第45話:契約
「さて、と。ここならいいかな?」
「一体何をする気なんですか?」
俺達が今いるのは一昨日見つけておいた広場だ。影のおかげで涼しい。それにそれなりに光量もあるし。文句なしの場所だ。
「マクスウェル。俺はお前と契約している。それは間違いないな?」
『どうしたのだ?主殿。そんな事をわざわざ確認する必要はないだろう?』
「それじゃあ、訊くけど。俺はお前よりも下位の精霊を使役する事が出来るのか?」
『……なるほど。そういう事か。まあ、できるだろうな。主殿ならば』
「そうか。それなら、いいな!」
俺は腕の聖痕を起動させ、力を一気に高めた。そして文言を唱えた。
『汝らは精霊の第一子』
『汝が祖の契約者である、我が声に応えよ』
『汝らが力を、ここに』
『六大。及び三柱』
俺がそう唱えると、俺達の目の前には九体のいわゆる大精霊達が並んでいた。
属性は炎、水、風、土、光、闇の六つと無属性三体だ。文献でさっき見つけたんだが、どうもこの世界で最強の精霊というのはこの九体と始祖精霊――――つまりマクスウェルの事を指すらしい。
「懐かしゅうございます。我らが始祖よ」
『うむ。貴様らも元気であったか?』
「我らは風邪など引きませぬよ?」
『そういう意味では無い。この馬鹿者。……契約者はおらぬのか?』
「今となっては、そこまでの実力者もおりませぬ。……それで、そこの者があなたの契約者様ですか?」
『そうだ。それで、我が主殿よ。何故この者たちを呼びだしたのだ?』
「そんなの決まってるだろ?……俺と契約してもらうためさ」
全員が、こちらを試すかのような目になっていた。もちろん今の言葉は嘘じゃない。俺はいざって時の為に力が欲しい。あって困る物じゃないからな。
「我らとしては構わぬが……一つ実力を見せてもらおうか」
「構わないよ?何をするんだい?」
「我らと闘って貰う。この九体の大精霊を倒して見せよ。さすれば契約しよう」
「いいよ。それじゃあ、始めようか」
精霊達は巨大な結界を張った。これならちょっとやそっとじゃ壊れないだろう。精霊達が構えるのを確認してから俺は内に眠るある力を開放した。
「な……っ!この波動はまさか!」
「貴様、覇王か!?」
『もう遅い。この力に気づかぬ時点で、お前らの負けなんだよ』
俺の身体から濃密な魔力が放たれ、精霊達を呑みこんだ。その余波で、結界が崩壊した。大精霊が張った結界が、だ。あまりに強烈過ぎたのか崩壊したらしい。
それで魔力の閃光が薄れたその先には、全員が立っていた。満身創痍の風体だけど。俺は『覇王』の力を納めて話しかけた。
「どうする?まだやるかい?」
「いや……。もういい。貴方の力はよく分かった」
「貴方様に従います」
大精霊が全員膝をついた。その後は、マクスウェルと同じく指輪を媒体に契約をした。その代わり、後ろにいる女性陣にめちゃくちゃ睨まれてるんだけど。……どうしよう。




