第66話:問題解決
「そこまでだ」
入ってきた奴はいかにも階級が高めな偉そうな奴だった。
「あんた、誰?」
「私は彼女の結婚相手であるベルナスだ」
「そう。入ってきたって事はあんた訊いてたろ?彼女は結婚を望んでいないと」
「何のことやら」
とぼけますか。ま、当然の反応だわな。
「おっと、余計な事はするなよ?」
「あん?……テメエ、殺されたいのか?」
ベルナスと名乗った奴は、アリシアとセイバーの腕を拘束していた。俺は右腕に刻まれた『聖痕』を起動させた。
「余計な事はするな、と言ったはずだが?」
「俺が、余計な事をしなければいいんだろう?」
「来い、トパーズ!」
聖痕の一筋が煌めき始め、そこから一体の獅子が出てきた。
「なんか用かい?」
「こいつらを……ぶっ殺せ」
「了解。お前らも運が無いな。そんなことしなけりゃ、主殿も何もしなかったのに」
「その獣は一体何だ!?」
「こいつは星獣の一体。聖なるの聖じゃなくて、星の星な。神様から授けられたんだよ。他にも数体いるしな」
そう話している間にも大半の男達をトパーズは無力化した。残りは星獣の名が出た瞬間に逃げた。残りはこのいけすかない奴だけだ。
「俺は家族に手を出された時点で容赦しない。それに」
「そ、それに何だというのだ!?こんな事をしてただで済むと思っているのか?」
「お前こそ何を勘違いしている。龍神ヴリトラを従える者に勝つ気だったのか?」
「ぐっ!」
腹筋目がけて拳のコンボを叩きこんだ。ざっと十二、三発位は殴ったかな?地面にうずくまっていた。俺はその髪を引っ張りこちらを向かせた。
「他人の意志を捻じ曲げようとする奴が、俺は嫌いなんだよ」
「……」
「喋れんか。いっそお前のような奴は、神話魔法で惨たらしく殺した方がいいのか?」
「し、神話……魔法……だと……?」
「その身体をじりじりと焼き、魂もろとも滅ぼしてやろうか?それともお前の心が折れるまで、地面になぎ倒しておいてやろうか?重力で一気に二百メートル位押し潰すのもありだけど……」
俺が次々と案を出す度に、こいつの顔が青くなっていく。面白いな。俺はアリシアとセイバーの拘束を外しながら、まだまだ案を出していく。最後にはぼろぼろと涙を流していた。
「ど、どうすれば助けてもらえますか?」
「は?助ける?おいおい、他人の意志を捻じ曲げようとしていた奴の考えとは思えんな」
「ひいっ!」
「助けて欲しくば、結婚を止めろ。そうすれば、考えてやる」
「……主殿、ちょっと怖すぎますよ」
「しゃあないだろ?こいつが全部悪いんだから。自業自得って奴だ」
「……それは」
「なんだ?口答えする気か?それなら」
「や、止める!結婚はしない!」
「永遠に、か?俺が消えた途端結婚するとかぬかしたら……分かってるな?」
「誓う!私はカリアとは結婚しない事を誓う!だから!」
「いいだろう。それじゃ、こいつでけじめだ」
俺自分でかけられる最高ランクまで肉体強化した後、鳩尾に向けて拳を叩きこんだ。その一発でベルナスは悶絶して気絶した。
俺はカリアさんの方を微笑を浮かべながら見ると、さすがにちょっと怖がっていた。だから安心できるような声音で話しかけた。
「これで君は自由だ。君の進みたい道を選ぶといい」
「アリシア、セイバー。明日にはこの村を出るぞ」
「分かりました。準備をしておきますね」
「頼む。というわけで、今までいろいろとお世話になりました」
俺が手を差し出すと、カリアさんは俺の手を握ってくれた。これでいいんだ。ここで俺が出来る事はもう無いのだから。




