第100話:VS先代『勇者』
俺達は空中に飛び上がり、剣をぶつけあう。下手なアクション映画でもこんな事は出来ないだろうというスケールだ。
「アハハハハッ!こんなに楽しいのは何時ぶりかな!?」
「くっ!強過ぎだろ!?いくら先代とはいっても……こんなに差があるなんて」
ぶっちゃけ相手が強過ぎだ。剣技も卓越している上に、この圧倒的な魔術。どれだけ修行を積めば、こんなに強くなるんだ!?
俺はそんな事を考えながら、剣戟を放ち続ける。だが、観客席に張ってあるバリアに激突した。後ろのバリアにひびが入った。
「クロッ!」
「!」
後ろを見ると、アリシアが心配そうな顔をしていた。他の皆も大体そんな感じだ。
「心配すんな。お前の男はこんなとこでへばるような奴じゃねえよ!」
「クロ!負けたら許さないからな!」
「上等だ!」
「まだそんなに気力があるんだ?」
「楽しみでしょう?」
「確かにね。さあ、次は何を見せてくれるの?」
「おいで。俺の愛しい精霊・マクスウェルよ」
俺が手を振り上げると、指輪からマクスウェルが出てきた。
『やれやれ。今日はよく呼ばれる日だな?』
「すまんな。だが、今回は戦闘に参加してもらうぞ」
『分かった。相手はあの娘か?』
「ああ。先代の勇者様だそうだ。十分戦えるよな?」
『誰に訊いていると思っているのだ?当然だろう』
「上等!それじゃあ、力を貸してもらうぞ!『聖痕』最大駆動!」
俺の上半身から七色の光が奔る。そして俺はそれが完全に温まった所で、俺は史上初の試みをした。
「憑依装着。来い、マクスウェル!」
『聖痕』が奔る俺の身体の中に、マクスウェルが入ってくる。そしてとんでもない力が流れ込んでくる。俺の身体でも受け止めきれるか分からない力が。
「ウオオォォォォォッ!」
「ば、馬鹿な……!?そんな事をすれば、体が持つ訳が無い!」
『無謀な試みもいい所だろう。すでに体に「龍神」の力を取りこんでいるというのに、さらに『始祖精霊』の力を取りこむ等……死ぬ気なのか?』
「無謀上等!俺の事を見ている大切な家族の為にも!そして何より俺の為に!こんな圧倒的な勝敗を受け入れてたまるかよぉぉぉぉっ!」
俺の身体からとんでもない波動が流れた。そして俺の身体を包んだ七色の光は、さらにその光をより強めた。そしてその光が消えた頃には――――




