第28話:暴走
そして森の中にある広場のような場所で、新月の光を浴びた。すると血の中にある『力』が胎動を始めた。
そう、今日は新月。神様が俺にかけた封印の力が最も弱くなる日。俺の『魔王』としての力が解放される夜。まあ、夜が明ければどうという事は無いのだけど。
――――ガサッ!
俺が後ろを振り返ると、そこには女の子と男の子の集団が立っていた。それも俺の世界の俺が通っていたのと同じ学校の制服を着ていた。
「もしかして……先……輩……?」
「どうして……?どうして俺の事を覚えているんだ!?」
神様は言っていた。俺に関する記憶は消え去るって。だから俺も後顧の憂い無く旅立ったのに。なのに、どうして!?俺の事を覚えているんだ!?
そこにいたのは俺の高校時代の知り合いだった。生徒会長、同じ委員会の知り合い、それに顔見知りの後輩、それに彩香。皆が一緒になっていた。
「く……来るな!」
驚きの連発の所為で、魔王の力を制御できていない。これじゃあ、暴発するぞ!
そんなのは嫌だ!もう俺の所為で誰かが死ぬ所なんて見たくない!
「セイバー!」
「呼びましたか!?この人たちは……?」
「セイバー!もしかしたら俺の魔力が飛んでいくかもしれない。それを斬れ!」
「……後で色々とお訊きしますからね!」
俺はこの力を一人で、孤独のままに暴発させる事でようやく解消できる。だが、この状態ではどうする事も出来ない。
だけど、セイバーの力があれば、何とかなるだろう。俺は周りを吹き飛ばし続けた。そして最後に宙空に向けて、総てを放った。そしてようやく、俺の暴走は止まった。
本来、俺は俺の力を長時間に及び力を放ち続け、ようやく力を使い切る事が出来る。それを短時間で放ち続けた。それは俺の身体と精神にとんでもない負荷がかかり過ぎた。
つまり、気を失った。という事だ。




