An imperfect wolf
狼が樹の陰から様子をうかがう。
だらりと垂れる唾を飲み込み、じゅるりと舌なめずりをした。
久々のご馳走だ。どう狩るか。
色々な狩り方が脳に入ってくる。
やっぱり、今出て行って喰うか?いや、よそう。
こんなとこで喰ってたら近くの家の猟師に見られてしまう。
そしたら...まぁ、殺されるな。
人間たちの決めたルールで、人を襲った獣は見つけ次第殺す。
なんだよ、それ。
獣側から言わせてみるとそれは正当防衛であって殺される義理はねぇんだ。
猟師なんかがおいら達を殺しに来るからこっちも襲うんだ。
人間なんて......ろくでもねぇ生き物だ。
だが、おいらは人間と狼の中間。つまりハーフだ。最悪なことに。
おいらは完全な狼には、なれない。
おいらの母さんは立派な狼だったのに。
美しく、流れるような銀色の毛皮。
黄色く、澄んだ瞳。
この森の狼の中では気品溢れる、上品なお嬢様だったらしい。
どの狼もが母さんに恋をした。
それを妬んだこの森の魔女が母さんを人間にしたんだ。
一瞬で。
人間がこの森にいると知った獣たちはその人間を追い立て、傷つけた。
父さん---茶色い毛皮で緑色の瞳の彼だけが
母さんの正体を知り、逃げる手助けをした。
それがおいらの両親のなれそめ話だ。
それで生まれたのがおいら。
母さんは狼だったとはいえ産んだときは既に人間。
人間の赤子に尻尾、牙、爪、耳が生えてしまっている姿だった。
それでも父さんと母さんはおいらを立派に育てようと決めたらしい。
十二歳の夏。
狩りに出かけた両親が帰ってくることはなかった。
きっと人間に狩られたんだ。そうに違いない。
と、勝手にそう思い込んだ。
大体人間はおいらが狼だからって殺そうとする。
七歳の時、一度村に行ったことがあったが結果は上の通りだ。
それを両親に言ったらこう言われた。
母さんと俺は人間と狼だが恋に落ちて、やがてお前が生まれた。
つまり、恋に獣も人間も関係ない。
お前が好きになった子が人間でも俺は構わねぇ。
だが好きになったやつは絶対に泣かせるな。
と。
まるでおいらが人間の女の子に恋したって話をしたみたいだ。
そんなこと、絶対にない。
というか母さんは元々狼だったんだから父さんも気を緩めたっておかしくない。
おいらは父さんにこう言いたかった。
人間は狼のおいらを殺そうとしたんだぞ!?
人間は敵だ。
その思いが十二歳になってハッキリした。
人間なんて下等生物だ。
だからおいらにとって人間=餌。
旨そうな奴は喰うまでって...
そうだ。おいらは今、奴を狩る計画を立てていたんだ。
どうする?
その間に奴はズンズン森に入ってきた。
「猟師さん、どこかなぁ。」
辺りをキョロキョロ見回してる。
まさか、おいらの存在に気づいたのか?
鈍感そうな奴だなって思ってたけど。意外に?
...よしっ。奴に優しくして襲う機会を伺おう。
なんたって裏切られた獲物の顔は格別だしな。
最高。
そうと決まれば狼の姿を人間に変えなくちゃいけない。
踏ん張れば全部隠れるが、ちょっと気を緩めるとひょっこり出てくるだろう。
頑張れ、おいら。
狼少年は耳ををくせ毛の間に隠し、爪と牙を引っ込め、尻尾を服の中に押し込んだ。
むずむずしてかゆい。
むぅ...我慢我慢。
さくさくと森を歩く赤ずきん。
森ってやっぱりどこか神秘的だなぁとこぼし、森を見回す。
すると右の方向に少し開けた空間があって、小道がそっちに続いていた。
小さい木造の小屋が見える。
あそこだね。と思い、小道に足を運ぼうとすると、
「ねぇねぇ。そこのお嬢さん。」
To be continued...
考えすぎの狼さんw