第121話:誰が為の力
「クリス。修行の相手をしてやる。巧からもらった剣を持ってこい」
「うん!わかった!」
俺達は真剣で試合を始めた。え?危険じゃないのかって?そりゃ勿論。でも、危険を知るならこれが一番手っ取り早い。
といっても、間違っている所を修正したりするだけなんだけど。重心の入れ方とか。よく間違ってクリスはこけたりしてるけど。
「よし、取り敢えずこの辺にしておこう」
「え~。もっとやってよ!」
「だ~め。今のクリスに必要なのは重心の入れ方とか基本的な事。これがマスターできないと、技の練習にも入れはしないよ。わかった?」
「ぶ~。ケチ」
「ケチで結構。取り敢えずおいで。怪我した所とかを治療するから」
「……は~い」
治療魔術で傷を治している傍らで、クリスは俺に訊いてきた。
「ねえ、パパ」
「なんだい?」
「どうしてパパは、強くなろうと思ったの?」
「……また深い事を訊いてくるな。そうだな……最初は憂さ晴らしの意味が強かったんだと思う」
「最初は?じゃあ、今は?」
「今は、クリスやアリシア。その他の大切な人を守りたいと思うから、かな。逆に訊くけど、どうしてクリスは強くなりたいんだい?」
「ふえ?」
「今の時代、別にクリスが強くなる必要はこれっぽちも無い。それなのに、お前は俺の旅についてきた。という事は、お前は強くなりたいって事だ」
「うん」
「どうしてお前は強くなりたいんだい?」
「……最初は捨てられたくなかったから」
「……」
俺は……内心後悔していた。確かに俺達が目の前からいなくなるって言う事は、この子が捨てられた風景を彷彿させ得るという事を全く考えていなかった。
「でもね、今は違うんだ!」
「……どう違うんだい?」
「今はね、皆を守るパパを支えられるようになりたいんだ!」
「――――っ!?」
「パパは今まで大変だったんだと思う。なんとなくだけど、それは皆の表情を見てれば分かるんだ」
八歳児に考えてる事がばれる大人って……なんだかな。本当に、なんだかな。……しょうもな。自分で言ってみて後悔した。
「だから、私が強くなってそんなパパの負担が減るようにしたいんだ!」
「……ありがとう、クリス。でもな、まだ子供のお前がそこまで考えなくてもいいんだよ?子供は自分のやりたいと思った事をすればいいんだ。我儘を言えるのは子供の特権なんだから」
「これが私のしたい事なんだよ!だから、これでいいの」
俺は正直、幸せ者だと思う。こんなに俺の事を慕ってくれる娘がいて、そして俺の傍に立ってくれる女性がいて。そして俺の事を友達だと言ってくれる人がいる。
魔術師の連中を皆殺しにした時、俺は真摯にこう思った。「ああ、俺はもう『孤独』なんだ」って。
そんな俺に、こんなに大切な人が出来た。だから、俺は誓ったんだ。この絆だけは。俺と皆を結んでくれるこの絆だけは、絶対に捨てはしないと。
文章中ではまだ弱いように書いていますものの、クリスはDランク相当の魔物はぎりぎりで殺せるから十分強いです。
黒「そうやって俺の娘を甘やかすな」
いきなり登場しないでください。ここは後書き。我が作者達の領分。すなわち、不可侵領域!
黒「やかましいわ。えー、この作品をお読みの皆様。馬鹿な作者に変わり、お礼を申し上げます」
って、こら!馬鹿とか言うな!確かにそこまで成績が良い訳ではないけれど!こっちだって頑張ってんだぞ!?
黒「それは俺にとっちゃどうでもいいことだし。あ、次回から後書きに俺達、『黒勇白英』のキャラクターが登場します。よろしく」
ちょ!?何を勝手に決めつけてんの!?
黒「それでは最初は、一応主人公の一人輝宮黒谷でした。さよなら!」
あ、行きやがった!……それでは暴挙に出たキャラも退散しましたので、ここら辺でお開きにさせていただきます。では!」




