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マリーゴールド

作者: 華城渚

閉鎖的な村に私は弟と一緒に住んでいます。

弟は病気で体が弱く、歩くのも辛い子です。

私が農作業しているときも家でずっと休んでいます。


なんとかしてあげたいですが、近くの町までは二週間以上かかります。

何の病気かわからない以上、弟を町まで連れていく必要がありますが、二週間という長い間村の外の空気にさらすのも危険だし、何があるかわからないため動けずにいます。


村の外からの援助も望めません。

町から離れすぎているせいか、誰も立ち寄ることがないのです。

必然と自給自足にはなりますが、みんな仲良く助け合って生きています。


そんな環境に弟は辛い顔をせず、むしろ元気な顔を見せてくれます。

本人が一番きついはずなのに何もできない自分が恥ずかしいです。



ある日村人の一人が階段から足を滑らせ頭を打ち死んでしまいました。

これで今住んでいる村人は三十人ほどになりました。

昔は百人以上いたのでだいぶ少なくなりました。


村人みんなで悲しみ、埋葬を行った後、弟は墓にやってきます。

この時だけ弟は力を振り絞り、歩き出すんです。

弟もやはり村人が死ぬのは心が痛いのでしょう。


弟は花束を持っています。

マリーゴールドの花束です。

弟は花束を墓に置き、ただ見つめています。


「......あなたも好きなんですね。」

その言葉は墓にいる村人に向けられたものでした。


好き......とはどういうことでしょうか?

もしかして遺書か何かを受け取っていたのでしょうか。


「嫉妬、悲しみ、絶望......それがマリーゴールドの花言葉。」

弟は独り言のように話始めます。


「勝手に嫉妬し、勝手に悲しんで、勝手に絶望する......この村の人間は、死ぬことでやっと興味を引けると思ってる。」


「僕とお姉ちゃんは最初からこの村にいたわけじゃない。 数カ月前、男しかいないこの村に僕らは引っ越してきた。」


「みんなお姉ちゃんと結婚したくてたまらなかった。でも、お姉ちゃんが好きなのは僕だけだ。それがわかった男どもは夜、お姉ちゃんが寝たころに僕を殴り続けた。何日も何週間も。」


「つまり僕は病気なんかじゃない。殴られ続けて体が弱ってるだけだ。」


「僕が弱ったとしてもお姉ちゃんの興味は引けない。 なら、死ぬしかない。 死ねばきっと目を向けてくれると信じて。」


「このマリーゴールドはお姉ちゃん......いや、あんたに向けてだよ。 この村がマリーゴールドで埋め尽くされるほど、あんたに自分の罪の重さを自覚してほしいんだよ。」


「なぁ......あんたは何がしたいんだ?」


...


......


.........


「この村ってさぁ......私たちにぴったりだと思うの。 でも、邪魔な人間はたくさんいるでしょ? だから殺さなきゃなって思ってたけど、まさか勝手に死んでくれるとは思わなかったなぁ......」


「あんた......何を言って......」


「いつか二人だけの世界になる。だからもう少しだけ待っててね?」


「ふざけるな! だったら今すぐにでも逃げて......!」


「逃げられる体じゃないでしょ? それに村人のみんなには外には出すなって言ってあるから、無駄だよ?」


「くっ......あんたに罪の意識はないのか!?」


「ないよ。私は悪いことは一切してない。村人がなぜか勝手に死んでるだけ。ありがとね、こんなに綺麗にしてくれて。」



あ、悪魔だ......この女は。

二人で住むならもっと他の方法もあるだろうに。


目の前にいる悪魔を見る。

悪魔は優しく微笑んだ。


間違いない。この悪魔は......



人が死ぬのが見たいだけだ。



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