Her hand
あーあ...だから気を付けろって言ったのに。
ちゃんと話聞いて。
てか、どうしよう。
赤い頭巾を被った彼女は現在のおいらの目の前で崖から落ちております。
現在形だよ。今落ちてるから。
この時おいらが何を考えたのか、自分でも覚えてない。
頭が回転する前に体が勝手に動いた、という表現の方が正しい。
だって頭ん中真っ白だったし。多分...。
何でなんだろう。
おいらは今、この出来事にすごく感謝してる。
だってこの気持ちの正体を知ることができたから。
ってなわけでカッコつけた序盤だけど結局はおいらが彼女を助けました。
えっ?どうやってかって?そりゃあ手を伸ばして掴みました。
彼女の手をとったとき全身にざぁぁと鳥肌がたった。
安堵という二文字が心と体を満たした。
それとともに感じるのは、彼女の手の温かさだった。
彼女の軽い体を引き上げて顔を覗き込む。
気を失っているらしく眠ったようにグタンとしている。
起きるまで待ったら真っ暗になってしまう。
只でさえ登るのに時間がかかり、太陽が沈みかけているのに。
迷ってる暇はない。
おいらは彼女をおんぶすると残りを登り始めた。
はぁ...はぁ...はぁ...
やっぱりキツかった。
人を一人抱えて岩の山を登るのは予想以上にキツイ。
寝ている彼女が落ちないように、さらに自分が落ちないように。
ああ、おいらって凄い。
いっこうに起きる気配がない彼女を何度喰べてしまおうと思ったことか。
でも絶対しない。
だっておいらは完璧主義者。有言実行するんだもん。
頂上は少し肌寒く、風が強く吹いていた。
一番星と共に無数の星が森を照らす。
深く息を吸い込むと清々しい気持ちになった。
さて、降りるのは簡単だ。
んー。私...どうなったの?
体の感覚がない。目もうっすらとしか開かない。
いや、開いてるの?これ。
だって真っ暗だよ?もしかしてあの世来ちゃった?
やっと体にいつもの調子が戻ってきたけど、同時にあの嫌な感覚が襲ってきた。
フワッと感です。
気持ち悪いよー。なんで?
そして体の前側が温かい。まるで...
誰かの背中に乗っているみたい...
To be continued...
短い。