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黒の勇者と白の英雄  作者: あかつきいろ
バトルトーナメント編
110/158

第104話:出発

「ああ、やっと帰れるんだな……」

「お前の疲れは段違いだろうな。俺達とは……。って、あれ?あれは確か……」

「何か用か?トップランカー殿」


「ひどい言いざまだね……。あれだけ激しくやりあった仲でしょ?」


「誤解を招きそうな事を言うな……。それでどうしてそんなとこにいるんだ?」

「いや、単純に私もそろそろ戻った方が良いかな?って思ってね。これでも私は元『勇者』だからね。記憶は無いけど」


 それを言われると、さしもの俺も何も言えなくなるな。そういえば今更だけど、俺のこの人の名前知らなくね?


「今更ですけど、貴方のお名前は?」

「うわ~。本当に今更だね?うーん、元の世界の名前でいいかな?」

「覚えていらして、それを俺達に告げても構わないなら。俺達は一向に構わない」


「私の名前は泉。花園泉。元の世界ではそこそこの名家の生まれだった」


「花園って……」


 俺達の世界じゃそこそこどころでは無い。もう上から数えた方が早いような、そんな上位ランクの御家じゃないか。


 これは驚いたな。たしかにその桁違いの魔力量も少々、だが納得はいく。『魔王』に目覚めた時、俺を動かしていたのは復讐という感情のみ。


 そして、そのために俺は力を使って情報を集めた。人には知覚できないけど、精霊は存在した。俺はそれを自由自在に動かし、情報を集めた結果ある事が分かった。


 いわゆる名家に所属する人間は、その全員が強力な霊媒として機能するために魔術師となる事が。俺はそいつら全てを皆殺し――――にしようとしたが神様に止められたんだよね。


「……今更だけど、お前の人生は俺にはついて行けないよ」

「まあ、それはどうでもいいんだけど。今更復讐とかどうでもいいし。取り敢えず、俺達に同行するという事で?」

「さっきからそう言ってるじゃん……。それに君について行った方が、闘いに参加できそうだしね。『聖騎士団長』のいるパーティーとか面白過ぎるよ」


「そうなったら、我が妃も起こすしかなくなるな。それに貴様を見送った娘に顔を合わせよ」


「……それぐらいは覚悟しています。私は、百年の時間に決着をつけたいんです」

「覚悟ができているのなら構わん。それでは全員馬車に乗れ」


 俺達は馬車に乗ったが、花園さんは自分の乗っていた馬に乗っていくつもりらしい。難儀なもんだな~。……百年の決着、か。


「俺には、重いな」

「ん?なんか言ったか?」

「うんにゃ。なんでもねえよ」


 セイバーとカリアは心配そうな顔をしていた。俺の独り言が聞こえたんだろう。俺は二人の頭を撫でて、微笑を浮かべた。


 帰り道にわざわざ心配をかける必要はないだろう。後顧の憂いなく、俺は馬車を発進させた。

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