1917 1 **
1915 2 **
最初こそ島の奪還には成功したが、最後の海上要塞奪還に苦戦していた。
奪還作戦始動事。第一陸軍強襲歩兵中隊は他中隊の先駆けのように進んでおり一つ目の島を奪取し、次の島も上陸奪取して無補給で三つ目の島も取り返した。
4つ目の島は他の島で準備を終えた海岸砲からの支援砲撃で帝国議会同盟軍を降伏させたものの、問題は6つ目の島だった…
5つ目までは連続して奪還は出来ていた、しかし他部隊や第一陸軍強襲歩兵中隊も損害は半数を上回っている。
海軍の艦砲射撃による援護があるにも拘らず最後の島にある要塞と、洋上プラットフォームを改造した海上要塞が非常に厄介である。
そこで中隊長 仲村は中隊員の名集る者だけを集めて夜に島内部から崩す事にした。
「ナクァムラ少佐殿、何故僕が?」
「他に負傷していない二等兵衛生兵科が居なかったからだ。モルヒネの扱い方は既に訓練で受けている筈だろう?」
「注入したら、目印ピンを服に差すのでしたか」
「よし…今から特殊上陸班に編入する。指定の場所に向かって合流してくれ」
手描きの地図で目的地に着いた彼は他の面々と挨拶を交わし手漕ぎボートで島の裏側に上陸するのだった。
「お坊ちゃん、暗いから足元の木の根に気をつけるのよ〜」
「シュトゥーベンさん…それはそうと、見たこともない武器ですね」
Model1917短機関銃(45prototype1915)
ジョン・トミーが個人で開発した45acp弾を使用する短機関銃の試作品。
今回の夜襲上陸作戦に御本人も技術少尉として参加している。
「今回は静かに対処したいところだな、減音器を装着しておけ」
「こ…この太くて長い…筒を……すか」
「トミー少尉、 Model1903用のは?」
「ヘルキャット二等兵…お前は取り敢えず戦う必要は無い、何故スリングフィールドを持ってきた?」
「狙撃されたらたまったモノじゃないので」
「それもそうか、ほらよ…スコープとサプレッサーだ。後でゼロイン調整しろ」
今回の戦闘になるかどうかは分からないけれど、参加兵にジョン技術少尉。
ライム三等軍曹にシュトゥーベン上等兵とデイトナ伍長、他部隊からはマック迫撃砲兵一等兵とフォラード伍長が選抜されて参加されている。
「フォラード、またそんな玩具を担ぎよって…」
「爺さん、玩具じゃねぇよ…協商から食料貿易で買い取ったジョーシャ軽機関銃だ。今では手に入らないから国産化を検討しているらしいな?」
フォラード伍長はジョン少尉に話を振るように目を合わせた
「はぁ…フォラード伍長、そんな産廃をまだ使っているのか」
「ゴミな訳あるか!ジョン!」
「その欠点を改善して試作した拳銃弾を使う機関銃があるじゃないか」
「だがまだその一丁だろ?こっちの方が軍上層部の技術研究倉庫に大量にあるじゃないか」
伍長が在庫の話をするとジョン少尉は頭を抱えて溜息を吐いた。
「少尉、伍長。隠密占領戦闘ですよね?」
「ンぉっ!?衛生二等兵が居ると聞いたが…こんなガキだったとは」
「そんな事言うな、お前が重傷だった時に何とか野戦病院に運んだのは彼だ。大体お前は前に出過ぎだ」
「野郎ッ!誰のお陰で最初の上陸戦を成功させたと思っている!」
「あ…っあの…」
二人の間にライムが割り込んで来る。
すると引き気味のフォラード伍長がそっと後ずさりする…
「ぁ…はい、何でしょうか?」
「そ……そのぉ…お静かに…」
「申し訳ない…」
その後ライム三等軍曹が離れるとジョン少尉が
「あの子は男の娘だぞ」
「ぇ゙っ!?」
「女の子に見えるだろうけど、まあそう言う事だ。同じ隊のマック一等兵居るだろう?アイツはああ見えて、女だ」
「ぇ゙ぇ゙っ゙!?」
「ジョン隊長、予定作戦実行時間を過ぎてます。急ぎましょう」
