9月から頑張ろうと思ってる作品
完結してない話ばっかりですいません^^;
眼前に広がる虚無の空間。
漆黒、暗黒、深淵の中に瞬く小さな光。
重力と言う鎖から解き放たれ、ただ夢現にまどろむ感覚。
無重力っていうのは落ち続けている状態らしいが、私はこの感覚が好きだ。
『落ち続けている』
まさに、私に相応しい状態だ。
落ちる、堕ちる、墜ちる。
ああ、早く、死なせて欲しい――――
っと、またネガティブな方向に思考が偏っているのを感じて、体を動かしながら思考を切り替える。
右腕を動かす。
同時に、巨大な機械の体躯が動く。
画面を見ながら動作の確認。
何度も行った、これから何度でも行う動作確認。
駆動系―――異常無し。
制御系―――異常無し。
武装系.........
メインウェポン―――異常無し。
サブウェポン―――異常無し。
近接系―――各種異常無し。
.........オールグリーン
何度も見た青い表示。
飽きた…………
私が居るのは上下左右1光年の広さを持つエリア『A24』。
その中心部の魔道機動兵のコックピットに居る。
100年前―――正確には98年前、宇宙から飛来した隕石に生物のDNAらしきものが発見された。
そのDNAを解析して行くうちに、研究員が暴走。
最終的には非人道的な実験やらなんやらをやったらしい。
更に何の奇跡か偶然か―――この場合は不運や不幸と言っても過言ではない―――隕石から採取したDNAの人体に移植する事によって、ヒトは更なる進化を遂げる事になる。
魔人。
DNAを移植され、低確率ながらも生き残り『異能』を手に入れた新人類とも言うべき存在。
魔人たちはその勢力を急激に伸ばし、半世紀ほどで個体数が旧人類と同程度にまで増える事になる。
それは言うまでも無く争いの火種となり、あわや世界大戦にまで発展するかに思われた。
しかし、
私達、いや、全人類は考えるべきだったのだ。
宇宙から飛来した隕石。
何億光年先から旅をしてきたDNA。
それが、何処から来たのかを。
世界大戦まで後何日。
そのぐらいの瀬戸際で(幸か不幸か)宇宙から蟲が地球に降り立った。
ハッキリ言って地球は宇宙人にかまけている余裕なんてなかったはずなのだが、蟲は地球に降り立つとともに地球人を攻撃し始めた。
もちろん。
旧人類、新人類の区別無く。
むしろ戦争なんてしている余裕が無くなった人類は、一致団結して蟲の脅威から地球を守る事になる。
なんて事になっていれば話は別だったのだろうが―――
旧人類VS魔人VS蟲
という、ごちゃ混ぜ状態に突入。
旧人類と魔人も表面上は手を組んだように見せかけ、裏では相手を絶滅させてやろうと足の引っ張り合い。
これでは勝てるモノも負けてしまうのは当たり前だろう。
まあ、手を組んだ所で勝てはしなかっただろうけど………
結局、人類は地球を追い出され、限られた宇宙空間での生活に身をやつすことになるのです。
それでもまだ、蟲の脅威を取り除いた訳ではない。
実際、蟲が何処から来ているのかだって分かってはいないし、種族間の抗争だって終わっては居ない。
しかし、ヒトは逞しい。
宇宙空間で生活するようになり半世紀程が経つが、その間に魔道機動兵の開発や、宇宙プラントの製造、コロニーの開拓などなど。数え上げればキリがない程に順応してきている。
そして、今私が乗っている魔道機動兵。
CPUを脳波とリンクさせて疑似神経経路を創りだし、自分の手を動かすように機械の手を動かす…………らしい。
私自身よく覚えていないのは仕方ない。
仕様書とか10冊ぐらいに分けられるんじゃね? ってくらいに分厚いし、講習だって半年間に詰め込みで覚えさせられて半分も覚えてないし。
