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第七部




 少しの沈黙が彼らの間に流れる。

やがて口を開いたのはライトリークであった。


「じゃあ……。その変革をするために、お前は何をするつもりだ?」


「世界を滅ぼすといっただろう?」


「それは聞いた。俺が知りたいのは具体的に何を成すか、と言うことだ」


「…………」


フレイアは少し考え込むようなしぐさをすると、組んでいた足を一度直し、今度は逆に組みなおした。

ライトリークは黙って彼女の発する言葉を待つ。


「先程、私は世界に終止符を打つといった。そのためには、私は人間世界の絶対的な勢力と、魔界の最大勢力をうち滅ぼさなければならないと考えている。


だが、今の私達では最大勢力を倒すには圧倒的な力の差がある。たとえ私が知に優れ、お前が天賦の才に恵まれていようともだ」


―――今、ちゃっかり自慢をしなかっただろうか?

そんな疑問が頭を駆け巡ったが、あえてライトリークは無視することにする。


「故に、まずは私達と共通の願いを持つ仲間を集めようと思う。最初はお前の仲間も一緒にこの作戦を決行するつもりだったのだが……。


どうやらお前は仲間に捨てられたらしい」


ふふっ、と鼻で笑う魔王。


「捨てられたんじゃない!! 俺の仲間達には……俺よりも優先すべきことがあったんだ!」


「ほう? じゃあ魔王討伐よりも優先すべきことは頭の悪い勇者を捨て、カジノで遊ぶことか?」


含み笑いをしながらテーブルの上においてあった水晶を見せてくるフレイア。

それを覗き込むように見ると、金髪の見覚えのある優男のような下種が、女に囲まれながら金を賭け、ゲームをしている光景が入ってきた。


「く……っ、フェラルめ……」


そう、彼の名はフェラル。王都を出るとき共に旅を始めた仲間の一人だ。

弓矢の達人で、王都の中でも一、二位を争うほどの腕前。

別れ際の言葉は『僕は少しここで休憩していくよ。後で追いかけるから、先に行っててくれたまえ』


「あんの女っタラシが……!」


「どうせ見捨てられたのだろう。こんなむさ苦しい集団と見ていてイライラするほどの勇者には付き合ってられない、とかなんとかで」


「ぐっ……そんなはずは無い!……はずだ」


「なんだ。確信も無いのか。安い友情だ。……だが、お前と同じくらい、気配には敏感そうだ」


そう呟いた瞬間、少し冷たい視線でフェラルが水晶を通してこちらを向いた。だがそれもほんの一瞬で、本当に自分を映し出す何かに気づいたのか、それともたまたまだったのかは分からない。


そもそもこの水晶の仕組みすら分かってはいないのに、ライトリークにそれが分かるはずもなかったのだ。

彼は一つ首をかしげると、もう一度水晶にうつる外見優男を見た。


整った金髪碧眼。一緒に旅をしていたときもそうだったが、彼の、女からの人気度はこちらが羨むどころか、あきれるほどだった。

彼は自分をフェミニストだのと評していて、女性には基本的優しい。そのせいか、戦いになっても相手が性別上牝となると、手は出さない。少し困った性格の仲間だった。

今もそのような性格は続いているのだろうか。


「さて、と……」


ライトリークが食い入るように水晶を見ていると、フレイアが一言呟きながら立ち上がった。

そして視線はずらさずに、話していたときよりも少し大きめな声をあげた。


「メリア、いるのだろう? そろそろ盗み聞きなんてやめて出てきてはどうだ?」

「…………」


フレイアがいうと、ライトリークがクローゼットの方を見た。

ライトリークは、どうやらメリアとよばれた人物の存在に気づいていたらしい。あえて言わなかったのか、それとも面倒くさかったのか。


ガタッ、と音を立ててクローゼットが開く。

中から出てきたのは……。


「あら、気づいていらっしゃいましたか?」


女性にしてはわりと高めな身長の、メイド服を着た人。黒髪を上のほうで団子型にまとめていて、笑顔でこちらを見ていた。


「お前はいつも神出鬼没だからな。16年も一緒にいれば嫌でも分かる」

「そうでございますか」


なんてこと無い会話のようにして受け流される。

だが、ライトリークには一つ解せないことがあった。


(なぜ……クローゼットから出てきたんだ……? それも、フレイアの服をかぶって!)


そう。クローゼットはそれなりに広いから、隠れていたといえば頷ける。

だが、出てきたときの彼女は、自分の首もとを黒い服、おそらくフレイアの上着だとおもわれるもので覆っていたのだ。それもおもむろに臭いをかいでいる。


「フレイア様。私のことはおきになさらず、続けてください」

「あぁ……もとよりそのつもりだ」


普通に、それが当たり前だったかのように話しを進めようとするフレイア。


「………!!」


ライトリークは目の前の変態のような女性を横目に、なぜツッコミをしないのかと全力で叫びそうになった。


「なんだ? なにか言いたそうだな?」


「言いたいことはたくさんあるんだが!」


「そうか? 言ってみろ」


「…………っ」


それができないから困っているんじゃないか―――ライトリークはなんとか言葉を飲み込む。


(このメイドは変態か? なんて聞けるわけない!)


変人を見るような目でライトリークがメリアを見つめていると、彼女はその視線に気づいたのか、ニッコリと微笑みかけてきた。







今後も変態が増える予定です(笑

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