「……あっ!そうだった」
こんな隊で大丈夫なのかと心配になったヘルキャット君だったが…急ぎ足で最初の警戒網に入り込んだ。
「哨戒兵が三人か…皆、コンバットナイフを貸してくれ」
5名からナイフが手渡しされるがしかし一本だけナタがジョン少尉の片手に重く伸し掛かる。
「何でナタなんだ?デイトナ伍長」
「はて…斧投げじゃないのかの?」
「爺さん…ジョン少尉はナイフ投げの名人、忘れてんじゃねぇ…」
「ほう!そうじゃったか」
ヘルキャット二等兵からはナイフが無い事に気がついたジョンは模索しないよう後で聞くことにしたが…トウモロコシを持っている。気になって聞いてしまった。
「祖父の補給品箱から貰ったものです」
「君の祖父って…東海岸司令官だったよな?何故だ?」
「よく分かりません…ただ毎週トウモロコシを送ってくれて、中隊の食料関連は」
「あいあい…話はそこまでだ。三人に怪しめられたぞ」
哨戒中の帝国兵に気が付かれて接近してくる。
そこに三本のナイフが三人の額に目掛けて投げられて命中した。
鉄条網を避けて入り込むぞと言わんばかりに身体で示すように走り込んで、皆もそれに続いて走り抜けていた。
その先には丘があって登ったところに野戦砲陣地が確認される。
「誰も居ないようだ。弾薬庫が側に置かれている…マック、爆薬を頼めるか」
「梱包爆薬ですね。敵の武器庫から何とか取りに行くしか」
「近くにあればいいのだが…」
そんな事を考えていたら哨戒兵の一人に感付かれて何処かへ走り去ろうとしたところを、ジョン少尉がナイフ投げで仕留めてしまった。
「ん?階級章が豪華だな」
「きっと尉官クラスでしょう」
「なぁ…こんなに固まって動く必要があるか?」
「……散らばったら指揮に支障が出るだろ…それに……面倒くさい」
「ジョン少尉?何故空に向かって」
「ヘルキャット君、離れると面倒だぞ…神がそう言っている」
「御主は宣教師じゃなかろうに゙」
「デイトナ爺さん、黙ってくれ…」
そうこうしている内に砲兵陣地を抜けて島の野戦指揮所の一つ目を発見する。
明かりのある天幕から帝国将兵が三人テーブルを見つめている。
「アラやだ、一人はアタシの隊長と同じねぇ〜」
「民族が…同じだと思います…」
「けっ…大和民族か、視野が広くて厄介だ」
「夜目も利くと噂がある顔が平たい人種とは聞いたが…これ程とは…」
カーキ色の野戦服将兵の一人を見つめながらそう言って他二人は灰色の野戦服と白色の着飾った制服らしき人物だった。
話し声が聞こえるところまで近付いて行って、暗殺の準備に取り掛かる。
「サカイ中佐、援軍が来るとの事ですが…」
「無理だ。例え難攻不落のアレーシャン最南端の本島であっても補給線を断たれてしまってはどうにもならない!」
「つまりサカイ、余が連合国方面軍の足掛かりを捨ててまで撤退せざる得ない状況まで困窮していると申すのか?」
「ヴァチール・コーシュチン侯爵殿その通りで御座います…」
「うむ…ではオンキョン少佐の意見を聞こう」
「サカイ中佐と同じく本土まで撤退せざる得ないかと…何より侯爵殿が本島から撤退出来ておりませんので」
「余が部下を置いて先に撤退するとでもか?最後の一兵が撤退するまで余は指揮を執るつもりである」
ジョン一行は三人の背後にと忍び寄る。
ジョンとシュトゥーベンにデイトナが息合わせ三人の首をナイフやナタで斬りつけた。
赤い潮吹きのように辺りは血の池と化している。
「よくやった。あとは伝書鳩の屠殺をして本格的に内部制圧だ」
「じゃあ暴れ散らかしても問題無いよな?」
「まずは後方の105ミリ砲を使って各陣地への砲撃だな、マックとシュトゥーベン頼むぞ」
二人は砲を操作して残りは他の指揮所や伝書鳩保管庫等の制圧を次々と終わらせていって、朝方になると帝国軍は大混乱に陥っていた。
