第83話:チンピラ退治
俺達は一度それぞれの部屋に荷物を置いた後、街でやっていた祭りに参加した。俺と啓は魔術で変装して、だけどな。それにアリシアが結構膨れてた。お土産を持ってくるって事で何とか事なきを得たけど。
お祭りの所為もあるんだろうけど、街は結構活気があった。こんだけの人がいると、何かしらの問題も起こるんだけどな。
「キャァアアアッ!」
ほら来た。俺とアキは知らず知らずの内に駆けだしていた。啓もため息をつきながらも俺らに付いてきた。
俺達が悲鳴を聞こえた先に付くと、なんか帽子をかぶった子が数人の男に囲まれていた。なんだ、これ?ナンパか?
「お前ら!一体何してんだ!?」
「ああん?テメエらに関係ないだろ!」
「チンピラ感バリバリだな……。なあ、アキ。なんだか無視したくなってきたんだが」
「俺も結構同感だ」
「何言ってんだ!?困ってる人がいたら助けるのが当たり前だろ!」
「さすがは主人公補正持ちの人間が言うと迫力が違うな」
「なにブツブツ言ってんだ!テメエらなんてな、ママンの所にでも帰りやがれ!」
「……お前、今何て言った?」
「ママの所にでも帰れって言ったんだよ!」
はっきり言って今俺の精神のラインが何本かきれたのを感じた。気づいたらアキに肩を掴まれていた。殺気駄々漏れだったらしい。
「……離せ、アキ」
「悪いんだが、それは出来ない。今のお前はな」
「殺さなきゃいいんだろ?殺したとしても、証拠を残さなきゃいいんだろ?」
「そういう問題じゃ無くて。それに今のお前じゃ、殺さないとか無理だろ?」
「重力を増大化させて無理やりすり潰す事も出来るぜ?はっきり言って、こいつらみたいなカスを生き残らせておくとか、世界の無駄だろ?」
「ここまで行くと止まりそうにないな……。殺すなよ?お前がそんな事をすれば、お前の家族が悲しむんだから」
「……分かっている」
俺はアキの手をどけると、もう足腰が震えてしまっているチンピラ達を睨みつけた。それによって俺の殺気の密度が上がり、もう腰が抜けたのか尻もちをついた。
「て、テメエら!俺らは闘技大会に参加する選手だぞ!?こんなことしてただで済むと」
「思ってるよ?『弱肉強食』がこの世界のルール。弱いから悪いんだ。お前らがそこの女性を襲ったのと同じように。それともう一つ。テメエは俺の家族を侮辱した。死者に対する侮辱は最低の部類に属する。それが招いた結果だ。だが殺しゃあしねえ。その代わり」
「死にも勝る苦痛を味わえ。歯には歯を。目には目を。罪人には罰を」
「ぐっ!?これは一体……!?」
俺はその疑問には応えず、女性を連れて表通りに出た後喫茶店の奥まった所に座った。さすがに女性には怯えられていたが。ま、仕方ないだろう。
「お会いできて光栄に思いますよ。歌姫・シエラ姫?」
俺の言葉に観念したのか、女性は帽子を外した。そこには藍色の瞳に、紅色の髪。それに絶世の美女とも讃えられてもおかしくなさそうな美貌を纏った人がいた。




