第65話:選択
翌日、俺は神様から渡された資料を眺めているとカリアさんが訪れた。
「おや、いらっしゃい」
「……返事をしに来ました」
「そうでしょうね。それで、どうします?」
「私は、結婚します」
「……理由を訊いてもよろしいですか?」
ぶっちゃけ結構意外だった。それでも、俺は問わなければならない。
「家の為、が根本的な理由です」
「それで?」
「両家の、ひいては村の発展のためにはこうする事が一番なんです。だから」
「そんな事は訊いていない。俺が訊いているのは、『あなた』がどうしたいか、だ。村の事なんぞ知るか」
「それは……」
「俺はあなたに問うた。貴女はどうしたいのか、と。村の為だとか家の為だとか、そんな事で自分の一生を決めるな。大事な事は、貴女がこの結婚で幸せになれると思っているか否かだ」
「なれるんじゃないんですか?」
「笑わせるな。愛してもいない人間と一緒にいて、幸せになれるものか。貴女が選びたい道を選べ。それが、貴女の幸せに繋がるのだから」
「……」
あらら。さすがに黙っちまったか。俺は何も言わずに渡された資料を見た。部屋にはただ資料のページをめくる音が響く。
「私は」
「ん?」
「私は、結婚なんかしたくない!」
「……それでいいんですよ。それが貴女の選択。ここで未来の道筋は決まった。行きましょうか。世界を見る旅に」
俺は手を指しのばした。カリアさんがその手を取ろうとした瞬間、大量の男達が部屋の中に入ってきた。はてさて、これはどういう事だ?




