「優也君に生きてほしい!」
あたしの名前は椿 彩音。最近毎日が楽しい。あたし、好きな人が居るの。
伊吹君だよ。好きだと気付いたのは皆で会えた七月七日。
現実で彼に会えた時、本当に嬉しくて好きになるってこういう事かって思った。
それからの毎日は本当に楽しくて忘れられない日々になった。
彼らとの日々は非日常だったはずなのに今じゃ日常のようだ。
これがあたしの当たり前の日々だって思ってしまう。それは図々しい事かな?
そうじゃなかったらいいなって思ってしまう。周りに上手くなじめなかった。
そんなあたしを救ってくれたのは優也君だ。だから今度はあたしが優也君を救いたい。
そう願うのはわがままだろうか?あの日、自殺しようとしたのが嘘みたい。
あの日は二月四日だった。中学生になって周りに上手くなじめなかった。
もう終わらせてやるって思った。飛び降りようとしたその時だった。
天から誰かが「生きて!」と聞こえた気がした。気のせいだったのだろう。
だけど、あたしはそれで自殺せずに済んだ。皆もそうなのかな?
だからあたし達、会えたとかそんな奇跡的な事だったらいいのにな。
あたしがいつものように夜さん連れて行ってと願うと光の館に着く。
その時だった。異変は起きていた。もう十二月だったからおかしくはないけれど。
傷ついた。幻の桜を悠月が開けたのだ。最低だよ。あたしの意見も聞かずに…。
胸が苛立ちに包まれていく。ふざけないでよ忘れたくないのに…。
酷いよ。私は今、優也君を救う方法を考えている途中なのに…。
まだ分からない事ばかりなのに。嫌だよ。別れたくないよ…。
悠月が「よう。早く木の中、入るぞ」と言った。イライラする。
ふざけないでよ。あたしの居場所、奪っといてひどすぎるよ。
また出会えるって言う気なの?だとしたら何、言っているのか意味不明。
記憶がなかったら出会っても意味ないじゃん!そんな事もこいつはっ…!
イライラする。あたしの毎日の楽しみ返してよ!と思っても言えない。
悔しかった。こんなにもあっけなく終わりが来てしまった事が…。
幻の桜は沢山ある中の今、満開に咲いている桜の木だった。
冬なのに咲いていると思っていたら悠月が言った。
「これ、冬桜」あたしが首を傾げると「冬と春に花が咲く桜だよ」と言った。
あたしが「そうなの」と言い「これって絶対に入らなきゃいけないの?」と聞く。
悠月が「当たり前だろ!全員入らなきゃ皆、記憶失うんだぞ?」と言った。
やけに必死で驚いた。あのいつも自由で楽しそうな悠月だから。
あたしは仕方なく木の中に入った。そうするべきだと感じた。
中へ入ると真っ暗闇に包まれてしまった。
何も見えなかった。その時、月が輝いて夜さん(優也君)が現れた。
周りに皆も居る。
彼が「僕の命と引き換えに誰かの記憶を残してあげるよ」と言った。
あたしは何も言えなくなる。優也君の命と引き換えに誰かの記憶を残す。
それはあまりにも残酷な事だった。願えるわけがなかった。
だってあたしは優也君に幸せになってほしい。生きてほしいのだ。
だけど…皆との記憶が無くなるのは絶対にいやだった。
それだけは本当に大切でかけがえのないものなのだから。
もう二度と出会えないとしてもあたしの生きる意味は彼らなのだから。
あたしは彼らがいたから今、生きているのだ。また生きたいと思えたのだ。
真っ暗闇から救ってくれたのは優也君なのだから。彼はあたしの大事な人だ。
この場所にいたいのにどうしていさしてくれないの?
もっと彼らと笑い合いたいのに。玲奈ちゃんと話したい。
桜花ちゃんと話したい。伊吹君にもっと話しかければよかった。
悠月なんて嫌いだ。楓真君は意外と優しくて良い奴だった。
優也君には本当に感謝しているよ。悠月以外皆大好きだよ!
だからあたしの願いは「優也君に生きてほしい!」ただそれだけだった。