第二十三部
前半クロイス側、後半ライトリーク側で話を進めます。
兵と兵のぶつかり合い。
金属と金属がぶつかり、甲高い音が当たり一面に響き渡る。
クロイスは襲い掛かってくる敵兵を楽々と打ちのめしながら、あたりを見渡す。
シンガータ国兵は皆、2、3人の敵に囲まれ、一人に集中することができていない状況だ。
――――戦争での戦略、か。
クロイスは心の中で小さく呟いた。
人数が完璧に勝っているとき、相手一人に対して、自分たちが数人で周りを囲む。
囲まれた相手は全方面に気を配りながら戦わなければいけないため、気力の消費も多い。そしてなにより、囲まれた人間の隙をついて、手の空いている者が攻撃を仕掛けることにより、すぐに片がつく。
それを繰り返すことにより、自分達の犠牲は少なく勝利を収めることができる。
その行為を、リアドリルの兵はマニュアル通りにやってみせたのだ。
後方では騎兵が弓を構えている。
そんな愚か者はいないだろうが――――逃げようとしようものなら、矢の雨に殺されるだろう。
クロイスは不安を覚えつつ、自分も目的である人物を探そうと、視線を上に向ける。
だが、探すまでもなく、彼はそこにいた。
《紅魔・ドラベル》
彼は獣の咆哮のごとく大声をあげ、近くにいる兵を、まるで虫けらのように殺しにかかっている。
敵も味方も関係なく、だ。
一般兵よりも頭二つ分大きな体躯をした男は、軽々と近くにいた兵の頭を鷲掴みにする。
するとどうだろう。
兵の頭は沸騰時のお湯のようにブクブクと腫れ、鈍い音をたてると同時に破裂した。
その周囲には血と、得体の知れない何かと、首から上の消えた人形のような体が巻き散らばされている。
「何よ…………これ!?」
目の前でおきた、頭部の破壊。
分けもわからぬまま、吐き気に襲われる。
「う……ぁ……っ!?」
左手で口元を押さえていると、背後から敵兵が襲いかかってきた!
一瞬反応が遅れたせいで、相手の剣先が腕をかすめる。
だが、なんとか回避はできた。
それにこの程度の怪我ならば、問題ない。
冷静さを取り戻したクロイスはそう判断し、見事な剣さばきで相手の鎧の隙間を一突きする。
あまりにもあっさりしたその行為。
胸を貫かれた兵士は刹那の痙攣の後、ピクリとも動かなくなった。
彼女はそれを確認すると、胸に突き刺さした剣をすばやく抜く。
刃についた鮮血が、地に飛び散った。
戦わなければ、殺される。
クロイスの頭にはその言葉がくっきりと浮かんできた。
目の前ではまた、新しい兵が《紅魔・ドラベル》に殺されそうになっている。
冷汗が頬を伝った。
彼女は小さく深呼吸すると、手に力をこめ、叫んだ。
「うぉおおおおおおおっ!」
▼▼▼
ライトリークは驚くべき光景を目にした。
リンネラントのいるはずの草原。
彼女の住むべき家のある場所が、戦場になっていたのだ。
彼女の家は何処か。
それはライトリークも、フェラルも把握していない。
ただわかるのが、彼女はこの草原の何処かにいる、ということだけだ。
それはフレイアの水晶でも確認しているため、確かだ。
しかしこの騒ぎのなか、どうやってリンネラントを見つけ出すのか。
戦場にはあと数百メートル、距離がある。ここにいては戦争の被害が、自分たちにも及ぶかもしれないのだ。
「フレイア、どうする?」
ライトリークは決断をフレイアにゆだねた。
「…………」
だが、彼女からは返事が返ってこない。
不審に思ったライトリークが彼女のほうを見ると、彼女はうつむき、何かを深く考えているようだった。
すると、
「うぉおおおおおおおっ!」
女にしては少々低めの叫び声が聞こえてきた。
反射的にそちらを見ると、他の兵とは少々違う鎧を装着した女が、細剣を構え、大男に向かって突き進んでいる。
ここからではよく見えないが、相手の男はなにか、一般兵とは異質の存在に見える。
女はおそらく、隊長格だろう。だが……。
「あの女、殺されるぞ」
フレイアの一言に、フェラルが頷く。
と、同時に、ライトリークが野を駆け出した!
その鍛えられた足は、常人ならぬスピードで戦場に向かう。
背後では「やはり行くか」というフレイアの声が風に飛ばされた。
少々文体が無理やりな………いえ、頑張ります。頑張って文章力とストーリー構成力を身につけて見せます!(燃える闘志)
ここまで読んでくださりありがとうございます。
不定期更新ですが、今後も読んでいただけると嬉しく思います。
また、誤字、脱字、感想などありましたら、感想、メッセージ等で教えていただけると幸いです。