第97話:SSSランカー
午後から準決勝と決勝を行う、という事で俺達は昼食を取っていた。もちろん他国の大臣たちが食事の誘いをしてきたが、全部断った。
わざわざ昼食に他の国の王と堅苦しい飯なんか食えるか。どうせ大方、自分の娘とかを紹介してくる気なんだろうし。まあ、仕方ないのだろうけど。
「……事前に飯を作っておいて本当に良かった」
「有名税ってもんだろ?ちょっとは我慢しろよ」
「お前もその内同じ目に遭うからな。覚悟しておけよ?」
「うへえ、怖いな。そんなに他の国と交流なんか深める気ないんだけど」
「そりゃあ、俺も一緒だよ。必要ならば、別にやぶさかじゃないけどな。俺の名前は大きくなるだろうかな。結構仕事とか舞いこんでくる気がする」
「はあ~。今更だけど、けったいな事しちまったんだな。俺達」
「そうだな。……ところでそこの貴方は、何時までそこに隠れているんです?それに周りにいる方々もばれていますよ」
「「「!?」」」
俺が茶をすすりながらそう告げると、柱の影やらいろんな所から大体十三人ぐらいかな?人が出てきた。アキも分かっていたようだけど、他の皆は驚いていた。
「貴方方は……確かSSSランカーの?」
「へえ、あの距離でしかも顔まで記憶したんだ?」
「まあ、不躾に始まる前から闘志をぶつけてくるような方々の顔を覚えない訳にはいきませんからね」
「……言うじゃないか」
「自業自得でしょう?ところでこのクッキーいかがですか?」
「あたしは貰う~」
「俺は遠慮しておく。甘いのはあまり好きではない」
そんな感じで貰う人も貰わない人もいたんだが、貰った人には結構評判が良かった。俺としては作りなれた物でしかないんだが。ホワイトデーの時とかに作らされた。
まあ、その時は喜んでくれる人も多かった。大半はアキに渡しておいて、アキに配らせたんだが。渡された子の中には、泣いて喜んでいる人もいた。大げさだろうとさすがにその時は思った。
「私達が見たところでは、貴方が今大会の優勝候補筆頭なんだよね」
「……そんな事を軽々と口にしていいんですか?」
「いいの、いいの。ここには結界が張ってあるしね。それに、私たちは興味があるんだよね。君が優勝したら一体誰と闘うのか」
「普通にトップランカーさんに挑む気ですけど?」
「……マジで?近年稀に見る逸材だな。そう言われてますけど、どうするんですか?トップランカー殿?」
「なにが……?挑まれる以上、本気でやるだけ」
「おお?まあ、最近は逸材とも呼べる存在がいませんからね。……そういえば、君はどうして大会に出たんだい?」
「……訊いてないんですか?大会の運営委員から」
「うん。何も訊いてないよ。ぶっちゃけ、あまり興味が無かったからね。君の姿を見るまでは」
「話を聞くよりは現物を見た方が分かるでしょう。――――マクスウェル」
俺の指輪が輝きだし、その輝きが無くなる頃には一人の女性が立っていた。はい、マクスウェルです。まあ、知っていたメンバー以外は驚いてたんだけど。
「し、始祖精霊……?それじゃあ、君は……」
「最初の契約者ですね。他にも大精霊と契約してますけど。……どうしたんです?皆さん」
「き、規格外過ぎる……。私もそこまでは出来ないわよ!?」
「そう言われましても……。出来る物は出来るので」
「しかもさっきの試合で『氷』の術も使ってたし。もう君の身体は何?とんでもないびっくり箱ね」
「関係ない。私たちは挑まれれば戦う。ただ、それだけ」
「……それもそうだな。さて、我らはここで失礼する」
「はあ、分かりました。それでは」
「君と戦える日が来るのを楽しみにしているよ」
他の人達も同じような事を言いながら去っていった。俺はそれを見送った後、柔軟運動を始めた。一緒に話したけど、やっぱり凄い。一部の隙もなかった。
あんな人たちに戦えるのを楽しみにして貰えているとは……ちょっと自分を褒めたくなった。俺は上機嫌で、体を温めた。