その大混乱に興じて海軍陸戦隊や陸軍が再び上陸戦を実行し数カ月によるアレーシャン列島の奪還戦は終結した。
西部方面はこの翌日にホノルル島の奪還を終わらせ次なる場所はウェーイ島への奪取作戦であった。
同時期に海軍陸戦隊はゴット・ウェーイ島からウェーイ島へ最初の長距離飛行可能な爆撃機を飛ばしたのである。
この大規模な戦いは南北統一戦争以来初めての事であった為、デュキス連合国はしばしの休息を取るのである。
1916 09 **
あれから一年が経った。
東部戦線では連合王国西部にあるアイネランドの独立支援やアフレカノー大陸南部の占領、そして欧州に届こうとしている。
西部ではユーラシア大陸極東部を上陸して橋頭堡の確保を完了させ、陸軍が次々と上陸し…大和民族の住まう帝国州はカラフッド島の占領作戦が開始されるのだが…帝国同盟と協商同盟の国境で大きな動きがあった。
協商同盟最前線 ベルディン東部
野戦指揮所
天幕の下で慌ただしく動く伝書を読み上げる者や弾薬や食物の在庫管理に命令伝達を行う指揮官達…そして地図を睨見つける四人の将兵であった。
「ローヴェ・ヴィーマッハ中将、今後の前線突破戦術に意見を具申したい」
四人の将兵の中に一人の尉官が入って来る。
一人の将官は作戦会議中だとと左官級以下の者は入るなと怒声を上げて彼女に言い放ったが、ローヴェ中将は手招いて地図が広げられている机に彼女は地図に置かれた模型を見る
「ミーレ・グッデリアン大尉。例の新兵器が君の部隊に届いた筈だ」
「ありがとうございます。クライリヒト・ギュンター技術中佐殿」
「して…ミーレ大尉戦術意見とは何か?」
置かれている模型、飛行機と飛行船に自動車や騎兵やらを並べていくミーレ大尉に一人の左官があっと気が付いた。
「砲兵を配置しない…殆ど航空機で、歩兵が後ろ…浸透戦術の発展型とでも言うのか大尉」
「はい、ギュンター中佐殿のおかげて自動化中隊が編成出来ました。これを主力として騎兵はコレの掩護、砲兵の火力は魅力的ですがここは敢えて空軍の爆撃機による攻撃を行います」
「大尉、戦闘機はどうするつもりだ?」
「前の欧州大戦で使われていたロケット弾を戦闘機に数発搭載し、それで対地攻撃しながら制空権を獲得することです」
「ふむ…ロケット弾による同調装置は効かないし翼下に積むにしても……ん?もしや新兵器は他にもあると?ギュンター中佐」
話を技術中佐に振る空軍中佐は期待の眼差しをしている。
「えぇ、仰る通りヘルマート・ゲーリング中佐。半金属製新鋭機、He16戦闘機の量産体制に入ったところです。これにより翼下爆装が可能となった具合」
「おお!噂では聞いていたが既に量産体制に入っていたとは!」
「なんと!?では我々飛行船軍には何か新装備はあるのか!」
大尉に怒声を上げていた彼もギュンター中佐の話に興味を示し聞き出そうとしていたところ、新しい飛行船は軽くて丈夫な新型装甲を貼り付けて、防空機銃を減らしての艦橋中腹に二門の57ミリ砲を新たに加えた。
ここから飛行戦艦の時代が台頭することになるが…大した活躍はしない
「成程、砲兵の代わりに爆撃機や砲撃飛行船による精密攻撃で穴を開けて装甲車両群で突破し歩兵で制圧と…して装甲車両群はそのまま火砲陣地へ突入する感じか?」
「そうですローヴェ中将、これまでのA6V重突撃砲やマークⅣ重戦車の他明らかに速度の出ない装甲車両はこの先の戦いでは使い物にならないでしょう…そこで通信機材を惜しみなく使い、快速な新型戦車が必要となった訳です。ギュンター中佐殿新兵器とやらを拝見して頂いても宜しいでしょうか」
「ああ、こっちにある付いてきて」
皆一斉に天幕から出ると小柄な装甲戦闘車両が複数並んでいる。
