第64話:お悩み相談
翌日、俺達は広場にいた。ここでは人間界で言う依頼の様な物がのっている掲示板があるらしい。それを見ていると、後ろから抱きついてくる人がいた。まあ、姉さんなんだけど。
「なにしてるの?クロ君」
「姉さん。取り敢えず離れて」
「ええ?なんで?昔はよくこうやってたら喜んでたじゃない」
「幾つの時の話だ……。俺は依頼を見たいの。取り敢えずどいて」
姉さんは渋々ながらも俺から離れた。すぐ傍ではカリアさんが呆れたような表情を浮かべていた。当然だわな。昔は普通かと思ってたけど、育つ内におかしい事が分かったし。
「そう言えば、あとどれ位ここに残ってるの?」
「うーん、特に決めてないけど数日中に。なんで?」
「なんと明後日カリアちゃんが結婚するんだって」
「へ?本当に?」
「はい。黒龍がいなくなったので。必然的に」
そう告げたカリアさんの顔はどことなく暗かった。
「アリシア、セイバー。今日はカリアさんと一緒にいてもいいかな?」
「「構いませんよ」」
「お姉ちゃんもいい?」
「駄目」
「ええ!?なんで!?」
「姉さんがいたら、悩みが相談できないでしょ?大体仕事中なんじゃないの?」
「うっ!そ、それは……」
「天使様!勝手に仕事から抜けられては困ります!」
結果。姉さんは仕事場の人に引きずられて行きました。自業自得なんだけどね。俺達は大精霊の契約に使った広場に向かった。
「それで、何を悩んでるの?」
「私は……結婚したくないんです」
「それは……相手の男が嫌だとか、そういう理由?」
カリアさんは黙って頷いた。まあ、力を持っている奴らはどうしても偉そうになりがちだからな。
「やたら偉そうだとか、そういうの?」
「それもありますけど、家族の事を顧みずに仕事をするそうですから」
「……つまりちゃんと自分の事を見てくれる人がいい、と?」
「はい。そう思うのは傲慢でしょうか?」
「うんにゃ。俺は良いと思うけど?家族の事をちゃんと見れない奴なんて最悪なだけだよ」
「その点、私達は幸せですよね」
「アリシア、余計な事を言うな。……それで、ご両親は?」
「言ってもどうにもできないんです。両家の関係性からいって」
「それならいっそ俺が攫ってしまおうか?」
「え!?」
「君が悪い訳じゃ無くて、全部俺の所為になるからね。ま、その代わり君は戻ってこれなくなってしまうけど……」
「そうですね……」
「ま、じっくり考えなよ。君の選択に任せる。でも、君にとって本当に大切な『願い』を言ってくれ。そうすれば、俺はそのために全力を尽くす」
「……はい」
その場はそこでお開きになった。考え込んでいたけど、大丈夫かな?




