第120話:荒療治
翌日、俺達はゲートの前に立っていた。結局、ゲートはこの家の中に貼り付けられる事になった。ついでにあのテレビ電話みたいな奴も。
「それじゃ、行ってくるわ」
「おう、気をつけろよ」
「頑張れ」
「お土産よろしく」
「好き勝手言ってくれるな。それじゃ」
俺はゲートをくぐり抜け、先に進むと――――なんかたくさんの人がいた。しかもただの人じゃなくて、頭の上に耳をつけてるとか、そういう人たちだ。つまり、獣人。
「これは……?」
「あ、あんたはカリア嬢じゃないですか!」
「貴方達は……どうしてこんな所に?」
「知り合い?」
「ええ。偶に薬師として薬を処方したりしてたんですけど……。どうして里の外に出てるんですか?」
「村長の息子さんが、ご子息が大変なんだ!毒にやられちまって……」
「……話は後ですね。今すぐに向かいましょう」
「了解。それじゃ、ちょっと我慢しててくれよ」
「『速度強化』」
馬が急に力が漲ってきた事に驚いてはいたが、俺達の意図を理解してくれて凄い速度で走ってくれた。カリアを先導に獣人の里に向かった。
十分程度で到着。そこから馬を馬小屋において、俺達は村長の家に向かった。そこで見た光景は、言葉では言い表せない程の光景だった。
状態でいえば、もうすでに瀕死。もう何時死んでもおかしくないような状況だった。これを助けられるのか?
「おお、カリア殿!お願いです!私の息子を助けて下さい!」
「全力を尽くします」
まあ、確かにそうとしか言えないよな。これはもう現代の世界でも死亡と断定されるレベルだぞ?
「パパ」
「なんだい?クリス」
「あの子、助けられないの?」
「俺の推測だと、無理だ。もう一般的な処置じゃ助からない」
「それなら、パパは何とかできるの?」
「え?」
「パパは、あの子を助けられるの?」
「……そういう事か。クリスは彼を助けたいか?」
「うん」
「そうか……。それなら俺もやるとするかな」
俺が男の子に近寄ると、カリアは必死に壊死を防ごうとしていた。どうやらこの毒は感染者の身体を破壊していく類らしい。
「状態確認。……まあ、これ位ならなんとかなるか。村長さん」
「な、なんだね?」
「獣人って霊水は大丈夫ですよね?」
「ああ、勿論大丈夫だが……。それが?」
「それならいいんです。我と契約性水の精達よ。我の願いを叶えよ」
置かれていた水が全て霊水に変わった。そして俺は少年の体を触りただ一言、こう呟いた。
――――『解呪』、と。
すると、少年の身体の壊死が終わった。だが、そこで終わらずに身体全体の病原菌を殺しつくした。そして身体に霊水をぶちまけた。
身体の傷から煙が上がり、だんだん傷を埋めていった。霊水には身体の治癒効果がある。それで治しただけの結構な荒療治だ。
「はい、これで終わり。後は数日休むのと、ちゃんとした飯を食う事だね」
「あ、ありがとうございます!」
「気にしないで。俺は、やるべき事をやっただけだから」
俺はそれだけを告げると、馬を取りに馬小屋に向かって歩き始めた。結構乱雑に止めたからな。ちゃんと直しに行っただけなんだけど。