ぶっちゃけ動けば問題ない。
機械がどうして動くかなんて気にしてたら3秒で死ぬのが、ヒトが『今』生きている場所だ。
最低限のことが分かっていれば問題ない。
つまり、動くモノは動く。
―――ピピピッ
「通信? こんな辺境に何の用だし」
―――ピピピッ
「はいはい、今出ますよ~」
―――ピピ
「は~い、こちらA24。デルタ01 識別コードも確認しますか~?」
『デルタ01もうちょっと緊張感を………相良少尉には言うだけ無駄でしたね』
視界の片隅に不機嫌な女性が映し出される。
セリア=K=赤羽。階級は曹長。
日本人とアメリカ人のハーフで、黒髪に碧眼、残念なことに純和風な体格で、和風美人と言えば聞こえはいいが、つるぺ―――
『左遷しますよ?』
「本当にやってくれるならありがたいんだけどねぇ」
『昇格させますよ』
「すいません勘弁して下さい」
私の同期であり機械関連の知識は天才的だ。
彼女の手にかかれば軍のファイアーウォール程度―――紙クズ同然だろう。
『昇格が嫌いな軍人ってのも珍しいわよね。給料は良いらしいわよ、大佐』
「大佐の話~? 交際迫られてるのは確かだけど………ねぇ?」
『お! 遂に確認が取れたわ。リークしよう』
「私には関係ないからいいわよ~」
楽しそうな表情の彼女にGOサインを出しておく。
噂が流れれば大佐の猛烈アタックも回避できるかもしれないし。
「ってか、なんか大事な話でもあったんじゃないの?」
『そうだったそうだった。更に昇格したくなかったら仕事してよね』
「繰り上げで無理やり少尉にしといて、更に昇格? 本当に勘弁してよ」
『はぁ……降格したいの?』
「命令違反で軍曹に戻してくれるほど人材豊富じゃないのは知ってんのよ~」
『まぁ、いいわ。A24救命信号。捜索と回収、よろしくね』
「はぁ? こんな辺境で救難信号って………中身腐敗してても知らないわよ? それにこの宙域の監視任務はいいの?」
『相良少尉も発言した通り、辺境ですから』(ニコ
そう、今私が居る宙域は辺境も辺境。
1世代前には賑わっていたらしいが蟲の襲撃に合い寂れた場所である。
『位置情報を転送します。回収任務よろしくお願いします』
「りょうか~い」
不真面目な返答を無視して通信が切れる。
まったく、真面目ちゃんだなぁ。
「かいしゅうだっけ?」
―――ピポン
「ああ、これか。面倒だな~、行きたくないな~」
ぼやきつつも転送されてきた位置情報に従い現地へと向かう。
幸い転移は使う必要が無さそうで助かった。
あれ使うとカロリー消費しちゃてお腹すくし面倒なんだよね。
「回収品はど~こかな~」
あっと、アレかな?
楕円形の小さな脱出ポットを発見。
サイズ的には中の人は3人が限界だろう。
随分新しいモノに見える。
誰かの悪戯って可能性も見えてきた………主犯は覚悟しとけよ。
「あーあー、こちら連合軍。救命ポットの中の人~たち? 居たら返事してね~」
『たす―――こ―――だけで―――け―――』
まっず、中に人居たっぽい。しかも複数。
「もう大丈夫ですよ。ポットとマキナを繋げます。その後すぐに転移しますので、多少気分が悪くなるかもしれませんが我慢してください」
『――――とう』
ありがとう………か。
ノイズで聞き取り難くても分かる言葉ってあるよね。
―――ピーピー
.........接続完了
「転移します」
異能を発動させ、機体が蒼い光を放つ。
光は救命ポットまで包み込み、光が収まると同時にその姿は消えていた。
後に残ったモノは虚無の空間だけとなり。
動くモノのない死の世界がまたそこに広がっていた。
他の作品もがんばります。
応援とか批判とかメッセージ待ってます。