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第24話:旅に出る前に

「どうしたです、勇者殿。その荷物は?」

「セイバーさん。いえ、これから旅に出ようと思いましてね」

「旅!?これから英雄殿の歓迎パーティーがあるのに、ですか?」


「パーティー、ねえ……。無駄でしょ?そんなことしても」


「無駄って……」


 セイバーさんは唖然としていたが、ぶっちゃけ先に体験した俺だからこそ言える事だが暇なんだよな。挨拶ばっかりして何が楽しいんだよ?

 まあ、その結果があの花火騒ぎだったんだけど。俺よりも正直なアキだからこそ、俺よりも堪忍袋の緒は切れやすい。これは俺がサポートした方がいいのかな?


「勇者殿、急ぐような止めはしないが。そうでないなら支えてあげた方がよろしいのでは?」

「そう……ですね。ありがとうございます」

「い、いえ。気にしないでください」

「そうですか?っていうか、セイバーさんって固いですよね。もっとラフでいいのに」

「私は騎士ですから。軽くする必要などないのです」

「うーん、……俺の事はクロ、と呼んで下さい。呼ばないなら、セイバー()って呼びますよ?」

「く……クロさ――――」

「セイバー()


 嫌味たらしく呼んでみた。う……って唸ってるし。俺は様とか呼ばれるのが嫌いだ。そうやって他人を崇める姿勢がすでに嫌いだ。そこにいる奴は、ただの人間で、ただの一個の生命体だと言うのに。


「く、クロ。これでいいんですか?」

「ええ、結構です。これからもそう呼んで下さいね。じゃないと、セイバー様って呼びますから」

「う、うぅぅ。分かりましたよ……。呼ばせて頂きますよ、クロ」


 それから俺はセイバーさんと別れて、自分の部屋に戻った。ちなみに魔王とその妹さん、それに竜王の二人、いや二体か?は先に魔王領に帰った。

 俺が魔王領の都市に着いたら城を訪ねる約束をして、だけどな。そんな事を考えつつ、俺は正装に着替え始めた。

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