第5話:城に向かって
俺は歩いてさっきの巫女さんがいる場所に向かった。俺が結界を解除すると、驚いた事に凛とした表情で立っていた。しかし姿勢が良いな。
「あの、巫女さん?」
「はい?ああ、もう終わったんですか?」
「いえ、そりゃまあ、終わりましたけど。しっかしやたらと落ち着いてましたね」
「勇者様を信じていましたから。勇者様こそ、大丈夫ですか?」
「え?ああ、全然問題ありませんよ。ところでお名前をお伺いしても良いですか?」
「これは申し訳ありません。私は、このヴァルフェイル王国第3皇女アリシア・ヴァルフェイルです。以後お見知り置きを」
うん、なんとなくそんな空気はしてたけど、とんでもないビックネームだった。あれ?髪に汚れが付いてるな。
「姫様、ちょっと失礼」
「え?」
俺はなぜか懐に入っていた櫛で少しだけだが、髪の毛を梳いた。すると姫様の頬がほんのり紅く染まった。あれ?なんかおかしいかな?
「姫様?どうかしましたか?」
「い、いえ。男の方に髪を梳いてもらったのが初めてだったので」
「それは失礼しました。ところで城に向かうとか言っていませんでしたか?」
「あ、そうでした!ベルフェン騎士団長!」
「ああ、もうお話は終わったんですか?」
「至急馬車の用意をして下さい。勇者様召喚が成功した事をお父様に知らせに行きます」
「準備はできていますよ。はじめまして、勇者殿。俺はアグルス・べルフェン。第3師団を任されてる騎士団長だ。今後ともよろしく頼む」
「こちらこそ。俺は輝宮黒谷だ」
「テルミヤ・クロヤ?テルミヤが名前なのか?」
「そういう言い方なら、クロヤ・テルミヤだ。よろしく、べルフェン騎士団長」
俺は握手をすると、馬車に乗り込んだ。っていうか、この馬車広っ!一体何人乗りだよ?それともあれか、王族ってのはこんなでかい馬車に乗るのが普通なのか?
でも二人しかいないから、スペース余りまくりだな。っていうかこのお見合いみたいな感じ、嫌だな。ホントに姫様って美人だよな。
「それでは、この世界の事を説明させていただきます」
おっと、これは真面目に訊かないと拙いな。俺は居住まいを正して、姫様と真正面で向き合った。