第十五部
兵と村人等が各々に解散した後、けが人を集めて一つの家の中で治療を始めた。
一番部屋の大きい家に上がらせてもらって、フレイアとメリアが治療魔術を使う。
それを手伝うように、戦いの時は陰に隠れていた女子供等がせっせと包帯や薬を用意したり、食事を作ったりしていた。
メリアはフレイアの隣で怪我人の外傷を治していく。
だが、メリアに内傷を治せるほどの知識と魔力は無かった。
酷い人では内臓に傷を負った者や、骨が折れた者、脳震盪を起こしている者までいる。
魔術は何をどうして、どうしたいのか、という根本的なことがわかっていないと正確に発動しない。
その点フレイアは知識をしっかりと持っているため、魔術に関しては強い。
淡い光をその美しい手から発すると、見る見る怪我を治していくフレイア。
治療が終わり、完治ではないしにろ、怪我の治った怪我人はフレイアに「ありがとうございます」と何度も頭を下げ、お礼を言った。
それに頬を染めるフレイア。
違う種族に感謝をされる。
それは彼女にとってはとても嬉しいことではないのだろうか。
命を無造作に扱うことをとても毛嫌いしているフレイアは、新たに、真剣に治療を開始する。
そんな光景をメリアはただならぬ熱のこもった瞳で見ながら、思う。
―――なんて愛おしいのでしょう。
▼▼▼
場所変わって、代表家。
状況をしっかりとは把握していなかったライトリークだけが、フェラルと、もう一人の女性と一緒に別の家で状況説明を受けていた。
今まで領主が村人に対し酷い仕打ちをしていたこと。
女性の―――カリナの父親が殺されたこと。
そのことから村人達が領主を殺しに行ったこと。
領主を殺すことに成功したはいいが、最後に残した領主の言葉、
『必ず村人を皆殺しにしろ!』
その命令を守り、兵等が村人達に襲い掛かってきたこと。
そして村人達は自らの命を守るために反抗し、まともに訓練を積んでもいないと言うのに兵等に立ち向かったこと。
大方の成り行きを把握したライトリーク。
だが彼はそれと別に、物珍しそうな目でフェラルとカリナを見つめる。
『綺麗』と言うよりは『可愛らしい』の言葉が良く似合う、小柄な女性。
こう言っては何だが、ライトリークの知るフェラルの趣味にはかけ離れている気がした。
フェラルの趣味は美人で、大人な女性。
それも主に胸の大きい、スタイル抜群な女性だったはずだ。
そう考えると、カリナは少し貧相な、可哀想な体形をしている。
「はぁ……」
頭の中で無意識にフレイアと比べてしまい、ため息がでる。
すると何かを察したのか、カリアが少しむくれながら言った。
「何にため息をついたのかはわかりませんが、すごく馬鹿にされた気がします」
可愛らしい、よく通る声だ。
「別に可哀想とか、そんなことは思ってないから大丈夫だ」
「可哀想って思ってたんですか?
あとフェラルさんと交互に見比べた後、私の胸を見て哀れみの表情を浮かべるのやめてください!」
「あぁ……ごめん。
ただ、フェラルの好みがかなり変わったことに驚いていただけなんだ。なぁフェラル」
突如振られた話にフェラルは答えた。
「なんで僕に話を振るのかな。
悪気はないんだろうけど……どんどん死亡フラグを増やすのやめて欲しいな、ライト。
これでも彼女は繊細なんだ」
「これでもってなんですか、フェラルさん」
「え、いや、別に……!?」
最後に墓穴を掘るのはフェラルだろう。
そう思ったが、ライトリークはあえて何も言わずに二人の微笑ましい光景を見つめる。
今までたくさんの女と遊んでいる姿は見てきたが、彼がカリナを好きなのは、どうやら本気のようだ。
証拠に、ライトリークと別れる前のフェラルと少し雰囲気が違っている。
それを変えたのはカリナだろう。
彼女は父を殺され、笑っていることなど不可能に近いはずだ。
しかしこうして笑っていることができている。
芯の強い女性だ。
そう思わずにいられなかった。
ライトリークが一つ深呼吸をすると、フレイアに頼まれた事柄を伝えようと言葉にする。
「俺達がこの村に戻ってきた理由は、フェラル等を仲間に率いるためなんだ」
この部を書いていて思いました。
あれ……この作品のジャンルって恋愛だっけ?
読んでくださってありがとうございました。