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決めつけすぎないで

学校には一度も行っていない。行けないのだ。怖くて仕方ない。


私は毎日、光の館に行っている。暇なときはいつも…。


今日はまだ行っていない。あの衝撃が急に襲いかかって来たからだ。


会いたい。でも…こんな姿、彼らに見られたくない。


泣いている姿なんて本当は誰にも知られたくない。


記憶が消えるなんて嫌だよ。せめてずっと覚えていたかった。


光の館の事ハジメて夜さんに連れていかれた日の事。


大好きなあの場所を忘れるなんて嫌だ。


今はもう六月だという事に私は今、気が付いた。


彼らに出会ったのは四月の初めだったはずだ。


もう二か月が経過していた。悠月や楓真や伊吹君や彩音ちゃんや桜花。


私は彼らが大好きだ。彼らといれる日々がとても好きだ。


夜さんに爆弾発言をされたのは五月の終わり頃だった。


どうして最初に言わなかったのかは知らないけれど。


きっと何かの意図があったに決まっている。


夜さんの優しい笑みを思い出す。いつもニコニコしている。


でも…その笑顔は仮面のようで少し不気味だった時もあった。


だけど夜さんの仮面は優しさしか感じなかった。


だから、次第に好きになれていたのに…。あんな事、言われると思っていなかった。


記憶が消えるなんて。その言葉は宇宙に吸い込まれるような思いになる。


怖くなる。まるで自分が元からいなかったみたいな変な気分になる。


全てが消えて嘘みたいになってしまうような気持ちに。


それでも私は今日も勇気を出して夜さん連れて行ってと願った。


いつものように光の館に来る。庭に沢山の桜の木があった。もう咲いていない。


葉っぱだらけになっている。緑色の葉っぱが光に照らされて輝いている。


私は館の中に入る。そこには楓真と夜さんが何か話し込んでいた。


私はついサッと隠れてしまう。話の内容が聞こえる。


夜さんが「楓真君はどうしたいんだい?」と聞いている。


それに楓真君が「俺はあいつらとずっと一緒にいたいです」と言っている。


それに夜さんが「わかった。楓真君はここと現実どっちで会いたい?」と聞く。


楓真は「出来れば現実で会いたいです」と言った。


夜さんが「記憶が消えてもいいの?」と聞かれている。


それに対して楓真は「それは嫌だけどあいつらといれるなら」と言っている。


どうやら今後について話しているようだった。


夜さんが「一人だけ記憶を残す方法があるよ」と言った。


楓真は「なんですか?」と聞いている。夜さんが「幻の桜を見つける」と言う。


彼が「それはなんですか?」と聞く。夜さんが「皆がそろったら話す」と言う。


夜さんはまだ言っていなかった事があったのだと私は傷ついた。


私は全然、夜さんの事を知らないのだと…。


そして、何よりも皆の事。私…勝手に仲良くなっていると思っていたのかな。


だけど、楓真は私達といれるなら記憶をなくしてもいいと言ってくれた。


それは、とても嬉しい言葉だった。私は今来たようにリビングルームに入る。


そして「やっほー楓真に夜さん」と言う。楓真は「よう」と言う。


夜さんは「いらっしゃい玲奈ちゃん」と言った。


そこにまた誰かがやって来る。桜花だ。彼女は「玲奈おはよー」と言う。


私も「桜花おはよー」と言う。彼女は今日は髪を一つくくりにしている。


相変わらずぼさぼさだけどちょっとましだ。服もちゃんと着替えている。


しわくちゃのワンピースを着ている。まぁ前よりはましだしと思う。


桜花がふと「今日、東海林遅いね」と言う。確かにそうかもと私も頷く。


伊吹君は書斎から出てきて「東海林先輩は今日学校行くって言っていました」と言う。


桜花と私と楓真が固まる。悠月は本当に普通の子なのだと思った。


急に学校に行くなんて。本当になんともなかったのだと思った。


夜さんが「悠月君が帰ってきたら幻の桜について話すね」と言った。


皆がその日は悠月を待った。待つ間、色々な話をする。


夜になり悠月がやって来た。皆が一斉に悠月の傍に行き夜さんの所に行く。


夜さんが「それじゃあ今から幻の桜について話していくね」と言った。


