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第４８話：結末

「こんな事で力を借りるのは本意じゃないんだが。しゃあないか！」

『其は風の精霊達の王』

『今、汝が力をここに』

『風の精霊王フェルゲン・ゲルナス』

　俺の身体から魔力の光があふれ、風の精霊王が顕現した。風邪の精霊王の性別は女性だ。まあ、精霊に性別なんて物は無いんだろうが。

「どうしたのだ？我らが主殿」

「すまんな。……俺の天敵と相対してるんだよ」

「ん？……少しいいか、主殿」

「なんだ？」

「あの者の眼が狂気に染まっているのだが……」

　姉さんの眼は確かに殺意的な物で満たされていた。うわあ、なにあれ。超怖いんだけど。

「クロ君を返せぇぇぇぇ！」

「くっ！なんだよこれは！？」

　フェルゲンの力で何とか押し留めてはいるものの、その防壁もだんだん削られていっている。このままだと拙いな。あ、あれがあったか。

「姉さん！」

「待っててね、クロ君！絶対に助け――――」

「いい加減にしろ！」

　姉さんの手がピタッと止まった。そして恐る恐る顔を上げた。その顔をは悲しみによる恐怖みたいな感じの表情だった。

「く、クロ、君？どうしたの？」

「そうやって他人に迷惑をかける事が、姉さんのやりたい事なの！？」

「そうじゃないよ！でも、ほら！懐かしき兄弟の愛情を確かめようとしたというか……ほら、ね！？」

「ね！？じゃない！そんな事をする人を俺は姉さんだとは思えない」

「そ、そんな！待ってよ！謝るから！なんでもするからそんなこと言わないで！」

　そう。姉さんは俺に強烈な否定の感情を浴びせられると、こんなふうになる。一回やり過ぎた姉さんをこんな感じで諫めたら、数日はおとなしくなった。

　この話の結末。姉さんに人に迷惑をかけないという事を誓わせて、何とか事なきを得た。アリシア達には憐みのような視線を向けられるし、大変な一日だった……。