……こんなお話を読んで頂き誠に感謝です~ありがとうございます~!!

 

 あ、因みに題名の(体験版)の意味は、この物語がパイロット版兼練習だからです。本番は、いつか書こうと思っています~!

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに不条理の怖さ。一人称で描写される主人公の心理、洋画ホラー(個人的には昔観た「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出しました)に通じるリアルな恐怖描写。 劇中での小道具やガジェットの…
[良い点]  作りこまれた設定、都市伝説との融合、そしてそれをこの短時間で形にする執筆力……お見事です! 体験版ということでしたので、本編が楽しみです。 [一言]  我々の中で最もホラー要素の強い作品…
[良い点] 物語の設定がお見事です! これは参りました。 少女のポジションが見事ですね。 [気になる点] 気のみ気のまま? 着のみ着のままでは??? [一言] あれだけの時間で、しかもこれだけの内…
2013/05/11 09:12 退会済み
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