第2章 目が覚めると
目を覚ますと、私は何やらフカフカした所に寝ていた。
頭の方にも、そのフカフカが積み重ねられ、体の上には、サラッとした布が掛けてあった。
「ここは……?」
ここがどこだかわからなかった。考えても、何もわからない。
見回してみると、周りは真っ白で、私の後ろには透明な壁があった。
危うく顔面からぶつかる所だったから、少し警戒気味だ。
それに――
「私…どうしてここに?」
記憶が……ない。ただ思い出すのは大切な人がいたことと、自分の名前だけ。
私の名前は…リリア。
刹那、凄まじい殺気を感じ、鳥肌が立った。
「熱…い……っ!!」
手の甲に、痣があった。それは鳥のようであり、また、剣にも見えた。
甲が、熱かった。まるで、業火で炙られているみたいに。
私は手首を摑んで、ぐっ、と力を込めた。手が、真っ赤に染まる。
しばらくそうしていた。真っ赤な手は、徐々に白く、青く変色していく。
手を離すと同時に、熱さは消えた。手の色も、元に戻りつつあった。
痣は消えない。だが、熱くなくなったのでとりあえずホッ、と一息つく。
「ん……」
右隣で声がした。
今まで、自分のことしか見えなかったが、ことが収まってみると、両隣には木で作った
寝床があり、男が2人、それぞれの寝床に転がされていたのだ。
男が目を開ける。
「……」
私と、目が合った。じぃ…と、睨み合う。
まったく、分からない。
第一、こいつはなんでこんなところにいるんだろうか。
「あんた……、誰?」
「私が聞きたい」
お互いに、何も覚えていないようだ。となると、期待は左の男だ。
私は、何か覚えていることを願った。
「ところで。お前、名前は?」
私は男に尋ねた。
「名前…なんだっけかな。たぶんバティスト、だ。バティとでも呼んでくれ。それしか覚えてない。というか、お前さ、名前を聞くなら、普通自分から名乗れよな」
バティストは肩をすくめた。確かに、自分が名乗らないのは失礼に当たる。
「すまない。つい…な。私は……リリア。バティ、お前良く喋るな」
私は飽きれた。こんなに喋る奴は他にいないだろうと思った。
「そうか?そんなに喋ってないと思うぞ、俺は。お前が無口なだけなんじゃないのか?」
「そんな分けない。バティが喋りすぎなんだ……多分」
不安になった。バティが言っている通りかも知れない。
私は……無口なのか?