第88話:準々決勝
「それで、天剣は使わないんだな?」
「しつこいな……。あれは魔力の伝導回路も持ってるし、それに絶対に砕けない。そんなチ-トの塊みたいな物を使える訳無いだろう?」
「それもそうだな」
あれから予選の全部の試合を見終わり、午前中にベスト4まで決定し午後から準決勝と決勝を行って今日は終了。
俺はちょっとトイレに行った。俺が試合に出る訳でもないのに、なんでこんなに緊張しているんだ?俺が戻ってみると、あのいけすかないクソ皇子がアキと啓と話していた。
俺が近づくと、顔の筋肉をこわばらせながら去っていった。二人の方を向くと……何だか暗い感じになってるんだけど……。
「何を言われたんだ?」
「俺が負けたらテルファンさんを渡せって。アキが負けたら会長を渡せって」
「……なるほど。今からでも俺がぼこぼこにしてやろうか?」
「必要無い。だから俺らと一緒に試合に出てくれないか?」
「……うん。まあいいか。別に二回出ても一緒だしな」
「サンキュ」
「気にするな。友達だろ?」
俺は会長に俺達三人で出る旨を伝えると、驚きはしたものの許可してくれた。まあ、俺が出るとは思わなかったんだろう。
俺は試合開始の合図とともに風の大精霊を呼びだし、二人の相手メンバーを場外へ吹き飛ばした。悪いな。俺らの目的は一人だけだからな。
「よう。またお前さんはいらない事をしたらしいな。俺は言ったはずだ。『次は無い』と」
「それに俺ら異世界の住人に喧嘩を売ったんだ。それ相応の覚悟はできてるよな?」
「まあ、要するにだ」
「「「死ね」」」
アキが拳と蹴りの連撃を叩きこみ、空中にはね上げた所で上から普段受けてる量の約五倍の重力を叩きつけた。急に上から衝撃があって意識を飛びそうになった所を、電撃で強制的に目覚めさせたところで、啓は文言を唱え始めた。
『俺のこの手が真っ赤に燃える!』
そう、あのガン〇ムの伝説の技を。
『勝利を掴めと轟き叫ぶ!』
『爆熱!ゴッドフィンガァァァァーーーー!』
そして超高熱に包まれた右手で服を掴んで上に向けると、その圧縮され切った炎を解放した。
『ヒート・エンドッ!』
巨大な爆発音とともに、あのクソ皇子は空中に吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。もう虫の息だったが、まだ生きてはいた。
「これに懲りたら、こういう事はもう金輪際しない事だ」
俺がそう告げると、クソ皇子は気絶した。そしてそこで試合は終了。俺達は移動した。さすがにあんなバカみたいな技を放ったせいで、啓の腕は三日間は動けなくなった。
もちろん治療はしたぜ?でも火傷がひどすぎるんだよ。そんで会長とテルファンさんに凄い怒られた。理由を俺が説明すると、二人とも黙ったけど。副会長に一発ずつ殴られたけど、そんだけだ。
「テルファンさん。啓はの右手は二、三日は動けないからそいつの食事の世話は任せた」
「え?……はい、分かりました」
さて、今から啓の慌てふためく姿が楽しみだな。




