第30話:皇帝に謁見
俺はその後アリシアを起こして、皇帝陛下に会いに行く事になった。どうやらあの後、セイバーが早馬で医療班やらなんやらを呼んできてくれたらしい。本当に感謝しかないな。
「失礼します、陛下。勇者様をお連れしました」
「おお、来たか。初めまして、勇者殿。私がこの国の皇帝、フェルメリア・アルべスタンだ」
「お初にお目にかかります。私は一応勇者となっております、クロヤ・テルミヤです。色々とお世話になりました。感謝しています」
「なに、気にする必要はない。ところで、君達と一緒にいたあの子供達はどうするんだい?」
「……俺としては王国に送りたいと思っています。ですが、俺は旅の真っ最中です。ですから皇帝陛下、誰か護衛の者と馬車を貸していただけませんか?」
「それは構わん。だが、その代わりに勇者殿には一つ頼みごとをしたい」
やっぱりか。それぐらいはあると思っていたが……一体何を頼む気だ?いざとなったら、俺の手で皆を王国まで送るけど……。
「数日で構わん。我が国の剣術指南役になってはくれまいか?」
「は?それだけですか?」
「うむ、それだけだ。どうもここ最近の騎士たちは鈍っていていかん。そこで君に刺激を与えて欲しいのだ」
「それは構いませんが、劇的な変化を遂げるかもしれませんよ?」
「それはねがったりかなったり、という奴だな。是非頼もう」
「謹んでお受けいたします。フェルメリア皇帝陛下」
俺はそのまま出て行ったが、アリシアとセイバーは残って何かを話したらしい。
――――――――――――アリシア視点―――――――――
クロは出ていった。私達はそのまま席に着いた。
「それでアリシア君、彼は一体どれほどの強さなのかね?」
「一言で言うなら、龍神すらも従えるほどです」
「それは……驚異的だな。セイバーも負けたというし、勝てるのはせいぜいあの『勇者王』位ではないかね?」
「それは、そうでしょう。クロはまだ16なのですよ?それで、お父様に届く実力の持ち主なのです。血も滲んでしまうほどの努力をしてこられたはずです」
「そう、だな。それでセイバー、我に頼みとはなんだ?」
「勇者様とアリシア様の旅に同行する許可をいただきたいのです」
「惚れたか?セイバー」
「……はい。私はあの方を――――クロを見ていたいのです。アリシア様もどうかお許し願えませんでしょうか?」
「私はクロが許可するのなら、別に構いません」
「あ、ありがとうございます!」
まあ、元々旅に同行する人数が増える予感のような物がしていましたし、セイバー様が同行されても別に構わないでしょう。私は、そう考えていた。




