Smell of her blood
キャアァァ!
私は今叫んでます。大きな声で。
彼は耳を守るように肩をすくめていた。
「ちょっと静かにしてくれないか?着陸に失敗したら足が...」
そんなの無理です。
だって怖いもん。
彼は私をおんぶしたままジャンプするように崖を降りている。
空中からいきなり落とされたような、お腹のむずむず感を感じる。
周りを見るともう真っ暗だった。
風が強く顔に当たり重力で体が浮きそうになった。
私は細腕で彼の首周りをしっかり掴まえてひたすらに耐えた。
落ちていたとき、顔に何か液体が付いた。
およそ三秒くらい後、スタッと彼は地面に降り立った。
その時の衝撃は少なく、優しく彼は私をおろした。
「気持ちよかっただろ?」
ニコニコとまるで自分の作った作品を人に見せて評価をもらいたい子供のような眼差しで私に問いかける。
正直、ネガティブなことを言いたい気持ちだった。
でも、彼の満足げな表情を見たらそんな言葉は喉の奥に詰め込まれてしまった。
「ハハハッ...うん。まぁ...」
明らかに失笑だった。
が、彼は気にせず私の手を引いて歩き始めた。
私も歩こうと足を一歩踏み出した。
その瞬間。私の膝は膝カックンをされたように力をなくし、地面についた。
「どっどうかした?」
心配そうに眉毛を寄せ、首をかしげる君。
原因はさっき落ちかけた崖の置き土産だった。
私の足は鋭い岩によって切り傷だらけだった。
さっき落ちていたときに顔に付着したのはこの血だったらしい。
血がゆっくりと滴り落ちる。
ヤメロ。ダメダ。イマハ...イケナイ。
美味しそうな臭いが鼻孔をくすぐる。
なんていい臭いなんだろう。そこらの小動物とはやはり違う。
普段から色んな良いものを食べているからか。
ハァ...ハァ...
大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせるが、どうやら眼はまだ鋭く見開いているらしく、
「なんか擦りむいちゃったみた...い...ルーパス?」
彼女はやや不気味なものを見るような目で言った。
「ごっごめん。えっと...歩けない?」
「うん...ちょっと痛いかな...」
アハハハと苦笑いしながら足の傷をさする。
その姿をちらりと横見しながらおいらは提案する。
「じゃあさ。おいらがおんぶしていくよ。」
パアアと顔が明るくなる彼女は実にかわいらしかっ...
コホン
おいらは地面に屈むと彼女を再度背中にのせて暗い森を歩くのだった。
To be continued...