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黒の勇者と白の英雄  作者: あかつきいろ
バトルトーナメント編
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第82話:旅の道中

「それではまず自己紹介といきましょう」


 翌日、俺達は馬車の前で集合していた。どうやらアリシアと姉さんは王様と同じ馬車に乗るらしい。セイバーとカリアさんは自分専用の馬に乗ろうとした所で、俺の馬車まで連行された。


 そんで俺達の前にいるのは、俺達の引率役をする事になった騎士の女性と男性のペアだった。どうやら二人とも一般の方の大会には出るらしい。


「私は第一魔装騎士団副団長、ファルナ・カシア。よろしく」

「俺は第一魔装騎士団団長、ガルナ・デリウスだ。問題だけは起こしてくれるなよ?」


 そんで俺達の自己紹介に移った。といっても名前を言うだけだが。俺とアキ、それに啓の名前が出た時点で目を見開いていた。


「い、異世界の人なの……?」

「そうですよ。といっても、俺は試合には出ないつもりですけど」

「何故?この大会は、強い者たちが集まる大会なのですよ?」


「ぶっちゃけて言わせていただけるなら、俺に勝てる人が学生レベルでいるとは思えないから」


「……確かに。あの『円卓の騎士団』の一人、ガウェイン様にも勝てたお方だ。確かに言えてる」

「でも、確か今回は『学生最強の精霊使い』と『学生最強の魔術師』がいるんでしょう?喰らいつく人ぐらいならいると思いますけど……」

「あんまり興味ありません。元々、俺はこの大会に出る気なかったし……。あの王様はいつか潰す。今回は司令塔的な立ち位置に甘えさせてもらいましょう」


 俺は出る事になったとしても一回だけしか出る気はない。それ基本的には会長とアキのコンビ。それで場面に応じて三番手を変える。


 まったく出る気が無いからこそなんだけどな。まあ、残りが三人もいれば何とかなるだろう。その後は精霊の状態を見て暇つぶしをしていた。


「……あれ?なんで精霊がこんな所に?」

「そりゃ俺が呼んでいるからだよ。ま、その気になれば実体化させることもできるけどな」

「今更ですけど……基本性能がおかしいですよね。クロヤさんって……」

「クロでいいですよ。ところで……セイバーはどうしてそんな所で縮こまってるの?」


 俺がセイバーに視線を向けると、なんかちょっと顔が赤くなっている。どうしたんだろう?


「ちょ、ちょっと近い!」

「……なるほど。気にする事は無いのに」


 俺はセイバーを抱きしめた後、ゆっくりと頭を撫でた。セイバーも最初は慌ててたけど、だんだんと気持ち良くなったのか安らかな顔で眠り始めた。


 なんか羨ましそうな表情を浮かべていたので、カリアさんの頭も撫でてあげた。どっちかっていうと髪を梳いていた、って感じなんだが。


 会長はアキの方を見ながら、テルファンさんは啓の方を見て『自分にもやってくれないかな~?』みたいな感じをバリバリ出していた。


 副団長さんと団長さんは、ちょっとした驚きの表情を浮かべていた。おもにセイバーの方を見て。まあ、昔のセイバーを知っていたら驚きだろうな。


「あのセイバーが……ねえ?」

「セイバーだって立派な女性ですからね。なんら不思議じゃありませんよ。単純に昔が生き急ぐ……ちょっと違うか。死に急いでる感じだっただけですよ」

「……確かに。生に展望を持てていないって感じだった」

「でしょう?それが嫌なら……生まれ変わった、とでも思えばいいんです」


 二人は慈愛に満ちた表情でセイバーの事を見つめていた。そして二人が俺の肩に頭をのっけている間俺は本を読んでいた。


 こんな静かなんだが、少々騒がしい旅路を経て俺達は闘技大会の会場の街に到着した。

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