話の内容は幻の桜というものがこの館に存在しているという事。


その桜を皆で見つけてその中に入る事。


勝った者は記億が残ったまま現実に帰れる。残りの者は全て忘れて現実に戻る。


皆、静かだった。そんな中、悠月が「どうする?」と言った。


それはきっとここにずっといるか。幻の桜に入って誰か記憶が残ったまま帰るか。


皆、記憶がないまま現実に帰るか。という選択肢があるという事だろう。


私は-ここにずっといたい。そう思った。だけど…海の事が引っかかる。


大切な海にもう二度と会えないのは悲しいし辛い。


夜さんの栗色の髪がサラサラと揺れる。最近どんどん色が薄くなっている。


後、最初は大人だって思っていたけれどよく見たら同い年くらいだった。


中学生?高校生?くらいだ。身長が高くて大人と間違えてしまった。


でも…もしも中高生だったら少し大人びすぎている気がする。


精神年齢が夜さんは高そうだから…。悠月が「俺は幻の桜を探す」と言った。


続いて楓真が「俺も」と言う。伊吹君も「僕もです」と言う。


彩音ちゃんは「あたしもそれでいいと思う」と言い桜花も「私も」と言った。


私はこんがらがる。私だけだったの?ここにずっといたいと願っていたのは。


と酷く傷ついた。そんな私に悠月は「玲奈は?」と聞く。


私が黙っていると夜さんが「皆、玲奈ちゃんは少し考えてから言うよ」と言った。


夜さんはやっぱり優しい。私は「夜さん」と言うと彼は「相談?」と言う。


あっていた。さすがは夜さんだ。私は「はい」と言う。


夜さんは「いいよ」と言い相談室に連れて行ってくれた。


私は「いつまでもここにいたいのに皆は違うかった」と言う。


夜さんが「玲奈ちゃんは何か大切なものを見失っている」と言われた。


私が首を傾げると彼はこう言った。「いずれ気づくよ」


「それから、人の気持ちって誰にもわからないものでしょ?だから決めつけすぎないで」私は茫然とした気持ちになった。正解が何かわからなくなった。


そして、彼らが実現しているのかすらわからなくなった。


私はなんの為にここに来たのかな?本当にわからないの。


それならば彼らが実現しているっていう証拠を探すしかない。


まずは住んでいる所を教え合うしかないだろう。


私は皆の所に戻って「どこに住んでいるのか教え合おう」と言った。


皆確かにと言って悠月が「じゃあ玲奈からいいなよ」と言った。


私は深呼吸をして「月空町」と言った。


次に彩音ちゃんが「あたしも月空町だよ」と言った。桜花は「私は星空町」と言う。


悠月が「俺は雪桜町」言った。伊吹君が「僕は月桜町」と言う。


最後に楓真が「俺は雪空町」と言った。


桜花とは同じ町だ。星空町は確か、月空町の北側だ。月桜町は月空町の南側だ。


雪空町が星空町よりも北側の街でそれよりも北のちょっと離れた島にある雪桜町。


私の町から悠月は遠い。楓真も結構遠いと思う。


だけど私は「じゃあさ、皆でどこかに集合しようよ」と言った。


楓真が「じゃあ、玲奈の言っていた月空町にしようぜ」と言った。


雪空町から私の所まで来ようと思ってくれる事が嬉しかった。


でも…皆がそこまでして来てくれるなんてありえないとも思った。


楓真が本気だったとしても。ふと思った。どうして今まで女友達ができなかったのか。


それは、私が思いやりがない人間だからかなって今までも今も思っている。


だけど…桜花や彩音ちゃんと仲良くなれた。それはなぜなのだろう?


彼女達が優しいから?それとも共通点があったから?


本当の理由なんてわからない。だけど…仲良くなれた事は嬉しかった。


たとえ皆に会えなかったとしても。記憶がなくなったとしても。


彼女達のおかげで私は思いやりがあるって思えるようになった。


私は「じゃあ、月空公園に集まろう。それと、いつ集まる?」と聞く。


楓真が「七月七日」と言った。悠月が「皆はそれでいい?」と聞くと皆、頷いた。


私達は七月七日の夕方の六時までに会う約束をして帰った。


私は最近、好きな人ができた。初恋だ。その人の名前は夜さん。



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