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第二十八部





 「――――と、いうわけだ。リネイラント、手を貸してくれないか?」



ここまで来た経過を順を追って説明するライトリーク。

やはり、フレイアが魔王であることは伏せて話を進める。


今は少しでも多くの戦力が必要であることを告げると、彼女はパァっと表情を明るくした。



「もちろんだよ!」


「本当か!?」


「うん! それに、ライトお兄ちゃんがあたしを頼ってくれたの、初めてだから」



赤く染まるリネイラントの頬。ライトリークが嬉しそうに「ありがとう」と言う。


また一人、戦力が増えた。それも、あっさりと。

フレイアはリネイラントがライトリークを慕っていることを、一目見た瞬間に察した。


つまり、これはライトリークの人望のおかげとも言える。


しかし、リネイラントを見て微笑んでいるライトリークを見ると、納得したくないという気持ちもあるわけで。



「ライトリーク、笑い方が気持ち悪いぞ。成人向けの本を見たときの笑み方だ、それは」



つい、悪態をついてしまう。



「は…………そんな笑い方してねぇよ! ってかそれどんな笑い方だよ!」


「こう、ニヤァっと、な。リネイラントに欲情するのは勝手だが、周囲の視線も考えろ」


「いやいやいや! 意味わからないから!」



ライトリークの叫びと同時に、高かった陽は沈む。












    ▼▼▼












「では、明日、追撃隊を一隊、シンガータ国へ向かわせる」



若い、男にしては高く、女にしては低い声色が室内全体に響いた。

ローブを深くかぶった人物は、周囲を見回す。


ローブの人物を筆頭に、長方形の机の周りを囲むようにして、十席ある中、六人が席についている。

三人は欠席。後の一人は、空白の席である。


他に意見がないと分かると、ローブの人物、レイフォント・アルデリア・ジューリオは深くため息をつき、解散を宣言した。深くといっても、周囲の人間に気づかれない程度にだが。




本来、三日前に行なう予定だった十貴族会議は、急遽先延びした。


理由は何個かあるのだが、一番はシンガータ国とリアドリルが、ごく少数とは言え、戦いを開始したことだ。

御互い小手調べなのか、普通なら考えられないほどの少人数で行なわれた戦争だ。

いや、戦争開始の合図のと言った方が正しいだろうか。


そのことで、自分の領地を気安く離れられなくなった。



それから三日たち、落ち着いたと判断したジューリオが貴族を招集したのだ。



もちろん、議題はシンガータ、レディナルス、リアドリルの事が真っ先に上がった。


多少の距離があることから、こちらに被害が出ることはまずないだろう。

結果、国境付近の領主には、何があっても対応できるような準備をすることを命じるという結論に至った。


これは、ジューリオの予想通りでもある。



しかし、ジューリオが最も危険視したのは、そのことではない。


八神・ライトリークの件だ。


風の噂では、彼は現在シンガータ国にいるという。

そして、魔族と共に旅をしていると。



人間と魔族の間には、決定的な亀裂がある。


大昔から魔族は人間を襲い、人間は魔族を気嫌った。

魔族の大半は北側に住んでいるが、時折人間の住む町に下りてきて町を荒らし、人を襲い、帰っていく。


これまでのことを見直しても、魔族によって出された被害は決して少ないとは言えない。


そんな魔族と、八神・ライトリーク含む人間が行動をともにしている。



八神家は代々、国に忠実に貢献してきた家柄で、歴代の王も信頼をおいていた。


疑うことは心苦しい。

だが、個人的な情のために犠牲が出るということは許されない。



十貴族会議で、八神の話題をしたところ、「追撃隊を送り、八神等の行動を観察。国に被害を及ぼすことを企んでいるようなら、早急に処分」となった。

彼の実の父でさえも、その案を否定しなかった。

彼には彼なりの考えがあるのだろう。



数ヶ月前、半端者の豪族が彼をたくし上げて勇者と名づけた。

彼は、ジューリオが見た限り、単純――――いや、正直者だ。

豪族等の言葉を真に受けたライトリークは魔王を討伐するために旅にでた。


それを知ったのは、ソレイン村で事件が起きた五日後。


もっと早く知ることが出来れば、こんなことにならなかったかもしれない。



ジューリオの思考に不安がよぎる。




―――――――魔族との全面戦争にならなければいいのだが。










ここで、第三章が終了します。ああ、がんばったな自分。

黄昏つつも、今後の展開を考える藤堂でした。


誤字、脱字、感想などありましたら教えていただくと幸いです。

今後も宜しくお願いします!

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