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第九部








 考え込んでから数分、フレイアは真直ぐにこちらを見据え、メリアもこちらを凝視していた。

フレイアは純粋に回答を待つ。だが、メリアは忌々しいものを見るかのごとく痛々しい、冷たい視線を容赦なくぶつけていた。


それもそのはず。

己の愛しい・・・主君がこれだけ懇願したにも関わらず、まだこの勇者は優柔不断に決断していないのだから。


しかし、メリアとて彼がそう安易に決断を下せる立場でないことは承知していた。

「勇者」という立場は押し付けられたものだと前もってフレイアから聞いていたのであまり気にはしていなかったものの、レイフォント大国の十貴族の一人、の息子。


レイフォント大国といえば、人間世界でも多大な影響力、権力を持っている国。

世界で一番大きいと言われるクレイアント大陸の三分の一の領土をレイフォント大国が占めている。


フレイアの目的に「人間世界の頂点を滅ぼす」という経過は必須。つまり彼は、フレイアと手を組めば頂点の一つとも呼べる自国を自ら敵にまわし、その上足蹴にしなければならないということになる。


だが、今のこの世界が腐っていることはライトリークも思っていたことらしい。

証拠に、今彼は手を組むか否かで相当迷っている。


その様子を真剣に見るフレイア。



「フレイア様、お飲み物など如何でしょう?」


「あ……いや、今はいい」


「左様でございますか」



どうやらフレイアは、ライトリークが決断を下すのを根気強く待つらしい。

チッ―――と、メリアは心の中で舌打ちをした。



「本来ならば早く決断して欲しいところなのだが……。急だということは分かっている。一晩時間をやろう。真剣に考えてみてくれ」



フレイアは言うと、メリアにライトリークの寝る部屋を用意させた。

これは城の魔物たちが騒ぐかもしれませんね―――メリアはそんなことを考えるが、素直にフレイアの命に従った。











   ▼▼▼










 用意された、個室。

フレイアの部屋とはうってかわり、対照的に白いベッドと、灰色の床。あまりつかっていない部屋だったのか、少しほこりっぽかったが窓を開けるとすぐに埃は消えていった。


腰に携えていた剣をベッドの横に立てかけると、ライトリークは我が身をベッドに沈ませた。

勇者が魔王の城で寝るなど許されることなのだろうか、と考えるが、今は非常事態。


今までの会話でフレイアが人間消滅を狙っているわけでも、世界を支配し私利私欲に命を弄ぼうとしているわけでもないことを知った。


それに、彼女の目的は先の先にある『平和』だ。

それまでの過程はどうやら一筋縄ではいかなそうだし、むごい血が流れることにもなるだろうが。



―――いや、本当に惨いのは私利私欲に弱きものの命を軽々と摘み取ってしまう意地汚い権力者達を自由にさせておくことか。



今のレイフォント大国は、強大な力を持つネアリフェイス大国やディシフェイン帝国と協定を結んでいるだけあり、三大強国と呼ばれている。

それだけ力があるということは、敵にまわすととても厄介だということだ。


フレイアがいくら魔王であろうと、レイフォント大国等相手に勝てる勝率が限りなく低い。

それに自分はレイフォント大国に服従している一貴族だ。


自国を裏切るような行為が簡単にできるはずが無い。


ライトリークは悩んだ。

今までのことをたくさん思い出し、迷う。


家のこと。

国のこと。

自分の立場。

一緒に(途中まで)旅をしてきた仲間のこと。

旅の経過のこと。

フレイアと話した数々のこと。


フレイアの目的は大きく、無謀だ。

しかし彼女は人種を超えて弱者にも笑顔を咲かせようとしている。

彼女の言い方は所々横暴だったが、それでも彼女の瞳には信念がある。


そして、暗い闇がある。

あの年であそこまで世界を変えたがるのもなにかそれに関係しているのだろうか。


それはライトリークには分からない。


だが、彼女の目的や考えに『間違い』というものは存在しない。

ただ、それが『正解』かと聞かれれば、即座に頷けるものではなかった。


しかし――――――。





 一晩明けると、フレイア、ライトリーク、メリアの三人はフェラルを仲間にすべく、朝一に塔を出る。


フレイアは最初嬉しそうに頬を染めていたが、やがて元の表情に戻り、それに対してライトリークはなにかを決意したかのような、引き締まった表情をしていた。








ここでおそらく第一章がおわりです。お気に入り登録、評価、感想、拍手などありがとうございました!

今後もよろしくお願いいたします!


ちなみに最後の描写ですが、メリアはもちろん愛おしそうにフレイアを見つめていたと思います(笑

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