第124話:命を奪う事の重み
「俺に、べディシャの討伐依頼をして下さい。どうしてもお礼がしたいというなら、その報酬という事で」
「し、しかしそれでは……」
「別に構いませんよ。べディシャのランクは、確かDぐらいだったかな?まあ、なんとかなるでしょう」
「……分かりました。よろしくお願いします」
「はい。引き受けました」
俺が皆に顔を向けると、もう『分かってます』って雰囲気になっていた。まあ、この言動から分からない訳が無いんだけど。
「悪いけど、クリスも連れて行く」
「「「ええっ!?」」」
「私も連れて行ってもらえるの!?」
「クリスには実戦という物を学んでもらわなきゃいけない。剣という物を振るう以上、相手は血を持った生物だ。色々な経験をして、そこで生きている生物なんだ。
剣を持つという事は誰か、何かの命を奪うという事だ。だからこそ、クリスは知らなきゃいけないんだ。何かの命を奪うというのは、どういう事なのかを」
「それは一理ありますね」
すぐに俺に賛同してくれたのはセイバーだった。まあ、武人という関係上何かの命を奪った経験のある人だからな。
「でも……」
残り二人、つまりアリシアとカリアはまだ迷っている様子。まあ、アリシアは巫女だから何かの命を奪うという事は無いだろうし、カリアは精霊術や魔術を得意としている。
生死の実感という物が無いんだろう。俺は修行で初めてオークを殺した時、たとえそれが幻影だと分かっていても数日間トラウマとして残ったほどだ。
命という物は重い。何かの命を奪うなら、その者はその命を知らなくてはいけない。こいつは魔物だから、こいつは敵だから。
そうやって知ることから逃げれば、そいつは強くなれない。相手を殺す覚悟を持たなければ、武器を持ってはいけないんだ。
誰かを守るため。ただそれだけの理由で武器を振るって、それで人を殺した時。そいつは良心の呵責によって押し潰される。
こればっかりは、他人にはどうしようもない事柄だ。その者が乗りきらねばならない枷。そういう呪いをかけられる。
「強くなりたければ、何かを殺すという事の真実を知らなきゃいけない。俺は、いざって時に動けないなんて人になってほしくないんだ」
「……分かりました」
「ありがとう。そして、すまない」