「第二共和国の技術者から指導を受けて何とか作り上げたTkw16と第二共和国製のFT-16戦車にシトロウェントラック75ミリ山砲自走砲を配備するところです。大尉兎に角これらを扱うのですよ」
「おお、これなら長年構想にあった戦術が実現出来そうだ」
Tkw16 1916年軽戦車計画
ゲベナ王国の国産第二号戦車、形状はFT-16を模倣してはいるものの同軸機銃にMG07を装備し新設計のラインミヒャル侯爵一家傘下のラインミヒャル製37ミリ20口径戦車砲を搭載している。
おまけに砲塔に二人乗れる様大型の砲塔となっており無線機も搭載された。
これはFT-16には無い要素が多く詰め込まれていた。
シトロウェントラック75ミリ山砲自走砲
第二共和国のシトロウェン氏が起ち上げた民間会社による民生品のトラックをクルッフ公爵家で造られた75ミリ24口径山砲を無理矢理搭載した自走砲。車輪がそのまま乗っているので降ろせば山砲として使える。
本体は気休め程度の装甲板しか貼られていない
後続の歩兵隊は同じトラックの砲が載っていない方であった。
これらを運用し空軍と連携しながら帝国同盟西部に攻勢を仕掛けるのだそう…だが既に冬が来ており、中将が一番気にしているのは冬将軍と北方の魔女を警戒していた。
その嫌な予感は的中し、ミーレ・グッデリアン大尉の新戦術は上手い具合に帝国軍に刺さって前線は大きく東へ伸び切ってしまい、補給が積もった雪で途絶え再び西へと撤退する羽目となった。
1917 1 **
ウーラニア州東部 雪原
帝国同盟軍は反撃の切り札として北方の魔女に命令を下したのだった…
「おなかすいたー」
「あっシミョ曹長、前方さんひ」
距離を言う前に小銃で敵の頭部を300メートル以上の距離で精確に撃ち抜いた。
全く見えない猛吹雪の中、風が弱まる瞬間を狙って撃ち抜いたのだ。
「ん…漁る」
「って曹長、また死体漁りですか!」
「ん…豆の缶詰……やった」
「あぁーもう曹長、耳出てますよ!フードしっかり被って下さいよ」
「うるさいよ、サーシャ上等兵。マーネルヘイムさんに言いつけるよ」
「北方の魔女は勘弁してくださいよ〜」
一人の帝国中央所属兵サーシャ・サカンスキーと北方希少種族、スノウハーフウルフ。シミョ・ハウハ
そしてその上司同僚達による愉快な仲間達が魔女の儀式のように見えて北方の魔女と呼ばれるようになったが…それが良い意味か悪い意味で世界中に広まった。
「シミョ、戦果はどうだった?」
「敵歩兵200名頭部喪失、敵戦車を丸太で1台破壊」
「そちらは?」
「えーっと…ただの視察です」
「そう、何がともあれようこそスウォミ州派遣軍部隊にね」
「貴女がマーネルヘイムさんですか…後ろにあるのは?」
山積みにされた協商軍の野戦服と武器装備に大量の鹵獲弾薬と食料品だった。
「拾って来た」
「えぇ…?」
「ん…少佐、コモ・ハウハの調子はどう?」
「ああ、そろそろ1歳になるところだったね。元気に育ててるよ夫がね」
「えっ?」
「サーシャって言うんだな?少佐ァコイツ連れて行っていいっすか?」
「コモド大尉…お前何人目だ?」
「少佐も含めて36人目でさぁ」
「36人…えっ何…?」
「アレやコレをシタりする為に連れていった人数よ」
「えっ?でも私ここに…アレッ?シミョさんは?」
二人は周りを見渡しても明らかに小さいあの子が見つからず気が付いたら先程の男が担いで持って行った。
「「おい待てやゴルァ!」」
同時刻、デュキス連合国の大上陸作戦の計画が練られていた。
西部方面による帝国同盟東部は攻勢に出ようと思わず当初の目的である協商同盟の併合に針路を変え国家戦力の7割を東部に割り当てられた。
その中で突撃中隊も含まれており今度は険しい戦いになるだろうと皆が予想していた。




