第74話:騎士との談笑
「ん?ランスロットさん?」
「ほえ?……あれ!?なんでこんな所にいるの!?」
「それ、こっちのセリフなんですが」
俺は今、二人に一応気休め程度の回復魔術をかけた後皆を連れて学校内の探索をしている真っ最中だった。
「いやいや、旅に出てるはずの君がここにいる時点で僕のセリフだから」
「……まあ、どうでもいいんですが」
「どうでもいいならいいじゃないか……」
「それで、何故ここに?」
「ちょっと懐かしき学び舎の見学……のついでに今期の生徒会を見に来たんだよ。メンバーの入れ替えとかもあったらしいからね。英雄君と異世界のご友人だったっけ?」
「そうですか。それじゃ、俺達はこれで」
「待て待て。……用ってそれだけ?」
「それだけですが……何か?」
本当に用事は無かったんだが、たまたま会ったから訊いてみただけだ。というか、一国家の重要な騎士がこんな所をぶらついいていていいのか?
「そうかい……。それで君は何でここに?」
「アキに頼まれましてね。新しく作った魔術の実験ついでに来たんですよ。今は生徒会長とアキの修行が終わったんで散歩みたいな物です」
「ふうん。中々君も忙しそうだね」
「学校に通うよりは気が楽ですから。どうという事はありません」
「恋愛とかに興味が無いのかい?」
「俺にはすでに婚約者とか、俺を好いてくれる人がいますので。そんな事をする気はありません。そういうのはアキがやればいんですよ。あの主人公補正の塊が、ね」
ぶっちゃけた話、俺は前の世界で持てると言えるほど俺の周りに女性が多かった訳ではないのだ。基本的にアキが考えなしに人を助けまくる所為で、俺は後処理に回っていた。
それに助けた人はどんな助け方をされたのかは分からないけど、大抵アキに惚れちまってるんだよな。そういう場面を何度も見てる所為か色恋沙汰には特に興味が無いんだよな。
「……どういう事があったんだい?」
「口にしたくありません。思い出すのもおぞましいほど、あいつは女性をおとして回りますから」
「……なんとなくだけど、伝わったよ」
「それは何よりです。それでは」
「それで君はどうするんだい?」
「?どうする……とは?」
「宿だよ。宿。どこに泊まる気なんだい?」
「……あ。なにも考えてませんでした」
「おいおい。それじゃあ、城に戻ってくるのかい?」
「……ランスロットさん、先に戻って連絡しておいてくれますか?」
「わかった。ところで……彼女はエルフかい?」
「そうですが、それが何か?」
「気をつけた方がいい。この国にはまだ奴隷商という存在があるから、さらわれる可能性がある」
「……分かりました」
「それじゃ、お先に~」
そう言いながら、ランスロットさんは意気揚々と帰っていた。一体何がそんなに嬉しいというんだろうか?




