The master of fancy house
しばらく歩くと開けた場所に付いた。
その中央には小さな家が一軒。
この森に住んでいる人なんてほとんどいないはずなのに。
ファンシーな色合いで飾りもちょっと引きそうなくらいの猫まみれ。
「なんだろう。あの家。ちょっとファンシーだよね...」
赤ずきんは引き目であの家を見ている。
おいらも少しいづらそうだなと思う。
しかし赤ずきんの怪我の事もある。
「でもさ、ちょっとだけ。休ませてもらおうよ。」
そう提案すると赤ずきんは微妙な顔でokと言った。
そうして戸を叩いたのだが...
一向に返事はない。もう少し強く叩くが静寂だけが続く。
面倒になってきた。鍵が掛かってないなら開けるぞ。
おいらはドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。
なかは真っ暗でほとんど何も見えなかった。
慎重に部屋へ入る。ワンルームで中は意外と広かった。
「暗いね。蝋燭も付いてない。お留守かな?」
赤ずきんを椅子に座らせて部屋を物色する。
猫が好きなのか至るところに猫の飾りやインテリアが施されている。
あまりに暗いのでそぉっと進んでいたのだが。
肘がなにかに当たり、なにかが落ちた。
それもたくさん。音からすると本のような物だ。
すると同時に聞こえたのは赤ずきんの「どうしたの?」という声と
もぞもぞという音だった。
小さくにゃあと聞こえた気がする。
その瞬間、バサァという音と共にパァァと部屋が明るくなった。
今まで暗いところにいたから眩しくて目を瞑る。
聞いたことのない声がする。
「なんの騒ぎにゃ?」
やっとこさ目を開けて目の前の人物を見る。
猫目な瞳に大きい耳。ゆらんと揺れる尻尾。
くせ毛な髪の毛をかきあげてこちらを見る。
赤ずきんをチラ見すると彼女も言葉を失っているらしく唖然としている。
「誰にゃ?あんたたち。なんでウチの家にいるにゃ?」
無表情で質問を繰り返す猫人間はおいらの方を横見して目を見開いた。
「なんでおおか...」猫人間が言い出した。
おいらは何を言おうとしているのか、すぐに分かってしまった。
言葉を被せて彼女の話を途切れさせる。
「...。」悟ってくれたらしく口を閉じて黙った。
「ウチはこの森の魔女。あんたたちは?」
いきなりの自己紹介。赤ずきんは一瞬だけ戸惑ったがすぐに、
「わっ私は赤ずきんよ。この森を抜けた村に住んでいるの。」
と言った。
魔女はおいらの顔を見て「あんたは?」と言わんばかりの顔で睨んできた。
「おいらは......この森の...猟師だ...。うん。」
しどろもどろに言うと魔女は納得していないような顔で頷いた。
「あなたは本当に魔女なんですか?」
素朴な疑問。だってこの人そう言ってたから。
村にも魔女がいる。自分でそう呼んでいるだけだけど。
本当は占い師だってお母さんが言ってた。
「ホントにゃ。嘘ついてどうするにゃ?」
平然と答えた魔女さん。そんなの口だけです。証明して。
「ウチは気まぐれでイタズラもやりたいときだけ、やりたい程度にやるんにゃ。」
無表情のまま牙のある猫のような口で話す。
本当に猫さんみたい。ちょっと可愛い。
しかし言ってることには可愛さはあまりない。
「とりあえず、おいら達は休ましてもらおうと思っただけだから。
邪魔なら今すぐ出ていく。」
ルーパスは踵を返し、ドアへと向かう。
「最後に言っておくけど、ウチと関わったことに後悔するにゃ。いつか...きっと。」
意味深に笑うと魔女は箒を手に取った。
大きく振りかぶり強い風を起こした。
私たちは家の外にほっぽられ、ドアが閉まった。
「なんだったんだろう...まぁいいや。行こう 赤ずきん。」
ルーパスは歩き出す。私は勇気を出して言った。
「あの...おんぶよろしくお願いします。」
その頃。魔女は邪魔物を外へ追い出して溜め息を吐いた。
そして大きな水晶の前に行くと手をかざした。
中にさっき出会った二人がブワンと映し出される。
しかし、彼の方は少し容姿が違う。
ピンと立った茶色い耳に長いフサフサの尻尾。
眼は黄色く光っていた。
魔女は微かに妖笑すると側で鳴いた猫を撫でて呟いた。
「やっぱり。あの子、狼にゃあ。楽しみにゃ。」
To be continued...