プロローグ
クロス王国の東の果て。
地図にもろくに載らない、小さな村「ハイネル」。
その町外れ、強風が吹けばすぐにでも崩れてしまいそうなボロ屋に――たった10歳の少女がひとりで暮らしていた。
白磁のような肌。
月光を編んだような、長く美しい銀髪。
そして、いつも身の丈に合わない赤いローブのフードをすっぽりとかぶり、顔を見せることも、声を発することもほとんどない。
彼女の名は――エルフィーナ・ノクターン。
年端もいかないその少女は、実のところ、この国どころか世界でも類を見ない存在だった。
火・水・風・土・雷・光・闇、そして“無”。
八つすべての魔法属性を扱える、唯一の魔法使い。
わずか10歳にして、神話に語られるような力を秘めていた。
……とはいえ、本人にその自覚はあまりない。
騒がれるのは苦手だったし、注目されるのは面倒くさい。
「誰にも知られず、静かに暮らせるなら、それでいい」
彼女はそう思って、町外れの静かな一軒家でひっそりと暮らしていた。
けれど――その静寂は、ある日、突然破られる。
運命の歯車が動き出し、
平穏を願っていた少女は、やがて“この世の最強”と呼ばれる存在となる。
読んで頂きありがとうございます。
しばらくこのシリーズを書いていきたいと思います。