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第十三部







 

 「え、なんで?」


「…………?」



フェラルとライトリークの頭上にはハテナマークが今にも浮かび上がろうとしている。


突然今まで戦っていた人達が皆眠りについているのだから、そういった反応も仕方がない。

ただ、フレイアはそう思ってはくれなかった。



「ド阿呆!」


「うっ」



いつの間にか後ろにいたフレイアが本気でライトリークの頭を殴る。

そして、眉間にしわを寄せながらライトリークに説教をし始めた。



「状況の説明を聞く前に民の戦いを止めろ馬鹿者が!

お前達が言い合っている間にも死人が増えていくのだぞ!」


「す、すまん」



面食らったライトリークは、気まずそうに目を逸らす。

確かに、今ここで戦いが進んでいるというのに、フェラルにのんびりと状況を聞いている場合ではなかった。


一刻も早く戦いを止め、怪我人や死人を減らすことが先決で、状況理解はその後からでも遅くはない。

感情に流されるのはライトリークの悪い癖だ。


と、そこに取り残された人物が一人。

フェラルが物珍しそうにフレイアを見ていた。



「誰だい?」


「俺の仲間。クリフォンス・フレイアだ」


「へぇ……ずいぶん可愛らしい女性じゃないか。

初めまして、フレイアちゃん」



と、キザっぽい笑みと同時に差し出された手を、フレイアは握り返す。

普通に握手を交わす二人。

フェラルもこの女が魔王だなんて、少しも思ってはいないだろう。



「初めまして、フェラル・リルチルド。

ところで、今の状況を説明してもらってもいいだろうか」


「あ……すまない。他の者にはとても言えるような事柄では」


「重々承知だ。

というか、大半はすでに知っているのだがな」


「へ?」



突拍子もない彼女の言葉に、フェラルは声を漏らした。

なぜ、ここにいなかったはずなのに、知っていると言えるのか。

フェラルの疑問は当然といえる。


フレイアは旅に出た後、夜の時刻など、休憩時に水晶を通してここの状況を観察していたのだ。

だが、それを口に出すことはなかった。



「反乱の理由も、体外は把握している。

聞き方が悪かったな。


今、ここで戦っている者たちを静める実力がお前にあるのか?」



フレイアの瞳が、鋭く光る。

それは16歳の少女にしてはあまりに重みのある言葉だった。


その一言で、すぐにフェラルは悟る。


この少女は普通に、幸せに過ごしてきた女ではない、と。

人の―――いや、生き物の命の重みをしっかりと理解している目だと。


意を決したように、フェラルは表情をかえ、言葉を発する。



「僕達は領主の首を取った。

自分達の命の危険がなくなれば、戦う必要もなくなるだろう」


「では、この兵等が静まれば、この村の者達も静まるのだな?」


「おそらく」


「そうか。では、ライトリーク」


「へぁ!?」



突然振られた会話に、素っ頓狂な声をあげるライトリーク。

自分には理解しがたいことだと思い、草いじりに行動を移していたせいで手は土だらけだった。



「…………別にするなとは言わないが、もっと周りの言葉に耳を傾け、状況を把握したらどうだ?」


「そうしようとしたらすでにフレイアが知っていて話を飛ばしたんじゃないか!」


「まぁ、否定はしない」


「むっかつくなぁ、お前」



無表情で告げるフレイアに、ライトリークは歯をかみ締めた。

言葉では勝てない。

そんなことは魔王の城で十分すぎるほどに理解している。

それ故か、これ以上続けようとはしなかった。


パン、パン、と二度ほど手についた土を払うと、もう一度フレイアのほうを向き、先ほど言おうとしていたことを問う。



「で? 

俺に何をしろって言うんだ?」


「あぁ、お前、十貴族だったな。

だったら―――――」








今日で2011年が終わり、2012年が始まります。

皆さん今後もよろしくお願いいたします!

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